東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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在宅酸素療法の勉強会での自身の回想

2024年08月19日 | リハ科勉強会
 7月下旬に科内で在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy : HOT) についての勉強会を機器を取り扱っている業者の方に行っていただきました。
 自身の療法士の経験としては新人の頃からHOT導入の患者さんを担当してきていますので、もう20年近く前の頃から馴染みではありますが、最近は実際に受け持つ場面がなくなってきているので、懐かしさとともに再勉強させていただきました。研修を開催していただいた関係者の皆様に感謝いたします。

 酸素を使うこと自体が、薬剤を使うのと同じように保険適応になったのは、意外にも約40年前と、個人的には最近のように思います。保険適応になるまでの経緯で、医師や看護師等の医療者側の尽力も然ることながら、「再びもっと動きたい、楽に息をしたい、歩いたり外出したい、旅行に行きたい。」という強い想いを持った呼吸器疾患の患者会の導入活動が、時の厚生省(現在の厚生労働省)を大きく動かしたのだよ、と伝え聞きました。それを伝えてくれた先生は保険適応にとても尽力された方なのですが、自身の功を全く知らせずに「患者さん達がHOTを実現したんだよ!」と事あるごとに強く言っておられたのが印象的でした。

 自身のIADL/QOLを上げるべく世に広まったHOT、新規の導入に際し、自宅での酸素使用を渋っておられる方でも、上記の経緯(「患者さんが頑張って認めさせた器械なのですよ!」)をお伝えすると、「そうか、医者じゃないのか。じゃあ使うか。」と受け入れることが少なからずあったな、と思い出されます。
 

その患者さんたちのHOTに対するニーズは、やはり携帯性(=重さ)が一番なのだな、と機器開発の経緯を伺って改めて感じました。自宅外で持ち出して使用の場合、持続時間と流量をしっかり確保できる利点で現状でも酸素ボンベ使用が主流です。が、重量が重くなり携帯性としては手軽には持ち運びしづらいものでもあります。身軽に持ち運びたい場合は、半日程度で気化してしまうもののポシェット大程度の大きさと携帯性で持ち運べる、液体酸素を使う必要があります。充填作業に低温やけどをしないようて手袋をはめて、さもガソリンスタンドで給油をするような感じで自宅に設置した樽型の親機から、シューッというちょっと恐怖を感じる充填作業をして、持ち運んでおられました。その大変な作業を、出掛ける日ごとに行いながらも、外出や仕事に出ることができるなら、と一生懸命操作練習をして習得されていました。

 
それが、今回の研修で、わずか2kg程度の重さで携帯できる酸素濃縮器が商品化されたとの紹介がありました。実際に持ってみましたが本当に軽くて、これなら仰々しくなく鞄などに忍ばせて持っていけるな、と感じました。聞けば、使用可能な酸素流量を増やすニーズよりも、重量を軽くするニーズの方が多かったため、今回は軽量化を主眼に開発したとのことでした。
 20年前の「こんなの持つ方が却って疲れて苦しいよ。じゃあ酸素使わない!」と憤られた方が少なからずいらっしゃった時代を鑑みると、自分としては隔世の革新のように感じます。
 『HOTは患者のもの。医療者のためのものにあらず。』の精神に則った開発と提供をしてくださっているな、と改めて実感した研修会でした。

画像; NPO法人 日本呼吸器障害者情報センター HPより引用

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