勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-09-27 05:00:00
韓国、「訪日観光客」反日を棚上へして自国経済「落日の癒やし」
テーマ:ブログ
中国は国慶節旅行で日本が1位
韓国は経済絶好調の日本へ憧れ
秋の旅行シーズンを迎えた。今年は8月、9月と天災が多発した。海外からの旅行客にとって面食らうことも多かったはずだ。
その中で、8月までの訪日観光客数は順調な伸びを続けている。
しかも、全世界から観光客が来てくれたのだ。一般的には、地理的な関係から、東アジア諸国からの旅行客が増えているだけと思われがち。
だが、他地域からの旅行客も急増している。1~8月までの実績を見ると、ほとんどの国が「二桁増」だ。「日本ブーム」と言っても良いほどの現象になっている。
先ず、今年1~8月までの国別の訪日観光客数と対前年同期比の伸び率を見ておきたい。
総数 2130万8900人 対前年同期比12.6%
1位 中国 579万5600人 18.7%
2位 韓国 521万8300人 12.0%
3位 台湾 336万0800人 8.0%
4位 香港 153万5500人 1.4%
5位 タイ 72万8600人 16.8%
(資料:国土交通省観光庁)
上位20位までの国で増加率が一桁であるのは、次の国々である。
上述の台湾と香港は総人口数の関係で伸び率にも限度があるのは当然であろう。このほかでは、マレーシア(8.8%)、カナダ(8.0%)、英国(8.8%)、ドイツ(9.2%)という具合にいずれも、二桁スレスレの高い伸び率である。
これだけ各国からの訪日観光客が増えている理由については、すでにいろいろと指摘されている。
清潔、親切、安全、景色、和食、文化などである。全て、もっともであってその通りである。
その結果、1位中国と2位韓国の両国は1~8月の累計で、計1100万人と全体の5割強を占めている。地理的に近い、という理由だけでなく、外交的に日本との関係が安定している。それが寄与していることに注目したい。
ここで、注意して頂きたいのは、旅行好きの人たちは「リピーター」と称して、短期間に繰り返し旅行する点だ。
中国、韓国、台湾などは近距離ゆえに「日本リピーター」の数がかなりあると思われる。「日本大好き」というファンの多数存在することが、訪日観光客数を押上げていると見られる。
中国人の海外旅行先では、中国との政治的な関係が安定していることが重要な条件になっている。
中国と韓国では、つい先頃まで「THAAD」(超高高度ミサイル網)の設置をめぐって、軋轢を生んできた。だが、最近は雪解けムードだ。中国が韓国への締め付けを緩めていることが背景にある。
その原因をさらに探ると、韓国と北朝鮮の「南北平壌宣言」で南北が鉄道で結びつく公算が強くなってきた。
無論、実現は米朝関係が正常化された後の話である。
中国は、北朝鮮―韓国が鉄路で結ばれれば、韓国からの「一帯一路」利用の貨物輸送が増える可能性に期待しているはずだ。
現在、中国―ロンドンの貨物輸送は大赤字である。韓国の輸出貨物を一帯一路で欧州へ輸出できれば赤字が減る。
こういう前提をいくつか置くと、中国は韓国と角付き合わせの関係が損失をもたらすことに気付いたのだ。
こうして、中国人の訪韓旅行者もここ2ヶ月ほど、増加に転じている。
以上のように、曲がりくどい説明をしてきたが、海外旅行と外交関係は密接な関係にある。
日本と中国の関係もしかりである。
中国が、これまで日本に対して一帯一路事業の参加を求めていた。それが、ようやく日本も参加することになった。
一帯一路は、中国にとって失敗すれば命取りになりかねない「難物」になっている。
米中間は、貿易戦争で一触即発である。中国が外交的に頼れる先は、日本しかなくなったのだ。こうなると、本心は別としても「日中友好」を演出せざるを得ない。
中国は国慶節旅行で日本が1位
今年の国慶節旅行で、日本が初めて1位になった背景には、外交的な関係があることを知っておくべきだろう。
『日本経済新聞 電子版』(9月18日付)は、「中国人の国慶節人気旅行先、 日本が初の首位」と題する記事を掲載した。
(1)
