二人は本当に仲が良かった。年上のOが
年下のK君を上手くあやして釣り合いを取っている感じがした。
どこに行くのも何をするのも一緒。
元々やんちゃなK君の言動に
「あの子は白か黒しかないんだよね」と言って
Oが溜息をつくこともあったけど
あまり大概の場合はOが怒り、K君が素早く謝って
丸く収まっていた。分かりやすくOの事が大好きなK君に
Oも長く怒っていられなかった。
だから二人が喧嘩をした所なんて見たことが無い。
二人で何処かへ遊びに行く時には
必ずファミリーレストランで朝食をとる。
K君の食べ方が子供のように周囲を汚すので
世話をするのが大変だとOがぼやいていた。
…Oの食べ方だって十分子供っぽいのになあ。
私はニヤニヤしながら頷く。
二人でドライブに行った時に、
車が高速道路で故障して大変だった。
新しく出来たあのショッピングモールに行って
こんなものを一緒に買ったよ。
K君の家に遊びに行ったら猫が沢山いてねえ。
そんな話をするOの横顔を見ていたら
ある時その顔がおばあさんの顔に見えた。
「…OはK君とずっとこうやって暮らして行くんだろうね」
何の気なしにそう言った。
Oもそうだろうねえと当たり前みたいに言った。
おばあさんみたいな横顔で頷いていた。
以前だったら、私が十代の若者だったら多分
こんな会話を嫌っていただろう。
Oは将来何をしたいとか、何になりたいとかいう
希望を前から持っていなかった。
将来のビジョンが明確に決まっていて、
夢に向かって努力するような
そんな生き方に憧れていたし、そうなろうと私は思っていた。
やりたい事が何も無いなんて!
保守的が過ぎて無色な彼女の生き方は若かった私にとって
…本当はすごく格好悪いと思っていたのだ。
だけどそうだろうねえと頷く彼女の横顔は
すごく安定した生活を築いてきたおばあさんの顔に見えた。
結婚して出産を機に退職し、子供が成長して孫が出来ても
結婚当初からずっと仲の良い老夫婦として
二人で幸せに生きているように見えた。
子供だった私は派手な成功をいつも妄想していたけど
そうやって「まっとうに」生きていく生き方を
初めてちょっと羨ましいなと思った。
「ねえ、今Oの顔がおばあさんに見えたよ」
笑いながらOにそう言ったら、
「そうかあ。今、おばあさんになった時のこと
考えてたからかなあ」
Oはそう言って私の顔を見た。
このままこうしておばあさんになるのかもしれない。
でもそれも全然悪くないよね、と
おばあさんの目で笑っていた。
年下のK君を上手くあやして釣り合いを取っている感じがした。
どこに行くのも何をするのも一緒。
元々やんちゃなK君の言動に
「あの子は白か黒しかないんだよね」と言って
Oが溜息をつくこともあったけど
あまり大概の場合はOが怒り、K君が素早く謝って
丸く収まっていた。分かりやすくOの事が大好きなK君に
Oも長く怒っていられなかった。
だから二人が喧嘩をした所なんて見たことが無い。
二人で何処かへ遊びに行く時には
必ずファミリーレストランで朝食をとる。
K君の食べ方が子供のように周囲を汚すので
世話をするのが大変だとOがぼやいていた。
…Oの食べ方だって十分子供っぽいのになあ。
私はニヤニヤしながら頷く。
二人でドライブに行った時に、
車が高速道路で故障して大変だった。
新しく出来たあのショッピングモールに行って
こんなものを一緒に買ったよ。
K君の家に遊びに行ったら猫が沢山いてねえ。
そんな話をするOの横顔を見ていたら
ある時その顔がおばあさんの顔に見えた。
「…OはK君とずっとこうやって暮らして行くんだろうね」
何の気なしにそう言った。
Oもそうだろうねえと当たり前みたいに言った。
おばあさんみたいな横顔で頷いていた。
以前だったら、私が十代の若者だったら多分
こんな会話を嫌っていただろう。
Oは将来何をしたいとか、何になりたいとかいう
希望を前から持っていなかった。
将来のビジョンが明確に決まっていて、
夢に向かって努力するような
そんな生き方に憧れていたし、そうなろうと私は思っていた。
やりたい事が何も無いなんて!
保守的が過ぎて無色な彼女の生き方は若かった私にとって
…本当はすごく格好悪いと思っていたのだ。
だけどそうだろうねえと頷く彼女の横顔は
すごく安定した生活を築いてきたおばあさんの顔に見えた。
結婚して出産を機に退職し、子供が成長して孫が出来ても
結婚当初からずっと仲の良い老夫婦として
二人で幸せに生きているように見えた。
子供だった私は派手な成功をいつも妄想していたけど
そうやって「まっとうに」生きていく生き方を
初めてちょっと羨ましいなと思った。
「ねえ、今Oの顔がおばあさんに見えたよ」
笑いながらOにそう言ったら、
「そうかあ。今、おばあさんになった時のこと
考えてたからかなあ」
Oはそう言って私の顔を見た。
このままこうしておばあさんになるのかもしれない。
でもそれも全然悪くないよね、と
おばあさんの目で笑っていた。