旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

遊びの入り口

2007年06月19日 | 旅行一般
もう10年ほど前だと思うのですが、私の住んでいる集合住宅で子供を連れてキャンプに行くのが流行った事があります。金曜日や土曜日になると何家族かがワゴン車をロビーの前につけて、ホームセンターででも買ってきたのであろう大量のキャンプ用品を車に詰め込むのをゲーム機を片手に子供が待っている光景を夏場、よく見かけたものです。

多分、私の子供も誘われたりしたようですが、この件、私は結局、断っておりました。私自身は小学校中学年の頃から子供だけでキャンプに行っていましたし、大学の頃は一時期、旅にはまるまでは山岳部に所属していて、また、旅をはじめてからも、何度かはアジアや中近東で数ヶ月にわたってキャンプのみで過ごした事もあります。登山やキャンプについてはかなり専門的な体験と知識をもっています。誘ってくれた方々には悪いのですが、正直な話、誘ってくれる人たちの装備や遊びに対するスタンスがいかにも中途半端に見えましたし、そのような事をスタートラインにアウトドアという遊びを体験して欲しくないと思ったからです。

キャンプを本当にエンジョイしているのであれば、子供たちはゲーム機片手に出かけたりしないでしょう。ゲーム機やマンガを投げ捨ててでも出かける位楽しいものであるはずです。

仕事をするのであれば、失敗は他の人にも影響しますし、上手くいかない事、間違っている事は先輩や上司が指導して直してくれるかもしれません。あるいは取引先から注意を受ける事もあるでしょう。そして、その事がストレスになっている人もいるでしょう。ところが遊びの場合は間違いを正してくれる人などいない事も多く、その後、その遊びに自分の中でどれだけの発展性が得られるかは初心者の頃にどのような人達と接したかによって大きく変わってくると思うのです。そしてその軌道修正をするのも自分自身以外にはありません。利害関係が無いだけに、上手い入り口を見つける必要は仕事以上に高いと思うのです。

先の例で言えば、子供達を連れてキャンプに行こうと誰かが思い立ったのでしょうが、その方法論や装備の知識もなく、おそらく雑誌やなにかから情報を得て、「アレも便利、コレも便利」と雑誌で紹介された物資をとにかく買いそろえてキャンプに向かうのでありましょう。雑誌はメーカーやショップとの広告の契約もありますから、様々なアウトドアグッズを「こんな物必要ありません」と書く事はありません。そんな姿がもともと、アウトドアを楽しむというのは"不便の楽しみ"である事を忘れてしまっているように私には見えました。誰か良い経験のある人が中にいれば、多分子供たちもゲーム機やマンガ片手にキャンプに出かけるような事態にはならないのではないかと思います。上手い入り口を見つけられないと結局、その遊びの形態だけを真似るだけで、本当の楽しみはいつまでも見つからないのではないでしょうか。


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