5月20日は24節気の小満。小満はピンとこないイメージかもしれませんが、
初夏の陽を浴びて花々が甘く香り、木々の緑も深まりを増し
すべてが輝く季節。
この「小満」を3つに分けた七十二候では、初候「蚕起食桑(カイコおきてくわをはむ)」
今ではほとんど見られなくなりましたが、養蚕農家では、休むことなく蚕に桑の葉を
与える続ける大忙しの時季です。私が小学生の時期、親せきの家では天井裏で、カサ
カサと桑の葉をひたすら食べているカイコの行動音に、眠りも忘れるほどの光景を
覚えています。埼玉でも群馬でも、そのほかの農家の多くが養蚕にいそしんでいまし。
世界遺産になった、富岡製糸場(渋沢栄一が開いた)は明治維新の頃から海外への日本
の重要な輸出品の絹織物工場として一世を風靡した時代であった。
また皇室の日本文化行事として、先日11日「御養蚕始の儀」が行われ、上皇后さまから皇后雅子様に上質な糸を生み出す「小石丸」の飼育の受け渡しが行われました。
これらの美しい生糸を作るためのカイコが大いに力を発揮する時季が「小満」の始まりです。
ちなみに、一つの繭が生糸になる長さは、約1300メートルになるそうです。
日本の絹織物の素晴らしさがもてはやされたよき時代でした。
桑の実 紅花
また「小満」の次候「紅花栄(べにばなさかう)」染料の材料となる、紅花が次第に色を増す時期、江戸時代から口紅として使われてきました。紅花の種子を絞ったものは、べにばな油として食用に使われています。
大麦
末候「麦秋至(麦のときいたる)」です。麦はまっすぐ天に伸びて収穫を迎えます。
稲の「実るほど頭の下がる稲穂」とは逆に、堂々とした穂先を天に伸ばした光景は夏にふさわしい姿ですね?
「小満」は万物が天地に満ち始めるころ。人も植物も初夏の日を浴びて、輝く季節。
てんとう虫 カルガモ親子
鶯の鳴き声も艶を増し、天道虫(テントウムシ)も盛んに活動し、カルガモ親子のほのぼのした光景が見られる頃です。
また、里山で蛍の飛び交う灯りも待ち遠しい時季でもあります。
ドクダミ・十薬 八重ドクダミ ブライダルベール
ドクダミも元気に純白の4枚の苞広げ、毒消しとしての薬草に成長する時期。ドクダミのかわいそうな名前に比べて、「ブライダルベール(花嫁が白いベールをかぶった様)」の名がついた可憐な花が咲きだし、目を楽しませてくれます。
「小満」はあらゆる生物が私たちに、夏への気配を呼び覚ましてくれます。
梅雨の前、身近の自然界の営みと五感が躍る季節を味わってみるのも楽しいものです。(輝さん)