幸運の女神様に 最高の贈り物をしてもらった橋青年は
今まで乗っていた125ccのベンリーと別れを告げ、250ccのドリームを愛用する生活が始まりました
しかしながら その当時は、機屋の旦那様クラスの人たちが 自家用車に乗っているのが精々の世の中。
桐生で1~2を争う建築会社でさえ トラック一台を所有する程度だった時代。
勿論、若い衆の中で 250ccのバイクに乗っている人など 居ないに等しく
知り合いの中では青年だけだったので、行く先々で
“どうしてこんな高級なバイクを持っているんだ”
と聞かれ、そのたびに 経緯を答える日々でした。
それでも “又一発当ててやる” という野心は 不思議なことに一度も芽生えず
いつもの生活を送る青年なのでありました。
さて。
機織産業が 全盛期を迎えていた当時の桐生には、沢山の女性が奉公やらで働きに来ておりました。
そしてそんな中、機屋の工場内の塗り替えを依頼され 現場に向かった青年でしたが
“おはようございます”
と機屋の入り口を開けた途端 それはそれは大勢の女性陣の視線が 一気に青年へ向けられたのです
あまりの多くの瞳に見つめられた青年は
汚い作業着を着ていることが恥ずかしくなってしまい・・・
翌日からは塗装屋らしからぬ 「Yシャツにネクタイ」を締め その上に綺麗めの上着をはおり
仕事に出て行くようになったのでありました~
そう。
青年は 色男 だったのであります
沢山の女性陣が働く中に 男性は青年ただ一人。しかも色男とくりゃぁ
そりゃ~もう モテモテだったそうで
青年にとって この時期が 間違いなく薔薇色の人生だったに違いありません
つづく