結局は、
人は人に会うために生まれてきたのだ。
宇宙に出て、宇宙人をさがし、
セカイに出て、他者を探し求める。
科学を追究して、答えを探し求める。
ブラックホールに吸い込まれた終わりの光は、
始まりの光として、天上からぼくらに降り注ぐ。
まるで真っ暗な何もない無我夢中の領域に、
空間と時間を創り出しながら、光とぶつかってはじける花火をさがしもとめる光のように、
僕らは何者かと泳いで出会いたいのだ。
夢を見た。いつもの。
いつもいつも、僕はどこかで夢を見ている
深夜の街を焦る気持ちを抑えながら、何かをかりたてるように、
ところどころにある看板を見て回りながら、ぼくは僕を居させてくれる場所をさがし求めた。
真夜中に終わってしまう温泉、
営業時間の終わってしまいそうな飲食店、
ぼくは僕をずっと居させてくれる場所を探しながら、
銀のカートを押しながら、さまざまなサービスをそこに乗せて、
ずっと歩き続けた。
気持ちだけは、ずっと走り続けていた。
知らない街を歩き続けていると、
いつか通ったような町に、
知っているはずの、何かを知っているはずの風景に出会う。
でもその風景は、いつも迷っているだけの僕の道。
寂しくて儚くて、ただ夜明けを待っているだけの、暗闇の道。
ところどころにある蛍の光のような看板を頼りに、
わかりもしない営業時間の残酷さを見つめて、
僕は無理な注文をするように、お買い得な残り物の食料をさがすのだ。
なま暖かい風がふいて、ぼくは孤独が訪れる前の、
断続的な寂しさを思う。
このさびしさの風は、いつも僕の逃げ口上を刺激してつくりだす。
立ち止まるための理由を、投げ出すための理由を、逃げ壊れるための理由を、
ただ僕に授ける。
終わりのない湿った風が吹いて、
僕は ふっと目を覚ます
まだ人の居る町。みんなの居るこの時代、ナニカが見守っているような、
背中の瞳が笑う時代。
たぶん、みんなが今と呼べる、かぎられた繋がりの町。
僕はとたんに、なにか大事な事を思い出せない自分をはがゆく思う。
そのはがゆさを思って、だんだんここに居る事がつらくなる。
あともう少しで、あともう少し立てば、
いつだって僕は迷子の道。
小さい頃、目を覚ませば母親は居なかった。
姉妹にたずねても、どこにいったのか正確にはわからなかった。
僕は重い扉を開いて、反対を押し切って外へ出た。
なにもわからない場所、だれもしらない場所、
ただ涙を流しながら、ぼやけて流れていく信号機の光を見ていた。
知らないおばさんにぶつかって、
なにか子連れだったような、誰かと話して相談していたような、
ちょっと困っていながら母の匂いを馳せるおばさんとぶつかって、
僕は警察に連れて行かれた。
よく知らないおじさんが居て、なんだか適当に電話をかけたりものを書いたりしていた。
奥の洗面所に連れて行かれたら、歯ブラシをごしごしやっているおじさんがいた。
そのおじさんは歯を磨きながら僕に赤茶色い醤油色の、丸いかたいせんべいをくれた。
それをかじっている間に、僕はパトカーに乗せられた。
助手席で知らない人の膝の上に乗せられて、
ついた先は何故か僕の家だった。
その家が、本当に僕の家だったのかどうか、
いまでもよくわからない。
姉妹も母親も、僕の知っている母や姉妹の顔をしていたけれど、
僕は泣いて母親に何かをぶちまけて、
お母さんは「ごめんごめん、」と半笑いで僕をあやした。
どこかしら、ぼくはそこが違う新しい場所のような気がして、
その日から、僕の母はいなくなってしまったような気がして、
たぶん、安心して無意識のまま眠ってしまうことはできなくなった。
たぶんその日から、僕はうすく起きている。
半笑いの泣き顔も、楽しそうな笑い顔も、どこか僕にはよそよそしくて、
僕は寝てる間も薄く起きている。
そしてまた、逆に日常を薄く眠っている。
次に目が覚めたとき、ぼくらはどこに居るんだろう。
目を瞑って時代を夢見てるあいだ、僕らはどこにいるんだろう。
いつも乳房をさがして、口にしっかりと当てて確かめる赤ん坊の手のように、
僕らの手が届く距離は、まだまだ短い。
ほんのすこしだけ手を伸ばして、僕らは自然と幼児の科学を身につける。
なにもわからない場所で、なにかを確かめる。
それは時計の針を刻まない。
僕らの手が、ただカチコチと時計をつくってゆく。