「中国の国慶節(建国記念日)を祝う10月の大型連休中の人気旅行先として、日本が初めて首位に立った。直前に大阪と北海道で大規模災害が発生し、訪日中国人客の減少が懸念されていた。ただ、旅行先の分散が進んでいるほか、災害復旧への対応の早さも評価され、影響は限定的となりそうだ。日中関係の改善も追い風になっている」
中国市民による日本への評価は、掛け値なしに高いものがある。中国にないものが、全て日本にあるからだ。奈良は、唐の時代の雰囲気を伝えているとして、定評を得ている。日本文化の源流は中国にある。その支流にあたる日本が、源流中国の文化を保存していることに興味をそそられるらしい。
(2)
「中国の旅行予約サイト大手、携程旅行網(シートリップ)がまとめた。トップの理由として、観光資源が豊富にあり、目的地が多様な点を挙げた。また2017年に首位だったタイでは、今年7月に中国人客を乗せたボートの転覆事故が発生。安全面への不安が高まり、客足が遠のいた面も大きかった。中国では日本の災害ニュースが大きく報道される一方、交流サイト(SNS)では連日、日本在住の中国人が復旧状況を投稿している。「繁華街の回復など対応の早さが伝わり、逆に旅行を考える中国人に安心感を与えた」(遼寧省大連の旅行会社)とみられる。
日本列島は南北に長いゆえに、関西と北海道が災害の跡が残っていても、他の地域を旅行するリピーターが増えているという。秋の日本の景色は、中国のそれとは別の趣があるだろう。中国でも旅行の中心世代は、「90後」(1990年代生まれ)になりつつあるという。その新感覚で、日本を「丸かじり」して欲しいものだ。
韓国は経済絶好調の日本へ憧れ
日本人は、天邪鬼である。
アベノミクスで経済状況は大きく好転したにもかかわらず、依然としてそれを素直に認めたがらない人々がいかに多いことか。
自民党総裁選では、アベノミクスを否定する候補者もいた。色眼鏡を外して、韓国と日本の経済実態を比較するがいい。
反日の韓国であるが、経済政策だけはしっかりと日本の成功を讃えている。
この裏には、自国大統領の最低賃金大幅引上げという失敗が傷跡を残している事実がある。韓国大学生の就職先として、日本にフットライトが当てられていることもあろう。
ただ、日本の就職先では「東京、一流企業、IT・観光」という幻想を持っている向きもいる。これが叶えられなければ、「日本は韓国人を利用するだけ」という誤解がすぐに生まれかねない。日本人でも、全員が東京、一流企業、IT・観光へ就職できる訳でない。日本を理想化する余りに、夢が先走っている感じが懸念される。
『韓国経済新聞』(9月11日付)は、「韓国人観光客、日本観光史上最多、歴史問題は別ではないですか」と題する記事を掲載した。
(3)
「日本を訪れた韓国人観光客数は連日、新記録を塗り替えている。
ここ2カ月間、日本旅行を2度も行ってきたという会社員のヤンさん(27)は、『歴史や政治問題では日本が好きではないが、食べ物がおいしくて安いうえに見どころも多く、旅行地として満足度が高い』と話した。
韓国の和食店も相次ぎ増えている。
統計庁によると、2006年5272店だった和食店は2016年1万39店と、2倍近く増えた。同期間に韓国料理屋と中華料理屋がそれぞれ12%、3%増加にとどまったことと対照的だ。
出版業界でも『日本ブーム』は健在だ。9月10日、大型書店の教保(キョボ)文庫オンラインサイトでは小説部門のベストセラー10位のうち薬丸岳、東野圭吾など日本人作家の本が半分を占めた」
韓国の訪日観光客が増えている背景に、日本ブームがあるようだ。メディアでは、ことあるごとに「反日報道」が大手を振って登場する。だが、和食を好み、日本の小説を競って読んでくれる読者の存在を考えれば、日本旅行者が増えても何ら奇異に感じないバックグランドが築かれているように思える。
韓国は、形式を重視する社会である。儒教は形式主義の最たるものだ。古い仕来りを守ることによって社会秩序を維持する考え方である。
反日を唱えて文句をいうことが、韓国社会の形式(作法)とも考えられる。
そう考えれば、「反日」には大きな意味はないように思えるが、そうかといって絶対に軽視はできない民族のエトスであろう。
韓国の訪日観光客が増えても、日本は節度を守った接し方をしないと、大変な騒ぎを引き起こす懸念があろう。
