前のめりの北 「誠意示せば何人か帰す」
■「万景峰」数年ぶり出港
政府の情報機関が今年5月、北朝鮮のある動きをキャッチした。かつて北朝鮮と日本の間の物流の動脈だった貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」が数年ぶりに、母港である朝鮮半島東海岸の元山港を出港したのだ。
万景峰92は平成18年7月、当時の小泉純一郎政権が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」発射への制裁として日本への入港禁止措置を取って以来、元山港に“塩漬け”となっていた。 「北は拉致被害者らの再調査で、船に関する制裁解除が見込めると踏んでいたのだろう。日朝協議に前のめりだった」 日朝関係筋はこう振り返る。北朝鮮工作員の連絡などにも使われた万景峰92の入港禁止は日本が独自に科す経済制裁の象徴で、北朝鮮は3月に中国・北京で行われた政府間協議でも入港を認めるよう要求した。 5月28日に終わった日朝政府間協議で、日本側は万景峰92の日本国内港への入港禁止措置を継続する方針を北朝鮮側に伝え、北のもくろみは外れた。だが、万景峰92の出港は日朝協議に対する北朝鮮の期待感の強さがうかがえるエピソードだ。