妙心寺桂春院の本堂方丈の南庭は「真如の庭(しんにょのにわ)」と呼ばれます。境内にある四つの庭園のうちで唯一、庭園内を散策出来ます。拝観順路のラストがこの「真如の庭」ですが、上図のように方丈南縁からは刈込みと生け垣の間に生まれた苔庭が見渡せます。
唐門の玄関廊より下に降りる際にも、「真如の庭」を横から見ることが出来ます。本堂方丈との段差をなだらかな刈り込みで覆って、苔庭へのを繋がりを演出していることがわかります。
同地点から本堂方丈を見上げた図です。「真如の庭」との高低差がかなりあることが分かります。もともと境内地が妙心寺域の北東の隅にあたって台地べりのような地形であり、東には川が流れています。一帯が傾斜地であり、その一番高い位置に本堂以下の建築群が置かれ、低地には庭園や墓地がおかれているわけです。
散策の園路は生け垣の南側にあり、ずっと東まで行くと地蔵石像の前に至ります。そこまてで引き返して本堂へ戻る、という順路です。
園路を一巡して玄関廊の下段に戻ってきました。再び「真如の庭」を西から見て、左手に本堂を見上げました。
玄関廊の袖口の壁にも連子付きの花頭窓が配されて、傍らの手水石とともに静寂と寂薄の情感を半々に醸し出していました。その雰囲気が気に入ったのか、この範囲をアングルを変えつつ何度も撮影していたU氏でした。
大徳寺の豊かな紅葉も良かったけれど、こちら妙心寺の桂春院の点々の紅葉の落ち着いた雰囲気も良かったです。秋景色を讃えるなら、個人的にはこちらの方がいいと思います。
庫裏まで戻って退出する際に、なんとなく見上げた庫裏内部の高い天井。密閉されているように見えますが、右側に煙出しがあります。現在では庫裏の台所で煮炊きをしませんから、屋根の煙出しの扉も閉じられています。
表門を出てから、横に上図の境内俯瞰図があるのに気付きました。U氏が「非公開のところは茶室と東の墓地、ってわけだな」と確認していました。
なかなか良い禅寺塔頭だったな、ああ面白かったな、と言い合いつつ、バス停に戻りました。西に妙心寺北門の建物が望まれました。
バスを待ちながら時計を見てしばらく思案していたU氏でしたが、思いついたように「これから京都駅へ行って新幹線で帰るわ」と言いました。今回の巡礼に満足したので、まだ時間があるけれど帰宅しよう、と決めたようです。
それでバスで京都駅まで行って、八条口側の「パスタモーレ」で休憩を兼ねて軽食を楽しみ、新幹線のホームまでU氏を見送りに行きました。
「おい星野、来月(2021年12月)ぐらいには大洗へ行くんだろ?」
「そうなるかな、と思う。水戸城の復元櫓も見物したいしな」
「時間が合えば同道致そう」
「承知」
「で、こっちは次は春4月に行くからな」
「ああ、大徳寺の春の特別拝観やな・・・」
「それと、徳川家ゆかりの知恩院にも行きたいのだがな」
「そうか、なら両方回ろうかね、水戸中納言どの」
「それで決まりだ。宜しく頼む」
「承知した」
握手を交わした後にU氏が乗り込んだのは、17時16分発の東京行きのぞみ号でした。 (了)