-写真の部屋-

奥野和彦

顔のむくみ加減

2014-05-13 23:17:26 | 写真
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久しぶりに暗室作業をしようと思っていたら
パタパタと仕事が入って来て
そうはいかなくなった。

なんとなくカメラにフィルムが入っている時に
なんとなく撮ったものが溜まって来て
少し片付けておこうと思っただけなので
出来なければ出来ないでまた放っておくだけの
ことである。
ただ、暗室作業はたまにすると
やはり少し背筋がシャンとするような気がするし
写真をするものとしては特別な時間なのだと思う。

朝、洗面台でむくんだ自分の顔を見る。
その腫れぼったい感じが初めて会ったときの
自分の写真の先生に似てるかなと思った。
いい男として有名な写真家なので、似てるというのは
そういう意味ではないが、考えてみたら
初めて会った頃のその人の年齢に自分が今なっている。
今の自分に、そんな青臭い若者が自分の写真を見てくれ
と写真の束を持って現れたらどう答えるだろうか。

季節もまさに今頃だった。
その日、仕事場兼ギャラリーを訪ねた
自分の前に現れたセンセイは
ボサボサに伸びた頭に緑色のセーター、
黒いジーンズ、サンダル履き、
首からタオルを1本ぶら下げて、必死で用件を話す
私の顔には一瞥もくれず、こちらには背中を向けたまま
壁の写真を取り替えていた。

「ちょっと待ってて」と一言残して
一旦隣の部屋に入り、再び現れた。
中央に置いてあった丸いガラステーブルの上に
キリンビールのグラスに紙パックから注いだ
雪印のコーヒー牛乳。
「どうぞ」と言われて
初めて目が合ったその笑顔は
相当シャイな不良のとても優しい先輩のようだった。
カッコ良すぎたので
何処かの食堂で水飲み用に重ねてあった
キリンビールのグラスをさっそくかっぱらって来た。

「いいよ、撮ったら持っておいで、オレ見るから。」
そういわれて入ってしまった写真の世界。
もっと、真面目にやらなくちゃ。







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