2月初日の今日は晴れのち曇り。今日は早朝に起きて出かけるつもりだったが、思いっきり寝坊した。目が覚めると枕元の時計の針は午前8時を示している。慌てて起床して、カーテンを開けて窓の外を見た。上空には青空が広がっているものの、雲が多い空模様である。日が射し込んでいて、空は明るくなっていた。窓を開けると、冷たい空気が室内に流れ込んでくる。ベランダに出てみると日射しの温もりが感じられるものの、凜として張り詰めた空気がヒンヤリと感じられた。
明日の早朝に館林で写真部の野鳥撮影会があり、昨年と同様、前日泊をする予定にしている。昨年の撮影会の時は、夜に館林に入ったが、今年はできることなら日中に入って、館林観光をしたいと思っていた。ところが、寝坊して予定が大幅に狂った。準備も万全ではなく、結局、家を出たのは昼前である。
日中は快晴。上空には雲ひとつ無い青空が広がった。昼間の最高気温は11℃で湿度が低く、北よりの風が吹いている。午後になって薄い雲が広がってきた。前日泊するホテルは館林駅が最寄りだが、今日はその前に分福茶釜の寺として有名な茂林寺に行ってみることにして、茂林寺前駅で下車した。
この駅から歩いて10分ほど行ったところに茂林寺がある。この寺は青龍山茂林寺と称し、1426年に開山された曹洞宗の寺院である。駅前には分福茶釜に化けたタヌキの像が設置されている。
駅から寺に向かって歩いて行く。駅の南側に出るとバス通りがあって、その道を東に歩いて行った。しばらく行くと、「←茂林寺」という道路標識が見えてきて、その下に横断歩道が見える。この横断歩道の先に見える道に入ると、そこは茂林寺の門前にある商店街である。
この道を70mほども歩くと、左手に茂林寺の総門がある。
1468年に建立されたという総門は通称、黒門と呼ばれているとのこと。
この門をくぐると参道がある。
参道の両脇には分福茶釜に化けたタヌキの像が片側に11体、両脇に22体配されている。
タヌキの像は、みな表情が豊かで面白い。ちなみに境内にはこの他にも3体のタヌキの像がある他、本堂内や境内のお堂に数多くのタヌキの置物が置かれている。
参道を進むと山門がある。山門は通称赤門と呼ばれていて、黒門から本堂へと続く門である。1694年建立とのこと。
山門をくぐると、正面に本堂が見えてきた。本堂は総門と同じ1468年に建立され、1727年に改築を行い、現在に至るとのこと。本尊は釈迦如来である。なお、堂内に掲げられている涅槃図の保護のため、2月中旬まで扉が閉められているとのこと。
向かって本堂の右手には群馬県指定天然記念物「ラカンマキ」の大木が植わっている。
この木は茂林寺の開基の際、魔よけのためにヒイラギとともに植えられたと伝えられている名木で、樹齢は600年近くになるとのこと。
本堂の左手には守鶴堂というお堂がある。
この寺院の開山は大林正通という僧侶で、美濃国土岐氏の出目とのこと。この和尚に従っていたのが、守鶴という老僧である。この僧侶は大林和尚が諸国行脚の旅の途中、伊香保で出会ったとのこと。
この守鶴和尚はその後、代々の住職に仕えていたが、1570年に茂林寺で千人法会が催された際、大勢の来客を賄う湯釜として、一つの茶釜を持ち込んだという。この茶釜はいくら湯を汲んでも尽きることが無かったとのこと。守鶴和尚はこの茶釜を「紫金銅分福茶釜」と名付けたとのことである。
その後、守鶴和尚は1587年に飄然と寺を去って行方が知れなくなったとのこと。熟睡していて手足に毛が生え、尾が付いたむじな(狸の説もある)の正体を現わしたとも言われ、後世に狸の化身だと伝えるものもある。
このお堂にはタヌキの置物が多数置かれていて、見る者を楽しませている。
この寺で朱印帳に御朱印をもらおうと思ったのだが、記帳はしないとのことだった。そこで、御朱印をもらうのは止めて、宝物拝観をすることにした。本堂右手の受付で拝観料を支払い、本堂に入る。
正面中央には御本尊の阿弥陀如来が安置されている。ここで参拝を済ませると、左手にある涅槃図を拝見させていただいた。その左手奥には開基の大林正通大和尚の像がある。
本堂の裏手に出ると、庭が設けられていた。
庭を見ながら順路に従って、宝物室に向かう。
入口のすぐ右手に「分福茶釜」がある。ちなみに撮影禁止である。堂内をぐるりと廻ると、あらためて本尊に手を合わせてお堂を出た。拝観に要した時間は30分程度か。お堂の中はよく冷えていて、寒かったこともあり、あまりゆっくり出来なかった。
寺を出ようとすると、タヌキならぬネコに会った。
ネコは人なつこく近づいてきたが、しばらくして離れて行ってしまった。
寺を後にすると、茂林寺の北側に出た。このあたりは群馬県指定天然記念物の茂林寺沼及び低地湿原となっている。
茂林寺沼を一望できる展望デッキに出た。
沼にはカモやシロサギが遊んでいた。
低地湿原を抜けて、館林駅に向かう。午後になって次第に雲の厚みが増してきた。太陽が雲を透かすように照りつけていたが、それも夕方になって日が沈むと、急速に暗くなってきた。
館林駅前で写真部の先輩と合流すると、ホテルに向かった。ホテルにチェックインすると、すぐに夕食である。夕食を食べた後は、ホテルの大浴場で温まって、部屋に戻る。
部屋からは沼が一望できるはずだが、窓からは見えるのは漆黒の闇である。それでも深夜になって沼に白鳥が戻ってきたらしい。
窓の外から白鳥の鳴き声が聞こえていた。