橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

ボロマンションと屋上の誘惑〜引越し顛末記1

2016-05-08 19:50:29 | こじらせ人生
結局、また築年数が自分の歳に近いおんぼろマンションに引っ越そうとしている。今度はもうちょっと人を呼べるようなところにしようと思って候補をあげていたのだが、最後の最後、どうも私には似合わない気がしてやめてしまった。こんどは閑静な住宅地でも無いので、朝の鳥の鳴き声や近所の桜並木も無い。ベランダも無い。風呂やトイレも最低限の設備。風呂にはなんと換気扇もついていない。洗面台も無い。なぜそんなところに住むのかといえば、一番の決め手となったのは、最上階で、そこから階段でつながる屋上を物干しに使っていいと言われたことだ。その屋上には藤棚みたいな鉄の物干し台と小学校の校庭の水飲み場みたいな水場もついていて、洗濯のみの利用ではあるが、夏には物干し台に釣り忍と風鈴くらいぶら下げたところで怒られはしないだろう。

同時に迷っていた部屋は地下鉄の駅から2分、今時のタイマー付きの広くて窓のあるお風呂。ウォシュレットトイレ、オーブン作り付けのシステムキッチン、部屋も明るい、しかしベランダは狭くて北西向きという物件。この部屋は、ボロマンション付属の屋上に負けた。この駅から2分の部屋も、立地と設備の良さ、窓の多さから考えたらかなり安い物件だったと思うのでちょっと惜しいのだが、ボロマンションとの差額と屋上の存在を考えて諦めることにした。

こうした普通の物件では、「屋上は共有部分だから使えるとか考えないでください」と言われ、そういう時の不動産屋の私に対する目は、面倒な人、変わった人、そんな感じなのだ。共有部分だったらみんなで使えばいいじゃないと思うけれど、なにか面倒が起こった時のことを考えると、どうしてもその前に、使わないほうがいいとなってしまうのだろう。

そういう「常識」に辟易して、私のような「非常識」な人間が東京で暮らすのならば、そういう社会のエアポケットに暮らすしかないのだろうと腹をくくった。坂口恭平に共感してるんだから、これは当然なことなのだが、やっぱがんホルダーで、体休めたほうがいいんだから、生活からストレスはとりのぞきたいという思いが、これまで私を日和らせていた。でも、何がストレスになるかは暮らしてみなければわからない。それに、普通に暮らすことにどれほどの面白さがあるのか?そんなことを考えてしまう私は、やはり変な物件に住んだほうがいいんだろうとも思った。

もはやアラフィフ、独身、仕事だって安定しない、さらにがんホルダーで、住宅ローンはまだ十年続く、などなど、いわゆる「普通の幸せ」など望むべくも無い私だ。もう「おかしな幸せ」にたどり着くしかない。「非常識」に生きずしてどう生きるのだ。極論すれば、サバイバルするとは非常識に生きることではないか。

そのボロマンションの換気扇の無い風呂はカビが生えるかもしれない。カビを生えさせないための努力が必要だ。しかし、近所には深夜1時までやっている銭湯もある。換気扇設置を大家さんに掛け合ってもいいかもしれない。部屋の広さも予定よりちょっと狭くなって、今の広い部屋から考えたら、どんな生活になるかまだ想像もつかないが、とにかく屋上にあがれば、広いシーツも大判のバスタオルも燦々と輝くおひさまの下にのびのびと干せる幸せは味わえる。私の中の幸せな風景のひとつが、青空の下、シーツをはためかせながら干す風景なのだ。夕焼けを見ながら洗濯物を取り込み、しばし暮れ行く空を眺める。

今回の引越しは、東京の都心でこれが実現できるだけでも良しとせねばならないのかもしれない。それに、多分ここ、部屋からでも隅田川の花火見えるんじゃ無いかなあ。

住処をつくる、もしくは選ぶということは、そこに自分の生き方があらわれる。自分が普段語ってる哲学みたいなものとか、私だったら「火鉢クラブ」で言ってることなんかだが、それがどこまで本気なのかが試される。そういう意味では私もぜんぜん筋金入りでは無いし、便利さに日和ってしまう時もあるが、まあ私の周りで、こんな部屋に住もうなんて人は皆無だと思うし、あまり筋通し過ぎて苦しくなっても本末転倒だ。そこらへんもゆるーく快適な暮らしとは何かを探りたい。

でも、この半月ほど部屋探しをして、私自身、本当に求めている暮らしとはどういうものなのか、いろいろ考えさせられた。無意識の部分を掘り起こしていくと、また違ったものが見えてくる。理想の家というのはあっても、この東京にあってそれをそのまま実現することなど、夢のまた夢。それに、街と切り離された家としての理想は、快適な暮らしをあらわすものとは言えない。本当に快適な生活への模索はまだまだ続きそうだ。

今、ボロアパートを見違えるように・・・みたいなベージにはまっている。

次は家賃と収入について書くかなあ・・・

 

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