旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

黄昏の旅行業

2000年07月08日 | 旅行一般
たとえば、我々はスタッフが2人しかいない旅行会社ですが、皆さんの旅行手配を行う際、この2人が全てを行っているわけではありません。(当たり前ですが。)
 旅行業界には各国のホテル手配を専門に行うホテルクーポン会社、鉄道や送迎一般を行う地上手配会社、航空券の卸売りや、パッケージツアーの卸売りを行うホールセラー、更には航空券の空港での引渡しを専門に行うセンディング会社など、様々な業種が存在します。お客様の要望から、これらの様々な業種を複雑に絡めてひとつの旅行手配を完成させるのが、我々、業界内で”リテーラー”と呼ばれる、皆さんと直接やり取りをする旅行会社です。
 皆さんが旅行に出発するまでは、もちろん私たち”リテーラー”と話を進めて、その意思を”地上手配会社”に伝えるわけですが、出発してしまった後、現地で直接お世話になるのは地上手配会社。ですから、旅行が楽しいものになるかどうかのかなりの部分を地上手配会社が占めていると言えます。逆に私たち”リテーラー”の側は、いかに適切な地上手配会社をその手配に選択するかに技量を問われるわけです。
 地上手配会社はその業務の性質上、ほとんどの場合業務の対象とするエリアや国を絞って、そこに駐在員を置いています。また、国内での業務を担当するスタッフも駐在経験者であったり、そうでなくても何度となくその地へ足を運んで、ホテルを見学したり、常に新鮮な情報をもっており、手配旅行の日程を組んでいく段階で、より良い日程になるよう提案をしてくれたりもする、我々のように手配旅行を中心として扱う”リテーラー”にとっては強い味方です。我々とて、すべての都市へ渡航経験があるわけではありませんから・・・彼らの情報は非常に貴重です。
 ところが、ここ数年、地上手配会社の力量の不足を強く感じる事が多くなってきました。特にヨーロッパについては、正直な話、もはや地上手配会社を使って手配を行うメリットより、デメリットのほうが多いのではないかという結論にE&G内では達しはじめています。最近はやりの”格安ツアー”に対応するために、過剰な業務の効率化と組織のスリム化を推し進めた結果、ただの電話受け付け係のスタッフが、機械的に業務処理を行っている地上手配会社はただの”予約センター”に過ぎないのであって、それであれば、一応一通りの英語力のある我々は直接ホテルに予約を入れられるし、彼らの知識よりはガイドブックのほうがよっぽどしっかりしているので、存在理由がわかりません。
 ★”うちはそんな地上手配会社ではないよ”というランドオペレーターの方がもし、この記事を見ていたらぜひご連絡ください。
 と、ひとしきり地上手配会社の荒廃ぶりを愚痴った上で。
 そうです。我々リテーラーも同じ状況にありますね。海外旅行もろくにしたことがないスタッフが平気でお客様に海外旅行商品を売りつけて、手配はバックグラウンドで動いている”手配課”とかに任せっぱなし。その”手配課”は、利潤追求のために”一番安い”地上手配会社に手配を依頼という図式で旅行商品ができあがっていきます。
 ここまで読んできた人は気づきましたか??
 そうです。あなたの担当者⇒手配課の人間と伝わっていく間に伝言ゲームではないですが、あなたの旅行に描いているイメージや希望はいつのまにかその旅行商品の主題から外れて、いかに”儲かる”かに変換されてしまっているわけです。
 まあ、それでもトラブルなく旅行が完了できればそれなりに満足できるのかもしれませんけどね。
 ただ、前に述べたような地上手配会社の荒廃が進行している現状を見ると、あまりにも”プロ”である必要のない手配が増えているという事実を感じるのです。そういう意味でいくとちょっと失礼かもしれませんが、皆さん”旅行者”が旅行会社に突きつける要求も”甘すぎる”のかもね。
 あなたの考えた旅行プランをそのまま手配することなんて誰でもできる。”ここをこうしたほうが良いですよ。”とか提案して、もっと良いプランにできるよう努力してくれる旅行会社があと何社残っているでしょうか?我々もそういう旅行会社として存在できるように努力しています。また、ただのディスカウンターばかりではなく、そういう旅行会社が評価される時代が来ることを切に希望するばかりです。

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