それだけ、接し方のむずかしい社会ということだ。米国人のフランクさとは訳が違うのだ。
韓国社会は今、日本を理解しようと努めているのかもしれない。
ソウルには、ビル一棟がまるまる日本の居酒屋や和食の店が、日本語の看板を出しているところもあるという。
その経営者が日本人か韓国人かは不明だが、過去になかった変化のように思える。とすれば、韓国側が日本を理解しようと、第一歩を踏み出している。そんな感じも成り立つだろう。
『中央日報』(9月24日付)は、「秋夕連休の海外人気旅行先、依然として1~3位は日本が独占」と題する記事を掲載した。
(4)
「今年の韓国秋夕(チュソク、中秋)連休も日本が人気旅行先1~3位を独占した。eコマース(電子商取引)企業のティーモン(TMON)が今年の秋夕連休期間(9月22~30日)の国内外航空券予約件数を分析した結果、海外旅行の場合、昨年よりも22%増加したと23日、明らかにした。特に、今年の海外旅行先を地域別に見てみると、日本が全体の30%を占めて1位となった」
9月下旬は、韓国の大型連休である。9日間も休暇を取るのかどうかは分らないが、長期休暇である。地理的に、日本より遠方へ旅行して当然だ。
その中であえて日本を選んだ理由は何か。一つは日韓関係が竹島と慰安婦の問題を除けば、外交的に対立している案件のないことだろう。
とすれば、気分良く旅行できる雰囲気であろう。海外旅行推進の隠れた要因は、安定した外交関係の存在である。
(5)
「昨年に比べると6%ポイント減少したものの、大阪、福岡、東京が1~3位を独占し、依然として韓国人の人気旅行先に挙げられている。一方、日本以外で航空券の予約が多かったのは、東南アジア・中東(28%)、中華地域・ロシア(19%)、米国・欧州(17%)の順となっている」
日本が海外旅行先の30%を占めて1位である。東南アジア・中東(28%)、中華地域・ロシア(19%)、米国・欧州(17%)は、複数国である。
この点を考えると、韓国の海外旅行市場で、日本が突出した位置にあることが分る。日本への関心の高さを示している気がするのだ。
(2018年9月27日付)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-09-27 05:00:00
韓国、「訪日観光客」反日を棚上へして自国経済「落日の癒やし」
テーマ:ブログ
中国は国慶節旅行で日本が1位
韓国は経済絶好調の日本へ憧れ
秋の旅行シーズンを迎えた。今年は8月、9月と天災が多発した。海外からの旅行客にとって面食らうことも多かったはずだ。
その中で、8月までの訪日観光客数は順調な伸びを続けている。
しかも、全世界から観光客が来てくれたのだ。一般的には、地理的な関係から、東アジア諸国からの旅行客が増えているだけと思われがち。
だが、他地域からの旅行客も急増している。1~8月までの実績を見ると、ほとんどの国が「二桁増」だ。「日本ブーム」と言っても良いほどの現象になっている。
先ず、今年1~8月までの国別の訪日観光客数と対前年同期比の伸び率を見ておきたい。
総数 2130万8900人 対前年同期比12.6%
1位 中国 579万5600人 18.7%
2位 韓国 521万8300人 12.0%
3位 台湾 336万0800人 8.0%
4位 香港 153万5500人 1.4%
5位 タイ 72万8600人 16.8%
(資料:国土交通省観光庁)
上位20位までの国で増加率が一桁であるのは、次の国々である。
上述の台湾と香港は総人口数の関係で伸び率にも限度があるのは当然であろう。このほかでは、マレーシア(8.8%)、カナダ(8.0%)、英国(8.8%)、ドイツ(9.2%)という具合にいずれも、二桁スレスレの高い伸び率である。
これだけ各国からの訪日観光客が増えている理由については、すでにいろいろと指摘されている。
清潔、親切、安全、景色、和食、文化などである。全て、もっともであってその通りである。
その結果、1位中国と2位韓国の両国は1~8月の累計で、計1100万人と全体の5割強を占めている。地理的に近い、という理由だけでなく、外交的に日本との関係が安定している。それが寄与していることに注目したい。
