現在、南の空には木星・火星・土星と3惑星がそろい踏みですが、関東地方も梅雨入りしてしまいました。火星は接近中だけに、この時期にかかってしまうのは残念ですが梅雨明けまで我慢するしかなさそうです。
さて、先週ですが、都内の高校に用事があり出かけていました。そこには設置されてから50年以上になる五藤光学研究所15㎝屈折赤道儀が設置されています。この日は天候に恵まれていたことと、高校の天文クラブが一晩合宿するということもあり、夜まで残ってこの望遠鏡で実際に惑星を見る機会に恵まれました。
何分古い機材なので、対物レンズはコーティングもなく、口径比1:15のアクロマートレンズと今となっては平凡なスペックです。最近は大口径屈折もアポクロマートレンズが普及しているので、性能を比べてしまうのもいささか無理があるでしょう。
最初は薄暮中ですが木星を見ることにしました。アイピースはLV12mm(187倍)だけ使っています。シーイングも良かったこともありましたが、とても良く見えていたのです。アクロマートなので当然色収差が・・・と思っていたのですが、若干は認められるものの、最近は長焦点と言われるF8クラスのアクロマートレンズようにシャープでも、青~紫色が拡散することでカラーバランスが変わってしまうということもありません。
日が暮れるにつれ、ちょうど大赤斑が出てきただけでなく、衛星ガニメデが表面を通過するようになりました。大赤斑のオレンジ色っぽい色調や縞模様のディテールも口径相応に確認でき、またガニメデも影とは違ってグレーぽい色味で確認できました。
それから高度は低いものの、火星に向けてみました。木星に比べシーイングの影響がありましたが、それでも正面に黒々と大シルチス、ヘラスの白雲、北極冠と火星らしい光景が見えています。大気分散で周囲に赤・青のにじみが出るものの、色収差は木星同様目立ちません。
今回のクラブ合宿は年に何回か実施されるものの、天候になかなか恵まれず15㎝屈折赤道儀でじっくり見るチャンスはなかったとのことで、生徒・先生に大好評でした。特に木星の大赤斑が自転によって位置が変わっていく様子をちょうど観測できたというのは学校内の天文活動ではなかなかないと思います。
筆者としても、意外に思うかも知れませんが、15㎝屈折赤道儀で夜に天体をじっくり見るという機会はなかなかなかったので、タイトル通り「温故知新」の経験となりました。
また、生徒・先生のみなさんにもこの望遠鏡が古いながらもしっかり天体を見ることができるということを知っていただけたのではないでしょうか。これを機にこの望遠鏡を末永く活用していただくことを願ってやみません。(kon)
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