カンキツ類特有の性質として、単胚性種子と多胚性種子というものがあります!
単胚性種子とは、その名の通り胚が種子の中に一つ含まれている種子、
多胚性種子とは一つの種子の中に種子がたくさん含まれている種子のことを言います。
例えばこれはシークワーサーの種ですが、皮をむいて中身を出すと、
このように二つの種が出てきます。
(種が二つに割れたわけではなく、両方ともちゃんと発芽します)
今回は二つだけでしたが、場合によってはもっとたくさんの種が出てきます。
興味深いのが、たくさん出てきた種のうち、母親と父親の血を引いた種はたった一つだけであり、他はすべて母親のクローンとなってしまうということです。この単胚性種子ができるか多胚性種子ができるかは品種ごとに決まっており、温州ミカンは多胚性、ブンタン系の多くの品種は単胚性種子を形成することが分かっています。母親のクローンは品種改良においては必要ありませんから、多胚性の種子を作る品種を母親にしてしまうと、品種改良の効率が大きく落ちてしまいまうわけです。
日本でカンキツの品種改良が始まったころは、手で向ける温州ミカンのような品種は、ほとんどが多胚性種子を作る品種ばかりだったため、その品種改良は困難を極めたといわれています。それを解決したのが、有名な清見という品種。多胚性種子を作る品種同士から生まれた品種ですが、奇跡的に単胚性種子を形成したため、ためべおいしい品種というだけでなく、交配親としても大いに活躍しました。
現在ある品種は、その親をたどるとどこかで必ず清見に行き当たるといっても過言ではありません。それほどにも、清見は交配親として使われたわけですが、その背景には、この特殊な種の性質があったというわけです。