化学系エンジニアの独り言

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温暖化対策としての自主行動計画

2007-02-21 | 環境
温暖化ガスを削減しなければならないことは、もはや誰の目にも明らかです。京都プロトコルに乗らない某国大統領も、温暖化ガス削減の政策を強く打ち出しています。石油メジャーですら「低炭素エネルギーへのシフト」といって、温暖化ガスという言葉を使ってはいませんが、その意味するところは同じエネルギー使用量でもCO2排出量を削減すること、を目指しています。

日経新聞によれば政府は学校や病院に対してCO2削減の数値目標を課すとのことです。日本では製造業やエネルギー業が自主行動計画に沿ってCO2排出削減を進めています。しかし、その他の部門ではちっとも進まないのが現状です。特にCO2排出量が増加してしまっている学校や病院などに数値目標を課そうという事のようです。

記事にはCO2排出量の現状と目標がまとめられているので、忘備のために記しておきます。単位はすべて百万トン(million ton per yaer)、CO2換算値です。
年度           1990年   2005年    目標
国全体          1,261   1,364(+8.2)  1,185(-13.1)
産業・エネルギー部門  550   540(-1.8)   504(-6.7)
運輸部門          217   257(+17.1)  250(-2.7)
業務部門          164   234(+42.7)  165(-29.5)
家庭部門          127   175(+37.8)  137(-21.7)
CO2小計         1,058   1,206(+14.0)  1,056(-12.4)
カッコ内の数値は増減率です。

CO2合計値と国全体の数値の差は、その他のメタン、代替フロンなどが含まれると新聞記事の但書きにあります。より正確に記せば、この差の中にはメタン、代替フロンなどのその他の温暖化ガス、さらに森林吸収分、今日とメカニズムによる海外からの排出権購入によって削減される分も含まれる、ということです。

話が細かくなるので以降はCO2排出量のみについて書きます。
チーム-6%という言葉が定着しつつあります。それではCO2排出量の目標値が1990年との比較で-6%かというとそうではありません。上の表で分かるようにCO2排出量で見ると1,056 million tonが1,056 million tonですからわずかに0.2%の削減です。これに先に述べた森林吸収や排出権の購入などをあわせて-6%にするということです。

むしろ足元2005年を基準として12.4%を削減しなければならない、といった方がピンとくるのではないでしょうか。 1990年から2005年にかけての増加量は148 million tonですから、家庭部門の排出量以上です。

言い方をかえれば、家庭の人口が2倍になったとおなじくらいに増加したことになります。日本の人口は減少しているのに、人口が倍増したくらいにCO2排出量が増えてしまったのはなぜでしょうか。

CO2排出量を減らすために、省エネ機器の導入を進めるといった具体的な方法を考える前に、なぜこんなに増加したのか、その原因を考えて見ることも必要でしょう。

産業・エネルギー部門はこの15年間で10 million ton減少しています。この減少量は満足できるものではありませんが、他の部門が大幅に増加していることを考え合わせると、自主行動計画の策定と実施が確実に行なわれているといえます。

その他の部門はいずれも増加していますが、業務部門の増加率が42.7%と最も大きくなっています。業務部門でもスーパーや百貨店は既に自主行動計画に参画しています。記事によれば学校(研究機関)や病院での排出量が倍増しているといいます。そこで増加量の多い学校と病院を対象に数値目標を設定しようということです。

ところで病院と学校は同じ理由によってCO2排出量が倍増しているのでしょうか。高齢化により医療施設にかかる人が増えた、医療の高度化により多くに機器が利用されるようになったなどが思いつきます。これらが病院におけるCO2増加の原因でしょう。

一方、学校はどうでしょうか。少子化ですから生徒の数はむしろ減っています。全国の教室が冷暖房完備になってきた、という話も聞きません。OA教室やPC教室など、電気を使う教室が増えてきているのでしょうか。学校・研究機関でのCO2増加の原因は良く分かりませんね。