東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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失語症者向け意思疎通支援事業

2023年03月13日 | 活動報告

 

「失語症者向け意思疎通支援事業」をご存知でしょうか。

失語症は、大脳の障害(脳梗塞や脳出血、頭部外傷、脳腫瘍など)により、聞く、読む、話す、書く

といった言語機能に問題が生じるコミュニケーション障害です。身体機能の不自由さには車椅子や

杖があり、聴覚障害の方には補聴器や自治体等から手話通訳者の同行支援を受けることが出来ますが、

失語症にはこれまで支援制度がなく、会話が上手くできないために退院後も家族無しでは外出できない

失語症の方が非常に多いのが現状です。

そのため、平成28年に「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害の

ため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方」が厚生労働省により見直されました。

これにより、聴覚に障害のある方と同様に失語症の方に対しても支援者の養成や派遣が必要とされ、

日本言語聴覚士協会の協力のもと、各自治体が意思疎通事業として失語症の会話支援者の養成に取り組み

始めました。

         

                           

失語症の会話支援者になるためには各県主催の養成講座を受講します。養成講座は各自治会から委託された

各県の言語聴覚士会に所属する研修を受けた言語聴覚士が講師を行い、受講者は約半年間に約40時間の講義、

失語症者のサロン・友の会への参加などの内容を受講します。養成講座の修了者は支援者として各自治体に

登録され、失語症の方から依頼があった際に、役場や病院受診、余暇、友の会などの外出に同行して、

要点筆記や会話支援を行います。

埼玉県でも先日、今年度の養成講座が無事終了しました。講座が始まった頃の受講者は、「失語症概論」や

「コミュニケーション支援技法」などの講義を受講したものの、実際に失語症患者さんを目の前にすると、

その方々が可能なコミュニケーション手段(理解や表出できる言葉、漢字の書字、ジェスチャー、絵を描く)

を推察することが出来ず、上手く伝えられなかったり、引き出せなかったりと苦戦していましたが、

会を重ねるにつれ、講義で学んだことも活かしながら、徐々に上手くコミュニケーションが取れるように

なりました。

全国の自治体では養成講座終了者が毎年増えてきていますが、残念ながら「失語症者向け意思疎通支援事業」

はまだ軌道に乗っているとは言い難く、養成講座を開講しているものの派遣事業が確立していない自治体が

非常に多いです。このような自治体では、養成講座を修了しても実際に派遣されないため、学んだ知識や

スキルを発揮する場のない現状です。

一日も早く失語症の方々が支援を受けられる日が訪れることを願いつつ、来年度の養成講座開講に向けた

準備が埼玉県の言語聴覚士会では始まりました。

 

    

 

     令和5年2月6日 朝日新聞 埼玉版に掲載

 

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