ここで、注意して頂きたいのは、旅行好きの人たちは「リピーター」と称して、短期間に繰り返し旅行する点だ。
中国、韓国、台湾などは近距離ゆえに「日本リピーター」の数がかなりあると思われる。「日本大好き」というファンの多数存在することが、訪日観光客数を押上げていると見られる。
中国人の海外旅行先では、中国との政治的な関係が安定していることが重要な条件になっている。
中国と韓国では、つい先頃まで「THAAD」(超高高度ミサイル網)の設置をめぐって、軋轢を生んできた。だが、最近は雪解けムードだ。中国が韓国への締め付けを緩めていることが背景にある。
その原因をさらに探ると、韓国と北朝鮮の「南北平壌宣言」で南北が鉄道で結びつく公算が強くなってきた。
無論、実現は米朝関係が正常化された後の話である。
中国は、北朝鮮―韓国が鉄路で結ばれれば、韓国からの「一帯一路」利用の貨物輸送が増える可能性に期待しているはずだ。
現在、中国―ロンドンの貨物輸送は大赤字である。韓国の輸出貨物を一帯一路で欧州へ輸出できれば赤字が減る。
こういう前提をいくつか置くと、中国は韓国と角付き合わせの関係が損失をもたらすことに気付いたのだ。
こうして、中国人の訪韓旅行者もここ2ヶ月ほど、増加に転じている。
以上のように、曲がりくどい説明をしてきたが、海外旅行と外交関係は密接な関係にある。
日本と中国の関係もしかりである。
中国が、これまで日本に対して一帯一路事業の参加を求めていた。それが、ようやく日本も参加することになった。
一帯一路は、中国にとって失敗すれば命取りになりかねない「難物」になっている。
米中間は、貿易戦争で一触即発である。中国が外交的に頼れる先は、日本しかなくなったのだ。こうなると、本心は別としても「日中友好」を演出せざるを得ない。
中国は国慶節旅行で日本が1位
今年の国慶節旅行で、日本が初めて1位になった背景には、外交的な関係があることを知っておくべきだろう。
『日本経済新聞 電子版』(9月18日付)は、「中国人の国慶節人気旅行先、 日本が初の首位」と題する記事を掲載した。
(1)
「中国の国慶節(建国記念日)を祝う10月の大型連休中の人気旅行先として、日本が初めて首位に立った。直前に大阪と北海道で大規模災害が発生し、訪日中国人客の減少が懸念されていた。ただ、旅行先の分散が進んでいるほか、災害復旧への対応の早さも評価され、影響は限定的となりそうだ。日中関係の改善も追い風になっている」
中国市民による日本への評価は、掛け値なしに高いものがある。中国にないものが、全て日本にあるからだ。奈良は、唐の時代の雰囲気を伝えているとして、定評を得ている。日本文化の源流は中国にある。その支流にあたる日本が、源流中国の文化を保存していることに興味をそそられるらしい。
(2)
「中国の旅行予約サイト大手、携程旅行網(シートリップ)がまとめた。トップの理由として、観光資源が豊富にあり、目的地が多様な点を挙げた。また2017年に首位だったタイでは、今年7月に中国人客を乗せたボートの転覆事故が発生。安全面への不安が高まり、客足が遠のいた面も大きかった。中国では日本の災害ニュースが大きく報道される一方、交流サイト(SNS)では連日、日本在住の中国人が復旧状況を投稿している。「繁華街の回復など対応の早さが伝わり、逆に旅行を考える中国人に安心感を与えた」(遼寧省大連の旅行会社)とみられる。
日本列島は南北に長いゆえに、関西と北海道が災害の跡が残っていても、他の地域を旅行するリピーターが増えているという。秋の日本の景色は、中国のそれとは別の趣があるだろう。中国でも旅行の中心世代は、「90後」(1990年代生まれ)になりつつあるという。その新感覚で、日本を「丸かじり」して欲しいものだ。
韓国は経済絶好調の日本へ憧れ
日本人は、天邪鬼である。
アベノミクスで経済状況は大きく好転したにもかかわらず、依然としてそれを素直に認めたがらない人々がいかに多いことか。
自民党総裁選では、アベノミクスを否定する候補者もいた。色眼鏡を外して、韓国と日本の経済実態を比較するがいい。
反日の韓国であるが、経済政策だけはしっかりと日本の成功を讃えている。
この裏には、自国大統領の最低賃金大幅引上げという失敗が傷跡を残している事実がある。韓国大学生の就職先として、日本にフットライトが当てられていることもあろう。
