化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

ナイジェリアで武装集団が石油施設破壊

2006-02-22 | 石油
トリノオリンピックの話題といえばなんと言っても女子カーリングチームの検討でしょう。北海道出身の「チーム青森」の彼女たちの頑張りによりカーリングというマイナーな競技の面白さが十分にTVを通じて伝わってきた。ついテレビに見入って力が入ったのは小生だけではないでしょう。実に奥の深い競技だと言う事がわかりました。
それから女子ホッケーのチームCanadaはやっぱり強かった。スピード、パワー、テクニックとも群を抜いていたと感じます。それに比べると男子の方のチームCanadaはもう一つです。これからエンジンがかかってくるのでしょうか。

このような平和な時間にあって、アフリカのナイジェリアでは武装集団が石油施設、パイプラインの爆破やターミナルへの攻撃を仕掛け、ターミナルは機能停止している。同国の主オペレーション会社であるシェルはforce majeureを宣言している。同国では昨年から地元武装勢力と政府軍との衝突が相次いでいたが、石油施設就労者が軍に誘拐されたことで、20日の大きな攻撃につながっている。シェルによれば同国の生産能力250万BDのうち45.5万BDが休止している。今後も10から20%程度の生産ダウンは避けられないようだ。

先週来、60ドルを下回ってきた原油価格はこの事件で北海Brentが61.46$/bblに上昇している。21日のWTIは62.45まで上昇している。

ナイジェリアの原油の半分は米国に輸出されている。米国の原油輸入先はメキシコ、ベネズエラ、カナダ、サウジアラビアの次にナイジェリアとなっている。ナイジェリアの原油は中東原油と比較すると軽質で不純物が少ない、いわゆるlight sweet crudeですからアメリカにとっては重要な産油国の一つです。地球の反対側の小さな事件が、世界の原油市況を動かす典型的な例です。

オイルサンド

2006-01-13 | 石油
カナダ、正確にはアルバータ州からというべきかも知れないが、オイルサンドから生産される石油を輸入するため、経済産業省と石油各社は検討を始める。

アルバータ州にはサウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵する量のオイルサンドがあると推定されている。オイルサンドはタールサンドとも言われるように、重質油分を含んだ土のことです。サンドと呼んでいますが、見た目は黒い土です。砂状なのはむしろオイルシェールの方ですね。

このオイルサンドから経済的にオイルを回収するには8%程度の含有量が必要といわれていましたが、このところの原油高を受けて採算は著しく向上しているものと思われます。オイルサンドからお湯を使って油分を抽出し、この油水混合物からさらに軽油相当油でタール分を抽出します。抽出されるのはタール状ですから、そのままでは既存の石油精製にまわすことができませんので、水素化分解や熱分解により軽質油に変換します。この軽質油が人造原油として、原油と同様に市場で取引されるわけです。オイルサンド開発会社のSyncrudeではこの人造原油をSSB(Syncrude sour crude)と呼んでいます。

水素化分解をするには大量の水素と分解装置が必要です。あるいは熱分解すればコークスが副生物として残ります。欲しいのは液体燃料ですので、このコークスは廃棄というか山積にされているはずです。硫黄含有量が8%とかありますから、そのまま燃料にするには強力な排煙脱硫装置が必要です。

Syncrude社にはかつて三菱石油が出資していたはずです。そのまま新日石に受け継がれているのかもしれません。また、石油公団も別の会社と組んでオイルサンド開発を進めていたはずです。

原油調達先の分散という観点からは、望ましいこと思います。また、人造原油を生産するキー技術の水素化分解や熱分解においては日本の技術も大いに活用できるのではないでしょうか。

ConocoPhillipsの合併

2005-12-15 | 石油
ConocoPhillipsとBurlington Resourcesが合併する。これにより、エクソンモービルを抜いて、北米一のガス生産会社となる。原油高に引きづられたガス価格高騰が、合併の一つの背景になっている。

コノコは売上高$8.1B、従業員36,000人のHoustonに本社を置く独立系石油会社です。2002年にはコノコとフィリップスが合併しています。
バーリントンは売上高$1.5B、従業員2,300人の同じくHoustonに本社を置くガス生産会社で、ガス生産量はほぼコノコと同じです。この二つが合併により全米第一位のガス資源量の会社になります。
新会社の石油とガスの資源比率は59:41ですから、依然としてコノコは石油会社ということになるのでしょう。
かつてDupontの100%子会社であったことを思うと、随分といろいろな経緯を経て今日にいたっているというか、アメリカのダイナミックな動きにびっくりする。アメリカでは大会社でも日本のIT企業のように簡単に合併が進む。この辺がアメリカンエコノミーのダイナミズムであろうか。

