-写真の部屋-

奥野和彦

レタスとキャベツ

2015-06-01 22:14:19 | 写真


50年生きて来て
海側の町や暮らしぶりはいろいろ見た方だと思う。
でも、山の中での町や人々のことは知らなくて
学校で行った林間学校や修学旅行で初めて感じたのだった。
中でも、高校1年生で入学してすぐに行ったオリエンテーションは
清里高原のバンガローに行ったのであって
ただの懇親林間教室でよさそうなものだが
「オリエンテーション」「清里高原」の響きとともに
高校生ってのはなかなかいいんじゃないか と希望にあふれたスタートであった。
清里を走るJR小海線(当時国鉄)は日本一高い場所を走る
路線としてインプットされてあって
そんな機会でもなければ見られない小海線のディーゼルカーが
バンガローのそばを走っているのを知って近くの駅まで見に行った。
駅までの道の両側にはレタスがなっていて
自分の高校への通学路脇にあるキャベツ畑とは似て非なる物であった。
地面に生えているキャベツの葉など青虫がうにょうにょ這っているのしか
想像しないが、レタスの葉には水滴がしたたっているイメージである。
畑と線路の境界には白樺の並木が立っていて
東武野田線(現東武アーバンパークライン…)とキャベツ畑を隔てる
笹竹の枯れて茶色くなった草薮とは違うのだった。

駅に着いてディーゼルカーの来るのを待った。
好きな奴(気動車)が来ればいいなと思っていたが
来たのは寒冷地仕様のもっと珍しいやつでさらに希少価値感が
アップするのであった。 山は違うぜ。高原は違うぜ。
ただ、ディーゼルカーから降りて来たのは地元の
短ランを来た学生で、こっちを「け、また関東の林間学校かよ」
ぐらいにチロっと見るので、「お、」とこちらも身構えるが
入ったばかりの高校の真新しい体育ジャージで気動車を
見に来ているのでは全く迫力がない。
寒冷地仕様のディーゼル同様、短ランというオレたちの文化からすると
ダサくてしょうがない学生服も初めて見た日だと思うが
そういう「地方」の普通のあたりまえを面白いと感じた最初かもしれない。
さすが、山奥は違うぜ。
その駅の名前は分からない。どこの町のバンガローに
泊まったのかも分からない。

翌日、私たちの乗った観光バスが
あの、清里の駅前を通り、それもそれなりになぜか
「うわぁ~清里高原だぁ~」と
山だからこそではないところにまで感激して帰って来た。