放射線の一種「陽子線」を照射するがん治療施設が天理市蔵之庄町の高井病院(376床)にできた。がん細胞以外の周辺組織に与える影響を最小限に抑えることができる。医用原子力技術研究振興財団(東京)によると、2月現在で県内にほかに陽子線の治療施設はないという。

 施設は「陽子線治療センター」。地上2階、地下2階で、延べ床面積は1900平方メートル。地下2階に陽子線発生装置を設置し、その上の階に治療装置「回転ガントリ照射装置」などがある。

 病院を運営する社会医療法人高清会(高井重郎理事長)が50億~60億円を投じ、構想から10年がかりで完成させた。振興財団によると、国内の陽子線治療施設は2月現在で13カ所、近畿では兵庫県内の2カ所。このほか、大阪で1カ所治療を始めており、京都で1カ所施設が完成している。

 ログイン前の続きセンターには、県立医科大(橿原市)の「陽子線がん治療研究センター」と「連携大学院」を設置。県立医科大の研究者らが病院側と陽子線治療の共同研究を進め、専門医の養成にもあたる。

 4日に完工式があり、地元区長ら約150人がセンター内を見学。担当者から説明を受けた。病院によると、陽子線で治療できるがんは脳腫瘍(しゅよう)や食道がん肝臓がんなど。4月から外来診療を始め、10月からの治療開始を予定している