見透かした中国の挑発
前防衛相、拓殖大学特任教授・森本敏
中国による領土奪取は、漁船→公船→軍艦の順に投入して、実効支配を段階的に積み上げていく手口が多く、日本にとって、「グレーゾーン事態」への対応を整えることは喫緊の課題である。また、日米とオーストラリアで対中抑止力を強め、ASEANの対応能力と機能を強化する必要もある。
日本は、南シナ海での領有権紛争が国際法に基づき平和的に解決されることに期待し、フィリピンが、中国と争うスカボロー礁の領有権問題を、国際海洋法裁判所に提訴して解決しようとしていることを強く支持している。ベトナムが同様に訴えることがあれば、やはり支持していくべきである。
それでも、現状では中国がパラセルから手を引くことはあり得ない。ただ、東シナ海でも同様の事態が起こる可能性は高いから、今回の行動がどれほどの損失になるか中国に分からせる必要がある。日本は今後とも、実効性あるCOCを定めるようASEANに働きかけ、そのためにも日米同盟を強化していかなければならない。