旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

安い理由

2006年02月03日 | 旅行一般
 先日、ある人と雑談していて、”旅行は最近、信じられないくらい安くなっているけれども、こんな価格でどうやって儲けが出るのか?”という話になったのです。

 旅行の相談に来られたわけではない人であったからこそ出た素朴な話題だと思うのですが、私も日ごろ、どうしてこの点疑問に感じる人があまりいないのかなとも感じていたので、やっぱりそういう風に感じている人もいるんだと安心した次第。

 この疑問、結構重要なのではないでしょうか。金額というものだけで評価を決めていく社会が、耐震強度を偽造してでも”安い”ものを提供する会社をバックアップしてしまったのではないかと思う。もちろん、そこを購入した人を批判する意味ではなく、社会の風潮の話。
 
 話がそれました。前にも書いたかもしれませんが、私は社会人になってしばらく”安さ”を売りにする旅行会社で働いていたので、ある程度はどういう風に成り立っているかを知っています。もちろん全ての会社を知っているわけではありませんが・・。

 安くても結果的に利益が出る方法論というのはいくつかあります。例えば大量の送客を実現して、スケールメリットで航空会社から報奨金的なものを得る方法。これは過去に”スケールメリット”という記事で触れました。でも、昨今のレベルはそんなものではない。スケールメリット分はすでに値引きに入ってしまっているのが現状ですね。

 むしろ、少し前に一般的だったのは、お客様からお支払いいただいた旅行代金を、実際に航空会社やホテルなどに支払うまでのタイムラグを利用して資金運用することによって膨らますという方法。つまり旅行そのものでは利益が出なくても”売り上げ”を使って利殖するやり方です。バブル期には一般的だったやり方であって、バブル期に旅行代金だけは値下がりしていった事がこの証ですね。だから、この時代には旅行手配1件1件の利益など二の次で、とにかく送客と売り上げというムードが漂っていましたし、今もその傾向は少し残っているかなと思います。

 ところが、予約の”間際化”が進んできた昨今ではこれ自体も難しくなっています。単純に運用できる期間が短くなったわけです。
 
 そこで、私が会社員を辞める頃から台頭してきたやり方は”見せなくても良いところで利益を得る”という姑息な方法論。具体的にはキャンセル料と変更料で利益を稼ぐ方法です。これは、いまや旅行関連では一つのビジネスモデルとなっている感があります。

 具体的な例を挙げると最近増えてきた発券期限付きの航空券。航空会社の個人割引運賃などにも多く導入されていますが、これは前にあげた”利殖”の部分と”見えない部分で利益を出す”を両立させる誠に優れたアイデアということもできます。

 誰も予約するときにキャンセルしなければならなくなることなんて想像しないですし、実際、インターネット上でこういった発券期限の厳しい航空券を”安い”として評価している情報を見てみても、取消料や変更料の厳しさにまで触れているケースがほとんどないところを見ると、うまく”見えないところ”に押し込めたものだなと感心させられます。

 ・・・・続く


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1 コメント

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うんうん (き○ら)
2006-02-07 10:46:24
新車を販売するときにけっこう値引きして、あとで修理代で稼ぐカーディーラーと共通点がありますかね。だれも新車買うときにぶつけるとは思いませんよね (^_^;)
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