パリ東部のユダヤ人向けスーパーマーケットで9日起こった立てこもり事件で、人質となった市民の証言から、容疑者の残虐な犯行と約4時間に及んだ店内の緊迫した様子が明らかになった。
9日午後1時ごろ、パリ東部ポルトドバンセンヌのスーパーは、買い物客でにぎわっていた
突然、爆発音が響いた。買い物客の1人、ネサンさん(37)は仏紙に、「銃声を聞いて、すぐに冷蔵庫となっている地下室に走った」と振り返った。
店に押し入ったのは、パリ南郊で8日、女性警官を射殺したとみられるアメディ・クリバリ容疑者だった。地下では、若いユダヤ人のヨアン・コーエンさんら約10人が隠れていたが、約5分後、地上の人質の1人が下りてきて、クリバリ容疑者の伝言を伝えた。
「上がってこなければ、全員あの世に送る」
ネサンさんらがしぶしぶ従って、階段を上がると、すぐ近くの段ボール箱の上にカラシニコフ自動小銃が無造作に置かれていた。
コーエンさんが銃を奪おうとした時、銃声が響いた。容疑者に殺害された。
「よく見ろ。抵抗しようとしたらどうなるかだ」
クリバリ容疑者がすごんだ。少し離れた床では、別の男性の苦しそうな声が聞こえた。銃で撃たれ、負傷したようだ。
「彼を楽にしてやりたいやつはいないのか」
クリバリ容疑者の冷酷な声が響いた。人質全員が首を横に振った。しばらくすると男性の息が途絶えた。
クリバリ容疑者は店の商品の七面鳥のサンドイッチをほおばり、冗舌になっていた
「きのう警察官を殺したのはオレだ。『イスラム国(イスラム過激派組織)』の名の下に行動している」
こうした緊迫が約4時間に及んだ時、クリバリ容疑者が店の入り口の方に歩いて行った。その時、特殊部隊が一斉に射撃した。容疑者は射殺された。