移乗動作について ~ボディメカニクス的視点に基づく移乗動作~【知識編】
みなさん、こんにちは。
患者さんやご家族の方に、ベッドから車いすなどに移っていただく際に、困ったことはありませんか?
「ボディメカニクス」を介護場面に活用することで、介護者の腰や身体的負担を減らすことができます。
ボディメカニクスとは?
まず、「ボディメカニクス」とはなんでしょうか?
「ボディメカニクス」とは、日本語では「身体力学」のことで、力学の原理を人の体に当てはめて考えることで、介護の労力を少なくするために、理にかなった動作をしましょう、ということです。
まず、力学の基礎知識ですが、
・重力、重心
・支持基底面と安定性:(安定=倒れにくい、不安定=動かしやすい)
・力(大きさ・向き・かける位置と距離)
・てこの原理
があります。
まず、「重心」と「支持基底面」です。
地球上のものにはすべて重力がかかっていて重さがあります。その中心が「重心」です。
つりあいが取れる点、とも言えます。
立っている人間の重心は、おヘソの位置(足元から約55%の高さ)にあります。
重心線はその重心から地面に向けてまっすぐに引いた線です。
「支持基底面」というのは、床に接する部位で囲まれた面を言います。
自分の体だけでなく、杖先なども含まれます。
下の絵で言うと、立位では2つの足で囲まれた部分ですが、杖を持った場合には杖も含めて囲まれた面が支持基底面となります。
そして、重心線が支持基底面内にある時はものは倒れません。
支持基底面から出ると、倒れてしまいます。持ちこたえるには筋力が必要です。
次に「安定性」と「不安定」です。
支持基底面が広いまたは重心が低いと安定します。
支持基底面が狭いまたは重心が高いと不安定です。
狭い(安定性が低い)< 広い(安定性が高い)
下の図では、重心が高い・低いによって倒れやすさが違う事を示しています。
重心が高いと重心線が支持基底面からすぐ出てしまうので倒れやすくなります。
支持基底面が広い、または重心が低いと安定します。支持基底面が狭いまたは重心が高いと不安定です。
つまり下の図のように、
重心が高くて支持基底面が狭い・・・不安定
重心が低くて支持基底面が広い・・・安定
となります。
次に「力」についてです。力には大きさと方向があります。
力の「大きさ」と「方向」
上の絵の押し車のように、まっすぐの方向に押すと、力は斜めに押すよりも伝わりやすくなります。
また、力をかける位置と距離ですが、動かしたいものからの位置や距離によって力の伝わりやすさは変わってきます。
起き上がりを介助する時には、頭の近くを支えた方がラクに起き上がらせることができます。
次に、てこの原理です。
支点を作ることで、てこの原理を使うことができます。てこの原理を使うと、小さな力を大きくすることができます。
今週はボディメカニクスの知識についてでした。
実践編は、また後日掲載しますので、お楽しみ!!
東埼玉病院リハビリテーション科ホームページはこちらをクリック
【注意】
本ブログの掲載記事は,個人的な見解を含んでおり正確性を保証するものではなく,当院および当科の総意でもありません.引用や臨床実践等は各自の判断と責任において行うようお願いいたします。