熱いというより痛い日差し。
午前中でさえ、外に出るとその日差しに皮膚がチリチリ痛い。
家族で海に出かけたという会社の人は顔も腕も赤剥けになって出社し、その痛みにじっとしていられないらしく、立っていても座っていても怪しげに身体を揺らしておりました。
「見て見て」と言ってシャツを捲ると、背中も見事に真っ赤になっていて、直接触らずとも手をかざしただけで熱を感じ、思わず因幡の白兎の物語を思い出したのでした。
そんな今日は、朝から切ないものを見てしまい、ちょっとブルーになっていたのであります。
それは羽化に失敗したセミで、頭の部分だけ外に出た状態で絶命しているのでありました。
頭は完全に黒くなっていたので、もう随分時間が経過したものでしょう。
南無三と心の中で唱えて、駅へ向かいました。
何年も土の中で過ごし、やっと陽の目を見ることが出来ることになったのに何でこんな目に、と思ったらなんだか朝からやりきれない気持ちになってしまいました。
今年の夏は何故か、羽化する前の土から出て来て樹に登る前のセミによく遭遇します。
海と反対方向に向かう小亀のように、樹のある場所と反対方向の車道に向かって舗道を進むセミを、そっと樹の根元に連れて行ったりしています。