もう何年も前の話になるのですが、私の両親からニュージーランドへの旅行の企画と手配を任されました。その時にはニュージーランドへ行った事のなかった私はどこを行程に組み込もうかとニュージーランド政府観光局の発行した資料をパラパラといたのでした。
そんな私の目に飛び込んできたのは雪を被ったサザンアルプスを背景にした"善き羊飼いの教会"。ほとんど波のないテカポ湖の湖面には木々が逆さまに写り込み、本当に美しい風景に目を奪われたのです。両親の旅行には同行することになっていた私は、ここを訪問して、写真に収めるのを楽しみにしていました。
クライストチャーチでの一通りの観光を終えて、いよいよクイーンズタウンへ向かいます。途中、件のテカポ湖に立ち寄る予定のその日、朝から天候は曇り。グレイハウンドバスのルートが標高を上げるにしたがって小雨が降り始め、テカポ湖畔に着く頃には本降りになりました。バスはここで暫く停車。しかし、急速に寒くなった車外へ出てまで景色を見ようという乗客もまばらです。
念願の場所へやってきた私は車外へ。ここはまさに間違いなく私が日本で見た写真の撮影ポイントです。しかし、見える風景は雲を背景に立つ教会と荒天に波立つテカポ湖の姿でした。
この旅の主役はあくまで両親でありましたが、私にとってはこの場所が一つの目的地であっただけにさすがに少しがっかりといったところですね。
その後、数年が過ぎ去り、この時に調べてきた情報などを元にニュージーランドでのツーリングを手配するようになった頃。ツーリングにおいてもクライストチャーチからテカポ、マウントクック、クイーンズタウンというルートはメジャールート。このルートを計画している方々に"私が行った時は雨だったんですね"などと説明していたのですが、帰国後のご連絡を聞くと"天気が良くて絶景でした"という話ばかり。極めつけは現地のガイドとの会話。"4月の初め頃に雨にあうなんて、よほど日頃の行いが悪い"と。
そういえばカナダでもいつも"雨男"扱いの私。オーストラリアでは大洪水の中のツアーもありました。
こうなってくると不運というよりも幸運です。なぜならば、雨の"善き羊飼いの教会"を見たことのある人は少ないでしょ?お客様との会話の"ネタ"にも使えます。
そして何よりも。
あの悪天候のおかげで私の中でテカポ湖と善き羊飼いの教会は忘れ得ぬ場所となりました。もしも、政府観光局の資料どおりの風景を見て帰ってきたら、今頃は私の中でテカポ湖の印象はずっと薄いものになっていたと思うのです。もう忘れてしまっているかもしれません。
ただ単に美しい風景を見るだけなら、ビデオやDVDでも充分楽しめます。楽しみにして、がっかりして。がっかりした体験も旅のうち。その場に自分自身の身を置いてみないとできない貴重な体験。
そんな私の目に飛び込んできたのは雪を被ったサザンアルプスを背景にした"善き羊飼いの教会"。ほとんど波のないテカポ湖の湖面には木々が逆さまに写り込み、本当に美しい風景に目を奪われたのです。両親の旅行には同行することになっていた私は、ここを訪問して、写真に収めるのを楽しみにしていました。
クライストチャーチでの一通りの観光を終えて、いよいよクイーンズタウンへ向かいます。途中、件のテカポ湖に立ち寄る予定のその日、朝から天候は曇り。グレイハウンドバスのルートが標高を上げるにしたがって小雨が降り始め、テカポ湖畔に着く頃には本降りになりました。バスはここで暫く停車。しかし、急速に寒くなった車外へ出てまで景色を見ようという乗客もまばらです。
念願の場所へやってきた私は車外へ。ここはまさに間違いなく私が日本で見た写真の撮影ポイントです。しかし、見える風景は雲を背景に立つ教会と荒天に波立つテカポ湖の姿でした。
この旅の主役はあくまで両親でありましたが、私にとってはこの場所が一つの目的地であっただけにさすがに少しがっかりといったところですね。
その後、数年が過ぎ去り、この時に調べてきた情報などを元にニュージーランドでのツーリングを手配するようになった頃。ツーリングにおいてもクライストチャーチからテカポ、マウントクック、クイーンズタウンというルートはメジャールート。このルートを計画している方々に"私が行った時は雨だったんですね"などと説明していたのですが、帰国後のご連絡を聞くと"天気が良くて絶景でした"という話ばかり。極めつけは現地のガイドとの会話。"4月の初め頃に雨にあうなんて、よほど日頃の行いが悪い"と。
そういえばカナダでもいつも"雨男"扱いの私。オーストラリアでは大洪水の中のツアーもありました。
こうなってくると不運というよりも幸運です。なぜならば、雨の"善き羊飼いの教会"を見たことのある人は少ないでしょ?お客様との会話の"ネタ"にも使えます。
そして何よりも。
あの悪天候のおかげで私の中でテカポ湖と善き羊飼いの教会は忘れ得ぬ場所となりました。もしも、政府観光局の資料どおりの風景を見て帰ってきたら、今頃は私の中でテカポ湖の印象はずっと薄いものになっていたと思うのです。もう忘れてしまっているかもしれません。
ただ単に美しい風景を見るだけなら、ビデオやDVDでも充分楽しめます。楽しみにして、がっかりして。がっかりした体験も旅のうち。その場に自分自身の身を置いてみないとできない貴重な体験。
サッポロの時計台は落胆の対象として有名だが、それをどう受け取るかは本人次第、場面次第だろう。そこで良い女と出会えば忘れられない聖地。しかし、そこでスリに会えば最悪の場所となる。
あるドイツ人は誰もが目指すあのノイシュバンシュタイン城で言ってた。「この城はドイツ人の一部はミッキーマウス・キャッスルと言われ馬鹿にされている。たかが18世紀の城であり、この城を作った人間は頭がおかしく、自分の財力を誇示するためにこの城を作った。古い時代の人々の心も、味も、意味も何も無い。」
しかし、世界中から訪れるツーリストはロマンチック街道の終着地としてこの城を感動の対象として訪れる。彼等は何が何でもそこで感動しなければならないのである。
雨でかすんでいても、暑くて倒れそうでも、体調が悪くても、親が危篤でも長い列を作って入場しなければならないのだ。
しかしやっと入場してもそこは巨大な石の壁に囲まれた空間であり、疲れた顔をしたたくさんの人々で溢れており、あの絶壁に立つ尖塔を象徴とする美しい古城の姿は見られない。
しかし、人々はそこで感動する。イギリス人も、フランス人も、イタリア人も、中国人もそこで感動する。勿論日本人もだ。
感動しているのではなく、自ら感動させているのであろう。知人のドイツ人はあくびをしていた。
旅行とは簡単なようで難しいものである。
補足:永持さんの考えにブレがないのは尊敬に値します。私はぶれっぱなしでっす。