「チーム・マイナス6%」
いわゆる京都議定書において、日本は温暖化ガスの削減を約束しました。その削減量は1990年を基準にして6%です。このことから「チーム・マイナス6%」という表現になっていると思われます。それではCO2の発生を6%減らす(マイナス6%)ために、家庭等においてもこの冬は暖房に使う灯油やガスの使用を6%減らせばよいのでしょうか。家庭だけでなく、工場や病院や学校と行った場所でも総合して6%減らせばよいのでしょうか?「チーム・マイナス6%」という言い方からはこう想像できますが、実際はちょっと違うようです。
温暖化ガスとエネルギー起源CO2
まず、「温暖化ガス」と「CO2」は全く同じ意味ではありません。温暖化ガスとはCO2も含みますが、それ以外のフロンなどのガスも含みます。また、このフロンガスは温暖化効果がCO2よりも格段に大きいので、フロンガスを減らすことができると温暖化ガス削減量が大きくなります。
マイナス6%とは、温暖化ガスを6%減らすことであり、それはCO2排出量を6%減らすということではありません。
さらに、温暖化ガスの排出そのものを減らすことができない場合は、森林によるCO2吸収効果を加えたり、京都メカニズムという温暖化ガスの排出権を外国から買ってもよいのです。それらをあわせてマイナス6%を達成しようということです。
温暖化ガスの中ではやはりCO2が圧倒的に多いので、温暖化ガス=CO2=石油などの化石燃料の使用となり、石油使用を減らすこととの理解が一般的でしょう。
日本の1990年のエネルギー起源CO2排出量は10億4800万トンで温暖化ガス排出量12億3700万トンの85%になりますから、先の理解はほぼ妥当といえます。しかし、排出量の削減量が6%とそれほど大きくないことから、必ずしも石油の使用を6%減らすということに結びつきません。
政府の計画(H17.2.23見直し後)では、2010年の温暖化ガス排出量を対1990年比マイナス0.5%としています。これに、森林による吸収効果マイナス3.9%、京都メカニズムマイナス1.6%を加えて全部でマイナス6%です。つまり、温暖化ガス排出量の削減は0.5%に過ぎないのです。
さらにフロン等の温暖化ガスの削減を多くできそうなため、エネルギー起源CO2は削減ではなく1990年に比較して+0.6%、つまりちょっとは増えていいよ、という計画になっています。ここで、エネルギー起源CO2とは私たちが電気、灯油やガソリンを使ったとき発生するものです。今年の冬(京都議定書での取り決め、COP3とも言っていますがそれは2010年のこと)は灯油など燃料使用をマイナス6%にするどころか、+0.6%ちょっとは増えてもいいよとなります。
ところが、基準年は1990年です。(フロン等は95年が基準) 今から15年前を基準にしていますから現在の燃料等の使用量はどうなっているかも問題です。1990年といえばバブル最盛期で、その後は失われた10年というくらいですから、燃料等の使用も大して伸びていないと思いきや、2003年には1990年に比べて8%増えています。エネルギー弾性値はおよそ1といわれていましたが、経済はのびなくてもエネルギー使用は着実にのびていたのです。手元にある資料は2000年のものですが、エネルギー起源CO2排出量は11億6100万トンであり、1990年に比べて10.8%増加しています。1990年に比べて+0.6%にするということは、すなわち2000年に比べてマイナス10.2%にするということです。そういう意味では「チーム・マイナス10%」という言い方の方がふさわしいかもしれません。
実際の燃料使用削減量
このマイナス10%に相当するエネルギー起源CO2削減量は11億6100万トン引く10億5600万トンですから、1億500万トンの削減量となります。これを原油に換算すると4020万kLになります。(原油のCO2排出係数0.0684kg-CO2/MJ、発熱量を38.2MJ/Lとして計算しています。)2003年の全原油輸入量は2億4500万kLですから、4020万kLといえばそれの16.4%に相当します。CO2削減量を石油だけで達成しようとすると、今の使用量を16.4%という膨大な量を減らすことになります。実際は、日本の一次エネルギー供給量は原油換算で5億8800万kL、石油の割合は47%ですから、石油以外の化石燃料も減らすことで達成していくものです。
新エネルギー
「バイオマスニッポン」というプロジェクトに代表されるように、この石油使用量削減4020万kLを達成するためには、省エネルギーが基本となりますが、新エネルギーすなわちCO2を新たに発生しないエネルギーの活用も期待されています。