ただ、日本の就職先では「東京、一流企業、IT・観光」という幻想を持っている向きもいる。これが叶えられなければ、「日本は韓国人を利用するだけ」という誤解がすぐに生まれかねない。日本人でも、全員が東京、一流企業、IT・観光へ就職できる訳でない。日本を理想化する余りに、夢が先走っている感じが懸念される。
『韓国経済新聞』(9月11日付)は、「韓国人観光客、日本観光史上最多、歴史問題は別ではないですか」と題する記事を掲載した。
(3)
「日本を訪れた韓国人観光客数は連日、新記録を塗り替えている。
ここ2カ月間、日本旅行を2度も行ってきたという会社員のヤンさん(27)は、『歴史や政治問題では日本が好きではないが、食べ物がおいしくて安いうえに見どころも多く、旅行地として満足度が高い』と話した。
韓国の和食店も相次ぎ増えている。
統計庁によると、2006年5272店だった和食店は2016年1万39店と、2倍近く増えた。同期間に韓国料理屋と中華料理屋がそれぞれ12%、3%増加にとどまったことと対照的だ。
出版業界でも『日本ブーム』は健在だ。9月10日、大型書店の教保(キョボ)文庫オンラインサイトでは小説部門のベストセラー10位のうち薬丸岳、東野圭吾など日本人作家の本が半分を占めた」
韓国の訪日観光客が増えている背景に、日本ブームがあるようだ。メディアでは、ことあるごとに「反日報道」が大手を振って登場する。だが、和食を好み、日本の小説を競って読んでくれる読者の存在を考えれば、日本旅行者が増えても何ら奇異に感じないバックグランドが築かれているように思える。
韓国は、形式を重視する社会である。儒教は形式主義の最たるものだ。古い仕来りを守ることによって社会秩序を維持する考え方である。
反日を唱えて文句をいうことが、韓国社会の形式(作法)とも考えられる。
そう考えれば、「反日」には大きな意味はないように思えるが、そうかといって絶対に軽視はできない民族のエトスであろう。
韓国の訪日観光客が増えても、日本は節度を守った接し方をしないと、大変な騒ぎを引き起こす懸念があろう。
それだけ、接し方のむずかしい社会ということだ。米国人のフランクさとは訳が違うのだ。
韓国社会は今、日本を理解しようと努めているのかもしれない。
ソウルには、ビル一棟がまるまる日本の居酒屋や和食の店が、日本語の看板を出しているところもあるという。
その経営者が日本人か韓国人かは不明だが、過去になかった変化のように思える。とすれば、韓国側が日本を理解しようと、第一歩を踏み出している。そんな感じも成り立つだろう。
『中央日報』(9月24日付)は、「秋夕連休の海外人気旅行先、依然として1~3位は日本が独占」と題する記事を掲載した。
(4)
「今年の韓国秋夕(チュソク、中秋)連休も日本が人気旅行先1~3位を独占した。eコマース(電子商取引)企業のティーモン(TMON)が今年の秋夕連休期間(9月22~30日)の国内外航空券予約件数を分析した結果、海外旅行の場合、昨年よりも22%増加したと23日、明らかにした。特に、今年の海外旅行先を地域別に見てみると、日本が全体の30%を占めて1位となった」
9月下旬は、韓国の大型連休である。9日間も休暇を取るのかどうかは分らないが、長期休暇である。地理的に、日本より遠方へ旅行して当然だ。
その中であえて日本を選んだ理由は何か。一つは日韓関係が竹島と慰安婦の問題を除けば、外交的に対立している案件のないことだろう。
とすれば、気分良く旅行できる雰囲気であろう。海外旅行推進の隠れた要因は、安定した外交関係の存在である。
(5)
「昨年に比べると6%ポイント減少したものの、大阪、福岡、東京が1~3位を独占し、依然として韓国人の人気旅行先に挙げられている。一方、日本以外で航空券の予約が多かったのは、東南アジア・中東(28%)、中華地域・ロシア(19%)、米国・欧州(17%)の順となっている」
日本が海外旅行先の30%を占めて1位である。東南アジア・中東(28%)、中華地域・ロシア(19%)、米国・欧州(17%)は、複数国である。
この点を考えると、韓国の海外旅行市場で、日本が突出した位置にあることが分る。日本への関心の高さを示している気がするのだ。
(2018年9月27日付)