2024年度受験対策<一般常識>の傾向と対策(補足資料)(その2)
<一般常識>の過去問、観光白書(2023年版、2024年版)を正しく読み解くためには、日本の観光業の問題点(低い利益率、低い生産性、低い観光DX化、長い労働時間、低い賃金、少ない休日、高い離職率など)をよく理解しておく必要があり、これを前提に、観光業界の基本知識を確認しておくことが大切です。
<一般常識>の傾向と対策の次の動画(YouTube)の説明は、この(補足資料)(その2)を使用しますので、<一般常識>の受験者はよく予習をしておいてください。
●2024年度受験対策<一般常識>の傾向と対策(補足資料)(その2)(キレイに印刷できます!)
<内容>
【1】日本の観光業の問題点
【2】観光業界の基本知識
【3】「観光GDP」とは
【4】2023年度<一般常識>大問2の選択肢①②③④の出典
【1】日本の観光業の問題点
2023年度に、何故、(問2)「日本版持続可能な観光ガイドライン」(3点)、(問3)「2021年の日本人国内旅行の状況」(2点)、(問4)「日本の宿泊費」(2点)、(問5)「観光関連企業の売上高及び利益状況の説明」(3点)、(問6)「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりモデル観光地」(3点)、(問7)「労働生産性」(3点)、(問8)「高度外国人材を増やす新たな受入策」(3点)が、出題されたのか? (合計19点)
それは、2023年版「観光白書」で提起された「観光産業の稼ぐ力の強化」「観光DXの推進」などがベースにあるからであり、その前提として、日本の観光業の問題点(低い利益率、低い生産性、低い観光DX化、長い労働時間、低い賃金、少ない休日、高い離職率など)があります。
2024年版「観光白書」では、引き続き、「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客」「持続可能な稼げる産業」「観光GDP」などに着目しているので、受験者は、上記のような問題意識を持って、「観光業界の基本知識」およびキーワードの一つとなる「観光GDP」をよく理解、認識して勉強することが大切です。
【2】観光業界の基本知識
●日本全体の実質GDP:559.2兆円(2023年)
●日本全体の名目GDP:591.4兆円(2023年)
●日本の旅行・観光分野のGDP(世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)資料より)
43.8兆円(2019年)
41.3兆円(2023年)(日本のGDP全体の6.8%)
●2023年版「観光白書」(34ページ)
雇用者所得、企業の利潤や投資など経済循環の源泉となる観光GDPをみると、日本は11.2兆円(2019年)で新型コロナ感染拡大前まで着実に増加してきたものの、経済全体に占める比率は2%で、先進7カ国(G7)平均の4%と大きな差がある。観光GDPとは、国内で生産した観光サービスのうち付加価値額である。
●代理業者を含む旅行業者数:1万2090社(2023年4月)
●旅行会社の売上高営業利益率は、0.5%程度で、以前から「20万円売り上げて、やっと1,000円稼げる」とよく言われてきた。
●旅館・ホテル数:50,321(2022年)
●宿泊業・飲食サービス業の雇用者数:349万人(2023年平均)
全産業の雇用者数(6,076万人)の5.7%を占める。
●宿泊業の賃金:370万円(2023年)、全産業(507万円)の73.0%。
●業界別の新卒3年以内の離職率
第1位 宿泊業、飲食サービス業:49.7%
第2位 生活関連サービス業、娯楽業:47.4%
第3位 教育、学習支援業:45.5%
第4位 医療、福祉:38.6%
第5位 小売業:36.1%
第6位 不動産業、物品賃貸業:36.1%
第7位 サービス業(他に分類されないもの):35.6%
第8位 学術研究、専門・技術サービス業:32.5%
第9位 建設業:28.6%
第10位 卸売業:28.0%
第11位 情報通信業:27.8%
第12位 複合サービス事業:26.9%
第13位 運輸業、郵便業:25.5%
第14位 金融、保険業:25.1%
第15位 鉱業、採石業、砂利採取業:20.1%
第16位 製造業:18.5%
第17位 電気、ガス、熱供給、水道業:10.6%
●宿泊業、飲食サービス業の離職率が高い理由
(1)人と直接接する仕事なのでストレスが高い。
(例)
役所では、著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務などに特殊勤務手当を支給するが、役所の市民課では、よく職員に「不快手当」を支給している。市民に直接行政サービス(住民票の交付など)することは、クレームを受けることなどもありストレスが高く、役所の職員にとっては不愉快なことなので、「不快手当」を受給するというわけです。
(2)労働時間が長い。
(3)給料が安い。
(4)休日が少ない。
【3】「観光GDP」とは
●日本の「観光GDP」…実は、欧米水準の半分程度 求められる「より稼げる産業」への変革
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2023年の訪日外国人旅行者数は2506万人となり、年間累計としては2019年の3188万人の8割程度まで回復しました。また、2023年12月だけでみると273万人であり、これは2019年同月比で108%となり、最近のインバウンド回復基調を象徴する数字となっています。
