母の形見である三味線の、防虫剤と除湿剤の入れ替えをした。
定期的に入れ替えてるのだが、今日は久しぶりにトランク開けたついでに三味線を出して組み立ててみた。
本当は母恋しくなるので、トランクから出すことは無かったのだが、たまには出してみらんと母に悪いかなと。
目の見えない母は、手探りで上手に組み立てて糸を張っていた。
そしてしまうときは、バチや調音笛、色んな物を綺麗にトランクに収めていた。
目の見える私でも、あの小さなトランクに収めるのは難しいのに、凄いもんだった。
少しは母に習ってたので糸を張って弾いてみたが、いい音がする。
この、拍子木も大事な形見。キガシラとも呼んでいた。
合わせると、よく通る甲高く懐かしい音だ。
両親は各地へ旅に出て、会場を探して芸を披露することが生活の糧で、ふたりとも本職は浪曲師。
父は芝居もするが、母は主に三味線と、漫才と漫談もやっていた。
拍子木を見ると、舞台でカチカチと鳴らしながら、「トザーイ、トーザーーイ」と言ってたのを思い出す。
「東西」のことで、あちらこちらの皆様方注目~って感じの呼び込みね。
今はどうだか知らないが、昔の役者やヤクザやテキ屋は隠語を使っていた。
子供の頃、私が変なことを言うと、母がすぐに、「マメちゃん、トウザイっ!」と言っていた。
言うな、それは言っちゃダメ!って隠語です。
芸人独特のちょっとクセのある大人の中で育った私は、ちっちゃい頃から口達者で子供らしくなかったそうだ。
つまり、可愛げがない。・・・今も同じ。
たまたま、巡業から帰ってきて家にいた時に、押し売りが来たので母が断ったら、その押し売りが隠語で喋ったらしい。
すかさず母が隠語で返したら、押し売りはビックリたまげて帰ったそうだ。
普通の人は使わん言葉だからね。
つまり、「こん女はメクラのくせに・・・」と相手が隠語で言ったので、母は「メクラで何も分からん女で悪かったね」と隠語で返したのだそう。
隠語のことを、母は別な言葉で言ってたが、何だったかなぁ、今は思い出せない。
三味線の防虫から話が飛んでるが、繋がってるので次々と思い出されてくる。
これ以上思い出すと、ひとつの物語が出来そう。(笑)