皆さんこんにちは!
東埼玉病院リハビリテーション科です。
本日は筋ジストロフィー(以下DMD)患者に対する車椅子作成時の注意点をいくつか紹介したいと思います。
早速ですが、まずDMDにおけるシーティングの原則としているのが以下の5点です。
① 変形の進行を遅延させる
② 上肢機能を最大限に活かす
③ 部分的な圧迫を除き安楽性を増す
④ 座位をとることで呼吸器の合併を減らす
⑤ 移動などの介護を楽に受けられる
・シーティングの中心は,脊柱変形への対応です。Seegerらは筋ジス児の座位保持は上肢機能と安楽性を中心に考えるべきとしている(小池純子:車いす・シーティングのための障害学(先天性障害).車いす・シーティング.2005)ため、以上の5点を意識して作成していきます。
次に車椅子作成時に必要な概念です。
概念も大きく分けて5つあります。
① 完成期を見据えた考え方
② ADLの維持
③ 変形予防
④ 疼痛防止
⑤ 使用のための取り回し
① 完成時期を見据えた考え方
‐車いす検討から手元に届くのは3ヶ月程度(半年以上かかる場合もある)
‐実際に完成した時点でシーティングにギャップがないように予後予測の考え方が必要(筋力・ADL低下,変形進行)
-成長対応,拡張性
-基本的に車いすの耐用年数は5年なので,1・2年で合わなくなってしまった,では原則NG
-特に成長期では身長・体重増加,変形進行などがある程度あっても対応できる余裕を完成の段階で残しておく
② ADLの維持
-新規車イス作成=今までのADL(食事,PC操作など)ができなくなったでは基本的にNG
③ 変形予防
-現在だけの視点だけでなく,アライメントや動作を考慮し,今後変形が強まらないように
④ 疼痛防止
-座位姿勢により,殿部痛,腰背部痛が生じることがあるだけでなく,アライメントにより頚部・肩,足など多くの部分に負担がかかることがある
-長時間座位姿勢がとれるかどうか(生活状況にもよるが)が重要である
⑤ 使用のための取り回し
-いくら良いシーティングができても介助者負担が過度となったり,使用環境に適合しないと使ってもらえなくなる
①~⑤を考えながら車椅子作成を行っていく必要があります。
最後に、車椅子作成時は「すべては作成目的ありき」であることを念頭に置かなければなりません。ただし作成目的が妥当性のない場合は確認が必要です。
そのため「目的・NEED・背景」について考える必要があります。
-何のために(why),いつ(when),どこで(where),なにを(what),だれが(=どの介助者が)(who),どのように(how)使うのか?
-そのためにどのようなNeedsがあるのか?
-例えば,姿勢保持,移動能力の向上,座位時間の延長などおおまかな目的が伝わってくるので,処方が出た背景も踏まえて目的を明確化していく必要があります。
以下に例を挙げます。
・目的:車イスが古くなったので,病院の外を散歩するためにも日常的に乗ってたい
・Needs:日中ずっと乗り続けられる.今のADLを阻害しない.変形を助長しない
・背景:簡易電動車イス,体幹ベルトのみ,食事はなんとか自己摂取,その他全介助
このように作成目的をはっきりさせた上で車椅子の作成にとりかかることで、より合理的な車椅子作成が行いやすくなると考えられます。
今回は車椅子作成時に注意していることをいくつか挙げました。
また、追記や変更があれば、また更新していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
(G6)
東埼玉病院リハビリテーション科ホームページはこちらをクリック
【注意】
本ブログの掲載記事は,個人的な見解を含んでおり正確性を保証するものではなく,当院および当科の総意でもありません.引用や臨床実践等は各自の判断と責任において行うようお願いいたします。
東埼玉病院リハビリテーション科です。
本日は筋ジストロフィー(以下DMD)患者に対する車椅子作成時の注意点をいくつか紹介したいと思います。
早速ですが、まずDMDにおけるシーティングの原則としているのが以下の5点です。
① 変形の進行を遅延させる
② 上肢機能を最大限に活かす
③ 部分的な圧迫を除き安楽性を増す
④ 座位をとることで呼吸器の合併を減らす
⑤ 移動などの介護を楽に受けられる
・シーティングの中心は,脊柱変形への対応です。Seegerらは筋ジス児の座位保持は上肢機能と安楽性を中心に考えるべきとしている(小池純子:車いす・シーティングのための障害学(先天性障害).車いす・シーティング.2005)ため、以上の5点を意識して作成していきます。
次に車椅子作成時に必要な概念です。
概念も大きく分けて5つあります。
① 完成期を見据えた考え方
② ADLの維持
③ 変形予防
④ 疼痛防止
⑤ 使用のための取り回し
① 完成時期を見据えた考え方
‐車いす検討から手元に届くのは3ヶ月程度(半年以上かかる場合もある)
‐実際に完成した時点でシーティングにギャップがないように予後予測の考え方が必要(筋力・ADL低下,変形進行)
-成長対応,拡張性
-基本的に車いすの耐用年数は5年なので,1・2年で合わなくなってしまった,では原則NG
-特に成長期では身長・体重増加,変形進行などがある程度あっても対応できる余裕を完成の段階で残しておく
② ADLの維持
-新規車イス作成=今までのADL(食事,PC操作など)ができなくなったでは基本的にNG
③ 変形予防
-現在だけの視点だけでなく,アライメントや動作を考慮し,今後変形が強まらないように
④ 疼痛防止
-座位姿勢により,殿部痛,腰背部痛が生じることがあるだけでなく,アライメントにより頚部・肩,足など多くの部分に負担がかかることがある
-長時間座位姿勢がとれるかどうか(生活状況にもよるが)が重要である
⑤ 使用のための取り回し
-いくら良いシーティングができても介助者負担が過度となったり,使用環境に適合しないと使ってもらえなくなる
①~⑤を考えながら車椅子作成を行っていく必要があります。
最後に、車椅子作成時は「すべては作成目的ありき」であることを念頭に置かなければなりません。ただし作成目的が妥当性のない場合は確認が必要です。
そのため「目的・NEED・背景」について考える必要があります。
-何のために(why),いつ(when),どこで(where),なにを(what),だれが(=どの介助者が)(who),どのように(how)使うのか?
-そのためにどのようなNeedsがあるのか?
-例えば,姿勢保持,移動能力の向上,座位時間の延長などおおまかな目的が伝わってくるので,処方が出た背景も踏まえて目的を明確化していく必要があります。
以下に例を挙げます。
・目的:車イスが古くなったので,病院の外を散歩するためにも日常的に乗ってたい
・Needs:日中ずっと乗り続けられる.今のADLを阻害しない.変形を助長しない
・背景:簡易電動車イス,体幹ベルトのみ,食事はなんとか自己摂取,その他全介助
このように作成目的をはっきりさせた上で車椅子の作成にとりかかることで、より合理的な車椅子作成が行いやすくなると考えられます。
今回は車椅子作成時に注意していることをいくつか挙げました。
また、追記や変更があれば、また更新していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
(G6)
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本ブログの掲載記事は,個人的な見解を含んでおり正確性を保証するものではなく,当院および当科の総意でもありません.引用や臨床実践等は各自の判断と責任において行うようお願いいたします。