旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

シドニータワーの防犯カメラ

2009年04月04日 | 旅の風景
もう10年近く前になるでしょうか。私は何人かのお客様と共にシドニータワーのエレベーターに乗っていました。オーストラリア、オフロードファンライドからの帰り道。乗り継ぎのために1泊必要となって立ち寄ったシドニーでの出来事です。

もともと、シドニー観光が目的ではありませんでしたから、お客様たちも若干このフリータイムをもてあまし気味。ただ、お一人だけフリータイムを有効に使おうと考えてくれていた人がいたおかげで、全員が彼の計画に便乗。その1つの訪問先がシドニータワーだったわけです。

エレベーターの中にTVモニターが設置されています。そこには防犯カメラからの映像と思われる映像が映し出されています。最初は自分が乗っているエレベーターの映像だと思っていたのですが、どうやら違うエレベーターからの映像である事に私とお客様の一人が気がついたのです。

それでは、我々が乗っているエレベーターの映像が相手側に流れているのだろうと想像した我々は、今度はカメラを探してすぐに発見。カメラに向かって合図するのですが、相手方エレベーターはなかなか気がついてくれた様子はありません。

そのうち、ようやく気がついた人たちが軽く手を振ったりしてくれるようになりました。そんな中、お客様の一人がカメラに向かって”にらめっこ”をするように”珍妙な顔”をして見せたのです。相手側のエレベーターではバカウケです。そして相手方エレベーターに乗っている人々の中からも”にらめっこ返し”してくる人が出て、我々のエレベーターでは”謎のアジア人ども”が何をやっているのかに気がついた他の乗客も参加し始めました。

エレベーター対抗”にらめっこ”はどんどんエスカレート。何せ密室でモニターに向かって演じているだけなので、今ひとつ羞恥心も薄いのです。それは相手も同じ様子なので負けてはいられません。

ひとしきり盛り上がり、同じエレベーターに乗り合わせて”にらめっこチーム”となった者同士が奇妙な連帯感で結ばれた頃、エレベーターは展望デッキに到着しました。エレベーターのドアが開き、エレベーターを降りた我々の眼に映ったのは、同じタイミングで到着してドアが開いた隣のエレベーターから降りてきた、さっきまで鼻の穴と目尻に指を突っ込んで我々を笑わせようとしていた少し小柄な白人男性。それから、もちろん先ほどまでエレベーター内のモニターに映し出されていた人々の実態を持った姿。

モニターに向かって”妙な顔”をしているときは何も感じなかったんですが、実態を持った人々を目にしたとたんに恥ずかしさがこみ上げてきて、逃げるようにその場を離れたのでありました。人の心理というのは不思議なものですね。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