今日は大寒。
夜中に市の除雪車が家の前に小さな雪山を築いて行った。
来週、寒波がやって来そうだ。
この時期になると50年も昔、最初の勤務地の道南の江差町に住んでいた時に食べた「ごっこ汁」を思い出す。
-市場魚介類図鑑HPより-
「ごっこ」は正式には「ホテイ(布袋)魚」というおめでたい名前が付いている。
フグのように丸っこく、30cmくらいの大きさで表面は粘膜に覆われている。
普段は水深100メートルほどのところにいるらしいが、寒の頃に浅瀬に来て産卵する。
海が荒れると腹の吸盤でへばりついている岩から剥がされて網にかかるという。
どこかユーモラスだ。
見た目で損をしているが鍋は出汁が絶品だ。
ゼラチン質の軟骨ごと白身を細かく切って、豆腐、長ネギ、岩のりを加え、醤油仕立てにする。
作り方にはコツがあって、最初に熱湯をかけて白くなった〝ぬめり〟をタワシで擦って取り、腹の吸盤も取らなければ生臭くなる。
我が家で作るときは出番だった。
初めて居酒屋で鍋に浮かぶぷよぷよとした黒い皮のついた白身を見た時、何と椎茸の多い料理だと思ったものだった。
好みでケシ粒のような卵を加える。
江差の人達は丁度今頃の寒い時期に大騒ぎしながら酒の肴にしていた。
道内を転勤していて出会った想い出の郷土料理の一つだ。
今はスーパーでも切り身に調理されたものが売られるようになったが、高級魚で手が出ない。
ウニ、アワビから始まって、最近はサンマもイカもホッケも漁獲量がが減って形も小さくなった。
あの居酒屋の女将さんも、鍋を囲んだ職場の先輩達も亡くなられて、「ごっこ汁」の想い出に月日の流れを感じる。
唄っている青坂満さん(1931-2020)は江差の街の沖に浮かぶカモメ島で生まれ育った漁師さんで、訪ねたこともあった。
潮風を渡って行くような哀調を帯びた追分の味を最も出せる師匠と言われ、好きだった。
前唄、本唄、後唄を聴くことが出来る。