話は変わって:
夏のあのハリケーンの頃の勢いはないものの、依然として原油高である。そんな中、OPECは先の総会で現在の原油生産枠を維持する決定を行っている。通常ならば、春の需要減退期に向けて減産をしていくはずが、今年は依然として需要が強くしたがって原油価格の下落がないことから、増産の維持を決めた。
ここで減産して原油価格のこれ以上の高騰を望まないというか、高騰の後に来る暴落を望まない、ということのよう。
ちなみにサウジの石油収入は前年比1.5倍の1570億ドルだそうだ。この積み上がったお金は米国債券の購入に当てられるらしい。日本の貿易黒字と同じ状況である。

WTI先物市場:
コノコの本拠地であるテキサス地域で算出されるWTIの生産量は70万BD足らずで、世界の石油生産量の1%にも満たない。この原油が市場では一日あたり2.6億BBLも取引されるそうで、世界の生産量の3倍、WTIの生産量から言えば実に370倍である。先日、流通量の40倍の株式の売り注文を誤って出した証券会社があったが、WTI取引はそんなもんじゃない。
今の原油高はアメリカの精製設備能力の不足が招いている側面もあり、地上空前の利益を石油会社は上げているのだから、設備増強せよとの意見がある。しかし、石油会社は設備計画は20年以上の先を見越して行われるべきもので、すぐにはできないと、オイルショック後の需要低迷の教訓を忘れていない。




中国の石油会社の行方

2005-11-11 | 石油
中国では2010年に向けて再生可能エネルギーの割合を15%まで引き上げると報じられています。中国のエネルギー事情として、石油会社の状況を再度まとめておきます。

中国の国営石油3社のデータは以下のようです。
        順に埋蔵量、生産量、売上高、当期利益です。
エクソンモービル 220億bbl 422万BD 35.1兆円 2.9兆円
中国石油天然ガス 183億bbl 252万BD 5.44兆円 1.4兆円
中国石油化工   38億bbl 84万BD  8.26兆円 0.45兆円
中国海洋石油   22億bbl 38万BD  0.77兆円 0.23兆円
国際石油開発   15億bbl 33万BD  0.48兆円 0.08兆円

比較のために日本の国際石油開発のデータも入れています。先日、国際石油開発と帝国石油は生き残りのため、合併するという報道がなされました。このデータをみると確かに今のままでは、国際競争に生き残っていけないことがわかります。国際石油開発は中国海洋石油(CNOOC)とは同じ程度の規模ですが、CNOOCは中国国内にも多くの資源を抱えていることを考えると当期利益の開きが大きいことが理解できます。

中国石油化工(SINOPEC)は中国石油天然ガス(CNPC)よりも売り上げが大きいですが、利益は少なくなっています。これは両社の事業内容によりますが、それは両社の歴史に関係しています。
1980年代には中国は石油輸出国で、日本も勝利原油や大慶原油を輸入していました。中国の原油は硫黄分が少ない代わりに窒素分が高く、重質という特徴を持っています。重質ゆえ価格は安い、しかし低硫黄なので脱硫装置の負荷は少ないということで、日本の石油会社にとっては比較的経済性の高い原油でした。しかし今中国では4割を輸入に頼るようになっています。この間の国内石油需要増加に対応するため98年に国内石油会社の再編を行っています。

再編以前は資源開発・生産には陸上部を担当する中国石油開発公司(CNODC)、中国石油(CNPC)と海洋開発のCNOOCがあり、石油精製はSINOPECが一手に行っていました。生産と精製を分離していたのですが、98年の再編ではこれらを垂直統合し、北西部11省と重慶地区をCNPCが担当し、残りをSINOPECが担当しています。CNOOCは引き続き海洋石油開発を行っています。
SINOPECはもともと精製会社ですから、埋蔵量は少ないですが精製能力が大きくなっています。それで石油製品(ガソリンや軽油)の売り上げが大きくなり売上高も大きくなっています。これに対してCNPCは埋蔵量が多く精製能力が小さいですから原油での販売もあり、売上高は少なくなっています。しかし、石油精製よりも原油生産の方が利益率は大きいですから、CNPCのほうが利益が大きくなっているわけです。

最近の中国の石油会社に関係する話題を挙げれば
・ユノカルの買収失敗
・アフリカスーダンの開発に進出
・シンクルードの中央アジア開発部門を買収
などがあります。

旺盛な国内需要に支えられてと言うべきか、人民からの必要に迫られてというべきかわかりませんが、ひたすら資源を求めて中国の石油会社は世界に出て行くようです。

石油ピーク説と新技術による埋蔵量拡大

2005-11-10 | 石油
WTIが$70/bblをヒットしてから、にわかに石油ピーク説が台頭してきたように思います。朝日新聞にも「原油高」というコラムありました。記事の内容も含めて、まとめておきます。