人は人に会うために生まれてきたのだ。
宇宙に出て、宇宙人をさがし、
セカイに出て、他者を探し求める。
科学を追究して、答えを探し求める。
ブラックホールに吸い込まれた終わりの光は、
始まりの光として、天上からぼくらに降り注ぐ。
まるで真っ暗な何もない無我夢中の領域に、
空間と時間を創り出しながら、光とぶつかってはじける花火をさがしもとめる光のように、
僕らは何者かと泳いで出会いたいのだ。
夢を見た。いつもの。
いつもいつも、僕はどこかで夢を見ている
深夜の街を焦る気持ちを抑えながら、何かをかりたてるように、
ところどころにある看板を見て回りながら、ぼくは僕を居させてくれる場所をさがし求めた。
真夜中に終わってしまう温泉、
営業時間の終わってしまいそうな飲食店、
ぼくは僕をずっと居させてくれる場所を探しながら、
銀のカートを押しながら、さまざまなサービスをそこに乗せて、
ずっと歩き続けた。
気持ちだけは、ずっと走り続けていた。
知らない街を歩き続けていると、
いつか通ったような町に、
知っているはずの、何かを知っているはずの風景に出会う。
でもその風景は、いつも迷っているだけの僕の道。
寂しくて儚くて、ただ夜明けを待っているだけの、暗闇の道。
ところどころにある蛍の光のような看板を頼りに、
わかりもしない営業時間の残酷さを見つめて、
僕は無理な注文をするように、お買い得な残り物の食料をさがすのだ。
なま暖かい風がふいて、ぼくは孤独が訪れる前の、
断続的な寂しさを思う。
このさびしさの風は、いつも僕の逃げ口上を刺激してつくりだす。
立ち止まるための理由を、投げ出すための理由を、逃げ壊れるための理由を、
ただ僕に授ける。
終わりのない湿った風が吹いて、
僕は ふっと目を覚ます
まだ人の居る町。みんなの居るこの時代、ナニカが見守っているような、
背中の瞳が笑う時代。
たぶん、みんなが今と呼べる、かぎられた繋がりの町。
僕はとたんに、なにか大事な事を思い出せない自分をはがゆく思う。
そのはがゆさを思って、だんだんここに居る事がつらくなる。
あともう少しで、あともう少し立てば、
いつだって僕は迷子の道。
小さい頃、目を覚ませば母親は居なかった。
姉妹にたずねても、どこにいったのか正確にはわからなかった。
僕は重い扉を開いて、反対を押し切って外へ出た。
なにもわからない場所、だれもしらない場所、
ただ涙を流しながら、ぼやけて流れていく信号機の光を見ていた。
知らないおばさんにぶつかって、
なにか子連れだったような、誰かと話して相談していたような、
ちょっと困っていながら母の匂いを馳せるおばさんとぶつかって、
僕は警察に連れて行かれた。
よく知らないおじさんが居て、なんだか適当に電話をかけたりものを書いたりしていた。
奥の洗面所に連れて行かれたら、歯ブラシをごしごしやっているおじさんがいた。
そのおじさんは歯を磨きながら僕に赤茶色い醤油色の、丸いかたいせんべいをくれた。
それをかじっている間に、僕はパトカーに乗せられた。
助手席で知らない人の膝の上に乗せられて、
ついた先は何故か僕の家だった。
その家が、本当に僕の家だったのかどうか、
いまでもよくわからない。
姉妹も母親も、僕の知っている母や姉妹の顔をしていたけれど、
僕は泣いて母親に何かをぶちまけて、
お母さんは「ごめんごめん、」と半笑いで僕をあやした。
どこかしら、ぼくはそこが違う新しい場所のような気がして、
その日から、僕の母はいなくなってしまったような気がして、
たぶん、安心して無意識のまま眠ってしまうことはできなくなった。
たぶんその日から、僕はうすく起きている。
半笑いの泣き顔も、楽しそうな笑い顔も、どこか僕にはよそよそしくて、
僕は寝てる間も薄く起きている。
そしてまた、逆に日常を薄く眠っている。
次に目が覚めたとき、ぼくらはどこに居るんだろう。
目を瞑って時代を夢見てるあいだ、僕らはどこにいるんだろう。
いつも乳房をさがして、口にしっかりと当てて確かめる赤ん坊の手のように、
僕らの手が届く距離は、まだまだ短い。
ほんのすこしだけ手を伸ばして、僕らは自然と幼児の科学を身につける。
なにもわからない場所で、なにかを確かめる。
それは時計の針を刻まない。
僕らの手が、ただカチコチと時計をつくってゆく。