たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

砂電車の冒険 (12)

2008年12月16日 15時03分24秒 | 砂電車の冒険
砂 電 車 の 冒 険  ( 2-1)

砂千子さんがバケツに水を汲み砂浜にふと目をやると、甘栗くらいの甲羅をした石ガニが小さな爪で砂粒を口に運んでいます。
砂千子さんは腰をかがめ両手をボールのように丸めると、“そーと”石ガニに近づき、素早くすくい上げバケツの中に入れました。
「奈美、渚、カニさんがいたわよ!」
砂千子さんは砂浜に置いたバケツの中を指さしました。
「ほら!こんなに小さなカニさん、かわいいでしょう?」
石ガニはバケツの中で“ふわふわ”浮かんでいます。
「かわいい~、奈美、ちょっとさわってみる!」
奈美ちゃんはバケツの中に手を入れ、カニさんをすくい上げました。
「カニさんかわいいでしょう、渚もさわってみる?」
奈美ちゃんが渚君の手のひらにカニさんをのせようとすると
「イヤイヤ、キライ、あっちにやって」
渚君は顔をそむけてしまいました。
「奈美、ちょっとさわらせて!」
砂にまみれ夢中で電車をつくっていた海人君は、ミニシャベルを砂の上におくと石ガニを手のひらにのせ“ジー”と眺めています。
「ママ、こんなに小さなカニさん、かわいそう、海に帰してやろうよ!」
海人君はカニさんを奈美ちゃんの手のひらに返しました。
「そぅ~ね~。かわいそうだから海に帰してあげようね!」
砂千子さんは渚君の手を握ると、奈美ちゃんと波打ち際に向かって行きました。
「カニさん、カニさん、元気でね!」
奈美ちゃんが波打ち際に手を置き“そ~と”両手をひらくとカニさんは“ちょこちょこ”と海に向かって帰って行きました。
その時、大きな波が鎌首をもたげ奈美ちゃんに襲いかかってきました。
「奈美!早く、早く上がって」
砂千子さんは大声で叫びました。
異様の叫び声に驚いた奈美ちゃんは砂千子さんを振り返ろうとして、砂に足を取られ仰向けに転んでしまいました。
「奈美、奈美~」
砂千子さんは叫びますが、大波は奈美ちゃんを包み込むように沖に引きずり込んでいきます。
とっさに渚君の手を振り払い、砂千子さんが海に飛び込もうとすると、渚君も後を追ってきます。
「渚、来てはダメ!」
砂千子さんはとっさに渚君を砂浜に押し倒しました。
コメント
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