昨年、奈良市を訪れた外国人観光客は前年比61・64%増の157万6千人。東京都(約1310万人)や京都市(661万人)にはさすがに及ばないが、堂々の数字といえる。
奈良にはどんな思いでやってくるのか。11月下旬から12月初旬にかけ、東大寺や奈良公園を散策している外国人観光客に声をかけて回った。最も気になる「奈良のお目当て」は、実に39組(73・5%)が「シカ」または「奈良公園」と回答。「大仏」「寺社仏閣」を挙げた観光客も33組(62・2%)に上った。「紅葉」「庭園」などの少数意見もあったが、ほとんどがシカや東大寺の大仏を目的に訪れていることが分かった
近畿運輸局と関西経済連合会などの分析によると、昨年4月から試験販売した訪日外国人向けIC乗車券「関西ワンパス」(KANSAI ONE PASS)利用者の関西2府4県における滞在時間は、大阪府の62・5時間、京都府の25・5時間に対し、奈良県は最短の4・7時間にとどまった。大阪や京都に宿泊し、奈良には日帰りで足を伸ばす行程が定番化している実態が改めて浮き彫りになった
奈良県内のホテル客室数は全国最下位。この事実が少なからず足を引っ張っているのは確かだろうが、奈良の観光産業の先行きは決して暗くはない。奈良市内では今年、JR奈良駅周辺に3棟のホテルが相次いで新設された。東京五輪・パラリンピックが開催される平成32年までには、さらに6つの宿泊施設が相次いで新規開業する見通しだ