旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

出っ歯にメガネの日本人

2015年08月19日 | 旅行一般
 日本人と言えば出っ歯に細い目、メガネをかけて首からカメラを提げてスーツにネクタイ、少し猫背というのが欧米の風刺画などの定番です。”そんな日本人いないよ”と思う面もありますが、日本人との文化や考え方の違いを少しずつ極端にしたものと見れば興味深くもあります。
 
 たとえば、欧米の人達は”歯並び”をとても気にするので、歯並びが悪い場合、矯正するのが一般的。日本の場合は八重歯が時には”かわいい”とみなされる場合もある社会。歯列矯正していない人が多く、それが”歯並びの悪い人が多い”という日本人に対する印象となって”出っ歯”という表現になっていると考えると、ある程度当たっているとも思えますし、少し興味深くもあります。

 そして、この事を少し引いて考えた場合に気にしなければならないのは私達が持っている様々な国に対する先入観はどうだろうかという事であります。

 私が初めて渡航した先はイギリスでしたが、その頃の私のイギリス人に対するイメージは山高帽にコウモリ傘。ところが現地へ行ってみると山高帽はおろか、傘を持っている人もほとんど見かけませんでした。"1日に四季がある"と表現される事のあるイギリスの天候は1日に数回にわたって突然太陽が陰って雨が通り過ぎて行ったりするのですが、そんな時、イギリスの人達は羽織ったパーカーのフードをサッと頭にかけてやり過ごす人がほとんどで、そのためかロンドンでスーツ姿の人達でもスーツの上にマウンテンパーカーのような上着を羽織っている人を多く見かけました。

 コウモリ傘を手に歩くイギリス人のイメージは、おそらく天候の急変に備えて晴れていても傘を持っている姿を風刺したものだったのかもしれません。その後折り畳み傘や防水性の上着の発達で今は違う姿に変化しているのだと思います。

 ちなみに私はここ数十年イギリスには渡航していないので、その後また一大コウモリ傘ブームがやってきている可能性もありますが。

 近年インターネットをはじめとする情報源が身の回りに多くなったおかげで先入観を持たずに正確な知識を持てるようになったかというと、必ずしもそうではなさそうです。むしろ先入観の源が増えた感じ。渡航前に熱心に”情報”を調べて先入観で頭が一杯になった状態で現地入りする人が多く見受けられます。

 こういう時代になって、先入観とうまく付き合う事も旅を楽しむために必要な技術になったとも言えます。

 先入観が一番悪さをするのは、旅先で見たこと感じたことをいちいち先入観に当てはめて解釈しようとする事。たとえば海外から日本に来た旅行者が日本人のメガネをかけている人を見て”やっぱり日本人はメガネかけてるなぁ”と言うような流れ。これを繰り返していると、せっかく渡航しても先入観として自分に入り込んだ情報の確認作業を延々行うことになってしまいますし、必ずしも正しい視点を持てはいないと思います。実際日本に住んでいる我々の日本人観で”皆がメガネをかけている”とは感じてはいないでしょう。

 先入観とうまく付き合っていくためには”ホントのところどうなの?”と思いながら観察する事、そして”実際は全然ちがうじゃない”と思えることを探す事かなと思います。あなたが実際に赴いて見聞きした事はどんな立派な人たちの与えてくれる情報よりもおそらく真実に近い事。それに触れる事ができるのは、実際に体験した人だけに与えられた特権です。

 思えばこの先入観、旅先の事柄だけでなく様々なところに溢れていないでしょうか。日々触れる情報に対しても”ホントのところどうなの?”という視点を持ってみることが必要なのかもしれませんね。 


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