政府目標では2010年の新エネルギー導入量を原油換算で1910万kLにしています。これは先の4020万kL削減のかなりの部分に相当してきます。しかしこれは、2010年の目標値です。1999年現在ですでに新エネルギーは693万kL相当利用されていますから、2010年までの増加量は1220万kLに過ぎません。ですから、新エネルギーの導入だけでは2010年までのCO2排出量削減(原油換算4020万kL)の30%しか達成できません。やはり、省エネやエネルギーの効率的利用を推し進めることが一番必要です。
ちなみに計画上今後増やしていく予定の新エネルギーは以下の通りです。
廃棄物発電 440万kL
バイオマス熱利用 300万kL
廃棄物熱利用 170万kL
風力発電 130万kL
太陽光発電 110万kL
この中には今流行りの燃料電池も水素エネルギーという言葉も入ってきません。もちろん各論的には燃料電池技術開発への期待はありますが、それは高効率コジェネの一種というとらえ方、つまり省エネ機器の一種です。燃料電池の燃料は今後も天然ガスや石油です。
また、風力発電や太陽光発電の占める割合はわずかで、もっぱら廃棄物の有効利用が第一です。例えば風力発電は2010年までの原油換算削減量4020万kLに対して、3.2%に過ぎません。寄与度という点からはそれほど大きくないといえます。バイオマスといっても熱利用ですから、間伐材や廃材の薪ストーブ利用に期待しているということもあります。もちろん、木質バイオマスのガス化熱利用などという方法もありますが熱利用ですから、あんまり高等なことをしなくてもよい訳です。つまり今の段階では導入が容易な方法を当てにせざるを得ない言うことです。COP3という約束事は2010年が達成できたら終わりと言うわけではなく、その後も順次削減を続けていくと言うことのようですから、今からあんまり高度技術を当てにしてもいけないということでしょう。
「チーム・マイナス6%」とはいうものの、今の時点から燃料利用を10%減らそうという運動のようです。そしてもっとも効果があり確実なのは、省エネを進めるということのようで、クールビズに次いでウォームビズを流行らせようということです。
省エネの具体的方策や利用分野別CO2削減量についてはまた別の機会をみてまとめます。
いわゆる京都議定書において、日本は温暖化ガスの削減を約束しました。その削減量は1990年を基準にして6%です。このことから「チーム・マイナス6%」という表現になっていると思われます。それではCO2の発生を6%減らす(マイナス6%)ために、家庭等においてもこの冬は暖房に使う灯油やガスの使用を6%減らせばよいのでしょうか。家庭だけでなく、工場や病院や学校と行った場所でも総合して6%減らせばよいのでしょうか?「チーム・マイナス6%」という言い方からはこう想像できますが、実際はちょっと違うようです。
温暖化ガスとエネルギー起源CO2
まず、「温暖化ガス」と「CO2」は全く同じ意味ではありません。温暖化ガスとはCO2も含みますが、それ以外のフロンなどのガスも含みます。また、このフロンガスは温暖化効果がCO2よりも格段に大きいので、フロンガスを減らすことができると温暖化ガス削減量が大きくなります。
マイナス6%とは、温暖化ガスを6%減らすことであり、それはCO2排出量を6%減らすということではありません。
さらに、温暖化ガスの排出そのものを減らすことができない場合は、森林によるCO2吸収効果を加えたり、京都メカニズムという温暖化ガスの排出権を外国から買ってもよいのです。それらをあわせてマイナス6%を達成しようということです。
温暖化ガスの中ではやはりCO2が圧倒的に多いので、温暖化ガス=CO2=石油などの化石燃料の使用となり、石油使用を減らすこととの理解が一般的でしょう。
日本の1990年のエネルギー起源CO2排出量は10億4800万トンで温暖化ガス排出量12億3700万トンの85%になりますから、先の理解はほぼ妥当といえます。しかし、排出量の削減量が6%とそれほど大きくないことから、必ずしも石油の使用を6%減らすということに結びつきません。
政府の計画(H17.2.23見直し後)では、2010年の温暖化ガス排出量を対1990年比マイナス0.5%としています。これに、森林による吸収効果マイナス3.9%、京都メカニズムマイナス1.6%を加えて全部でマイナス6%です。つまり、温暖化ガス排出量の削減は0.5%に過ぎないのです。