このように観光需要の回復が鮮明となる中、注目されているキーワードに「観光GDP」があります。観光GDPというのは、一国のGDP(国内総生産)の中で観光需要によって生み出された付加価値の総額を示しています。観光や旅行が生み出す経済活動の規模を示す指標ですから、経済の観点で観光をみる時、最も重要な指標といってもいいでしょう。
観光GDPは推計方法が複雑で専門性が高いため、頻繁に公表されるものではなく、今まであまりクローズアップされてきませんでした。しかし、2023(令和5)年版観光白書で久しぶりに観光GDPが大きく取り上げられ、再び注目されるようになりました。観光データは正確なデータが整備されるまで時間がかかるため、ここでは詳細なデータが得られるコロナ禍前の2019年を例に観光GDPの仕組みを説明します。
2023(令和5)年版観光白書で観光GDPのことが取り上げられたのは、観光需要の復活が期待される中、日本の観光GDPの水準が欧米諸国よりも低いということです。日本の観光GDP(2019年)は11.2兆円であり、日本全体のGDP(2019年)558兆円の2.0%となります。これはG7平均(日本を除く)の4.0%に比べると半分の水準しかありません。日本の観光分野の付加価値を高め、観光産業を「稼げる産業」へ変革することが求められています。
一方、日本の観光GDPは対GDP比率では低いように見えますが、11.2兆円という規模は世界第4位です(フランスが未公表なので、フランスを入れると第5位かもしれません)。日本は世界の中でGDPの規模が大きく、また産業が多岐にわたるため、観光経済の成長は明らかなものの、相対的な比率ではまだ低いというところがあります。日本の主力産業である自動車産業を含む輸送用機械の総生産が約14兆円ということを考えると、観光GDPの規模は決して小さいものではありません。
●観光GDPの詳細を知ることで…観光産業の裾野の広さが明らかに
さて、観光GDPの推計が複雑なのは、観光産業が多くの産業にまたがる「裾野の広い産業」であるためです。観光産業のもつ裾野の広さという特性から、観光や旅行の経済活動は一国の経済活動を体系的にとらえたGDP統計(国民経済計算)の枠組みには長年入っていませんでした。
日本では2009年より観光庁から観光GDPの詳細が公表されるようになっています。まず、特に観光と関わりの深い産業として①宿泊業、②飲食業、③鉄道旅客輸送、④道路旅客輸送、⑤水運、⑥航空輸送、⑦その他の運輸業(旅行業が含まれる)、⑧スポーツ・娯楽業の8産業が観光産業に分類されています。
観光GDPのデータが独特なのは、8つの観光産業においても観光・旅行によって生み出される付加価値とそれ以外の経済活動によって生み出される付加価値に分かれることです。例えば、宿泊業は観光産業の中で中心的なものですが、産業全体としての付加価値は3.0兆円あります。その中で観光・旅行が生み出す付加価値は2.4兆円で、その割合は77.8%となっています。観光産業であるのに観光・旅行が生み出す付加価値は産業全体の77.8%にとどまるというのはどういうことでしょうか。
産業としての宿泊業はホテル、旅館、その他の宿泊所からなりますが、ホテルの場合、ランチや喫茶などは観光客ではない周辺住民による利用が多いものです。また、ホテルにとって結婚式や企業の会議・研修も重要なニーズです。そのため、観光客・旅行者によって生み出された付加価値は8割程度となるわけです。同様に飲食業の場合、観光客がたくさん集まる店もありますが、観光客はあまり来ず、周辺住民が来客のほとんどという店も多いでしょう。飲食業において観光客・旅行者の消費によって生み出された付加価値は産業全体の15.1%(飲食業全体では10.6兆円)になります。
また、観光産業以外の「その他の産業」も2.2兆円の付加価値を生み出しています。日本の観光統計で観光産業に分類されているのは8つの産業ですが、観光や旅行をする時は実に多くの産業がかかわっています。例えば、旅行前にガイドブックを買うことがありますが、これは産業としては出版業にあたります。このように観光GDPの詳細を知ることで改めて、観光産業は裾野の広い産業であることに気づかされます。インバウンドブームが生じたことで、日本では観光・旅行の重要性が広く知られるようになりました。最近、国内旅行では教育旅行やマイクロツーリズムなど、日常の延長としての観光・旅行体験が注目されるようになっています。私たちが今まで思っていた以上に私たちの経済や産業の観光に関わりが深いといえるでしょう。
【4】2023年度<一般常識>大問2の選択肢①②③④の出典
●大問2の選択肢①の出典
「持続可能な観光ガイドライン」(6ページ20行)に、大問2の選択肢①の下記が、そのまま掲載されています!
「地域での多面的な現状把握を可能にし、継続的 なモニタリングと証拠資料(エビデンス)に基づいた観光政策や計画の策定、それらに基づく持続可能な観光地 マネジメントの促進を目的としている。」
「持続可能な観光ガイドライン」(6ページ20行)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810000952.pdf
●大問2の選択肢④の出典
観光庁の資料「観光地域づくり法人(DMO)とは」の23行目には、大問2の選択肢④の下記が、そのまま掲載されています!
「観光地域づくり法人の間の適切な連携を促すことで各法人間の役割分担がされた効率的な観光地域づくり」
「観光地域づくり法人(DMO)とは」
●大問2の選択肢➂の出典
観光庁の資料「観光地域づくり法人(DMO)とは」の21~22行目に、下記の記載があります。
「地域の取組目標となる水準の提示による観光地域づくり法人の形成・確立の促進、および関係省庁が観光地域づくり法人の形成・確立を目指す地域の情報を共有することによる支援の重点化等を目的としている」
「観光地域づくり法人(DMO)とは」
以上