「まいったな・・・ライバルは啓太か」
総一郎は少し考え込んでいたが、ほどなく笑顔に戻り
「とりあえず、今は食事を楽しもう またあとでゆっくり考えるよ」
自分に言い聞かすようにそう言うと
さぁ 絵里子ちゃん食べたいものをどんどん言って
君の気持ちはわかったから
とにかく今は、美味しいものを食べよう
と言いながらメニューを広げた
その日、総一郎は啓太の話を
持ち出すこともなく送り届けてくれた
ただ “又、会ってくれるよね?”
とだけ確認するように告げて
コクリと頷いた私に 安心した様子で帰って行った。
私自信 啓太との関係を
この先どうするのか?
少し気になっていただけに
あまりにもあっさり諦めた様子の総一郎に
なぜか少しだけ落胆していた
その日の事は心の中に留めたまま
私はそれからも啓太との時間を幾度となく持っていた
啓太に対する気持は
愛だとか恋というものではないような気がしていた
なんていうか
子犬に愛情を感じるような気持と似ているかもしれない
ほおってはおけない
いつも構ってあげなくては
とでもいうような
こんな風に思っていると伝えれば
きっと啓太は頬を膨らませて言うだろう
“いつまでも子供扱いするなよ”
って
どう考えても子供なんだけどな
ほら、今も私の膝枕で
気持ちよさそうにうたたねしている
“私はあなたのお母さんじゃないねんよ”
何度言っただろう
言葉ではそんな風に意地悪なことを言っても
肌を触れ合うと安心する
求められて断った事は今までに一度もない
桜の咲く頃もすぎ、
毎日憂鬱な雨の季節に入った頃
ひさしぶりに総一郎の車を校門の前で見つけた
私はとても嬉しくなり雨の中
走って車へと向かい 窓越しに声をかけると
“やぁ 元気だったかい?
毎日雨続きで気分が滅入るね
よかったらお茶でも飲みに行かないかい?”
そういって笑顔で、迎え入れてくれた。