現在の世界の原油需要は8,000万BDであり、このうちOPECからの供給量は2,800万BDとなっています。オイルショック以降、その影響力を低下させていたOPECは需要増加を背景としたこの原油高でその支配力を回復してきたとも言われていますが、増産余力がすでにあまりない、との観測もあり必ずしも影響力復活とはいえないようです。
しかしながら、BP統計によれば世界の確認埋蔵量1兆2000億bblのうち、75%が中東地区にあることを考えれば、まったく影響力がなくなるということは考えにくいものです。

付け加えてこの手の話になるとBPという一民間会社の統計や発表に頼らざるを得ないところにも、危うさがあると考えるべきである。

元Shellのキャンベル氏は2010年にも原油の生産量は頭打ちとなり、その間にも需要は伸び続けるだろうから、可採年数が減少していくことになると主張している。米国や北海ではすでにピーク時の1-3割生産量が減少していること、サウジのガワール油田(世界最大級の油田)でも自噴しなくなり、水圧法に切り替わっていることなどを、背景にこう主張している。

果たしてそうだろうか。一方、技術の進歩により原油生産量が増加したり、新たな油田の発見が今後も続くとの見解もある。油田開発には大規模な投資が必要だが、90年代の原油価格低迷期にそのような投資が行われなかったため、近年の油田発見量(確認埋蔵量の増加)が少ないだけの話である、との主張がある。事実出光興産や大阪ガスの北海油田の鉱区ではこの15年間で可採埋蔵量が1.5倍になっているとのこと。
サウジ石油相も今後開発投資をすればサウジの確認埋蔵量は1.7倍になると野見解をあらわしている。

今後の技術の進歩によるのだから、数値として確約できない部分もあろうが、地球上に存在する油田はすでに発見され尽くしており、後はそれを食いつぶすのみという考え方はおかしいでしょう。

確かに自噴しなくなった井戸もあろうが、別の採掘方法をとれば今まで以上に原油を生産することも可能である。現状は埋蔵量の3割程度を掘ったらそれでその井戸出の生産を終了しているという話である。残りの7割を取り出すにはお金がかかるのでそれ以上は掘らないということであろう。ということは、技術の進歩により採算が取れるようになれば残りの7割を採掘できることになる。

結局のところ、石油ピークがいつか来るのは間違いないが、それが2010年という確証はどこにもなく、もっと大分先と考えるのが妥当と思う。

中国海洋石油 VS Chevron

2005-06-24 | 石油
中国第3位の石油会社である中国海洋石油(CNOOC)がアメリカ第9位の石油会社であるUnocalを$18.5ビリオンで買収しようとしている。成立すれば中国企業としては一番大きなDealになる。中国企業のアメリカ企業買収といえば、先の連想によるIBMパソコン部門の買収があった。この場合は、収益率の下がったパソコン部門から撤退したいIBMとパソコン部門をのばしたい連想との利害は一致して、スムーズな買収となったが、中国海洋石油のケースはハードルが高いだろう。

Unocalといえば石油会社であるが、電極用コークスも生産しておりユニークな会社である。売上げは$8.3ビリオン、CNOOCの売上げは$6.7ビリオンなので、この買収が成功するとCNOOCとしては石油・ガス生産量、資源量とも2倍になることになる。また、Unocalの天然ガス資源の73%はアジア地区にあるので、CNOOCとしてはその点も魅力になっている。

中国とアメリカの石油会社の売上げを比較すると以下のようになる。
Exxon Mobil 280B
Chevron   150B
Unocal     8.3B
Sinopec    80.4B
PetroChina   47.0B
CNOOC      6.7B
新日石     40B
スーパーメジャーから見れば小さいが、日本の石油会社の規模と比較すると小さいわけではない。

このBidに対して、アメリカは安全保障上の理由から待ったをかけるようBushに進言している。
また、Chevronが$16.6ビリオンで買収の提案をしており、Chevronと中国海洋石油の一騎打ちとなっている。買収価格はCNOOCのほうが大きいが、アメリカの石油会社を中国に渡すな、というのがChevron側の主張です。
Chevronが買収すればその石油・ガスはマーケットに出てくるが、CNOOCが買収すれば石油・ガスはすべて中国に行くよ、とも警告している。
確かに、CNOOCは株式会社だが中国政府が所有しているので、そうだそう。
昨今の中国のエネルギー不足から考えれば、資源確保のためにアメリカの石油会社を買収しているのは間違いない。

この買収合戦の行方がどうなるかは、いまだ予想がつかない。
それにしても原油(WTI)がついに60ドル/BBLを超えました。こちらはユーロから抜いたお金のやりどころになっているようですが、石油需要が引き続き強いことを考えると原油高は収まりそうもありません。
石油需要を根本的に抑えることが出来ない以上、効率的利用技術、いわゆる省エネ技術を進めないといけません。