「小じわⅡ」
自分が今、使っている化粧品は十何万のクリームだとか、
週に一度はエステに通っているとか自慢しまくりの金満家。
「あなた、少しは贅沢しなさいよ。亭主たちだって適当に遊んでるんだから。
そうだ、今度はあのクリームを小分けして持ってきてあげる。
使ってない口紅もあるからそれもあげる」
金満家は、あげるを連発した。
「悪いわねぇ、悪いわねぇ」そう言いながら薄幸婦人は背を丸めた。
小一時間のうち、彼女達の話題は
「しわ取りクリーム」「エステティック」「宝石」だけであった。
「自分に投資しなさいよ」としきりに勧めていた。
確かに金満家は薄幸婦人に比べて小じわは少なかった。
アメリカだけにしか売っていないクリームのせいか、
十何万のクリームのせいか、
エステのせいか、
知らないけれど、私にはただ単に顔面の肉付きがいいから、
小じわがつっぱっているようにしか見えなかった。
彼女達はサンドイッチをくちゃくちゃと音をたてて食べ、
コーヒーをずるずるとすすった。
「今日はとてもうれしいわ」・・・二人とも満足そうだった。
私は彼女達を観察しながら、
こういう人達の娘が今、街を大威張りで闊歩しているのだなぁと、
ため息をついてしまったのである。
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