さらにフロン等の温暖化ガスの削減を多くできそうなため、エネルギー起源CO2は削減ではなく1990年に比較して+0.6%、つまりちょっとは増えていいよ、という計画になっています。ここで、エネルギー起源CO2とは私たちが電気、灯油やガソリンを使ったとき発生するものです。今年の冬(京都議定書での取り決め、COP3とも言っていますがそれは2010年のこと)は灯油など燃料使用をマイナス6%にするどころか、+0.6%ちょっとは増えてもいいよとなります。
ところが、基準年は1990年です。(フロン等は95年が基準) 今から15年前を基準にしていますから現在の燃料等の使用量はどうなっているかも問題です。1990年といえばバブル最盛期で、その後は失われた10年というくらいですから、燃料等の使用も大して伸びていないと思いきや、2003年には1990年に比べて8%増えています。エネルギー弾性値はおよそ1といわれていましたが、経済はのびなくてもエネルギー使用は着実にのびていたのです。手元にある資料は2000年のものですが、エネルギー起源CO2排出量は11億6100万トンであり、1990年に比べて10.8%増加しています。1990年に比べて+0.6%にするということは、すなわち2000年に比べてマイナス10.2%にするということです。そういう意味では「チーム・マイナス10%」という言い方の方がふさわしいかもしれません。
実際の燃料使用削減量
このマイナス10%に相当するエネルギー起源CO2削減量は11億6100万トン引く10億5600万トンですから、1億500万トンの削減量となります。これを原油に換算すると4020万kLになります。(原油のCO2排出係数0.0684kg-CO2/MJ、発熱量を38.2MJ/Lとして計算しています。)2003年の全原油輸入量は2億4500万kLですから、4020万kLといえばそれの16.4%に相当します。CO2削減量を石油だけで達成しようとすると、今の使用量を16.4%という膨大な量を減らすことになります。実際は、日本の一次エネルギー供給量は原油換算で5億8800万kL、石油の割合は47%ですから、石油以外の化石燃料も減らすことで達成していくものです。
新エネルギー
「バイオマスニッポン」というプロジェクトに代表されるように、この石油使用量削減4020万kLを達成するためには、省エネルギーが基本となりますが、新エネルギーすなわちCO2を新たに発生しないエネルギーの活用も期待されています。
政府目標では2010年の新エネルギー導入量を原油換算で1910万kLにしています。これは先の4020万kL削減のかなりの部分に相当してきます。しかしこれは、2010年の目標値です。1999年現在ですでに新エネルギーは693万kL相当利用されていますから、2010年までの増加量は1220万kLに過ぎません。ですから、新エネルギーの導入だけでは2010年までのCO2排出量削減(原油換算4020万kL)の30%しか達成できません。やはり、省エネやエネルギーの効率的利用を推し進めることが一番必要です。
ちなみに計画上今後増やしていく予定の新エネルギーは以下の通りです。
廃棄物発電 440万kL
バイオマス熱利用 300万kL
廃棄物熱利用 170万kL
風力発電 130万kL
太陽光発電 110万kL
この中には今流行りの燃料電池も水素エネルギーという言葉も入ってきません。もちろん各論的には燃料電池技術開発への期待はありますが、それは高効率コジェネの一種というとらえ方、つまり省エネ機器の一種です。燃料電池の燃料は今後も天然ガスや石油です。
また、風力発電や太陽光発電の占める割合はわずかで、もっぱら廃棄物の有効利用が第一です。例えば風力発電は2010年までの原油換算削減量4020万kLに対して、3.2%に過ぎません。寄与度という点からはそれほど大きくないといえます。バイオマスといっても熱利用ですから、間伐材や廃材の薪ストーブ利用に期待しているということもあります。もちろん、木質バイオマスのガス化熱利用などという方法もありますが熱利用ですから、あんまり高等なことをしなくてもよい訳です。つまり今の段階では導入が容易な方法を当てにせざるを得ない言うことです。COP3という約束事は2010年が達成できたら終わりと言うわけではなく、その後も順次削減を続けていくと言うことのようですから、今からあんまり高度技術を当てにしてもいけないということでしょう。
「チーム・マイナス6%」とはいうものの、今の時点から燃料利用を10%減らそうという運動のようです。そしてもっとも効果があり確実なのは、省エネを進めるということのようで、クールビズに次いでウォームビズを流行らせようということです。
省エネの具体的方策や利用分野別CO2削減量についてはまた別の機会をみてまとめます。