日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2019-11-15 05:00:00
テーマ:ブログ
韓国政府は、GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)を巡って、最後まで米国と駆け引きをしている。
日本から「ホワイト国除外」の一札を取らなければ、テコでも動かないという姿勢だ。
この裏には、来年4月の総選挙が絡んでいる。
前法相チョ・グク氏の逮捕を目前に控えており、与党「共に民主党」は総崩れになる。
そこで、党利党略のためにGSOMIA破棄して、国民に向け最後の支持取り付けで狂奔している。
米国政府は、米中冷戦の認識を鮮明にしており、GSOMIA継続が日米韓三ヶ国の安全保障インフラと理解している。
その砦となるGSOMIAを国内政治優先で破棄するならば、韓国へ断固対応するという強い姿勢を見せている。文政権は、まさに内憂外患そのものである。
『朝鮮日報』(11月14日付)は、「米、『GSOMIA終了なら想像できないほどの波紋』」と題する記事を掲載した。
韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長と防衛費引き上げ問題をめぐり、米政府が連日、「波状圧力」をかけている。
米政府はGSOMIA終了時に備え、韓国政府を強く批判する声明を準備しているところで、米軍高官も相次いで出てGSOMIA延長と防衛費増額を要求している。
(1)
「米国の外交消息筋は13日、「米政府はGSOMIA終了と維持という両方の可能性を念頭に置いて2種類の声明を準備している」と伝えた。
韓国政府が22日までにGSOMIA破棄決定を覆さなかった場合、米国は23日に最も強度の高い文在寅(ムン・ジェイン)政権批判声明を発表する方針だという。
逆にGSOMIAが延長された場合は、これを歓迎して韓日関係の改善を望む声明を出すだろうと言った。こうした声明は米国務省ではなくホワイトハウスが主導するとのことだ」
韓国政府は、米中冷戦という現実を理解しないで、来春の総選挙でいかに生き残るかという目先の利益に固執している。朝鮮李朝末期と同じ外交音痴ぶりを示している。
(2)
「米政府関係者は、「これまで長官クラスをはじめ、さまざまな次元でGSOMIA維持を望む言及をしてきた。
韓国が最終的に米韓日3カ国の協力強化を望む我々の要請を拒否するなら、想像しがたいほどの波紋が起こるだろう」と語った。
また、別の関係者は「韓国が我々の立場を受け入れていないなら、『パーフェクト・ストーム(最悪の状況)』に見舞われるかもしれない」と述べた」
韓国が、世界の覇権国で同盟国である米国の要請すら受け付けないことになれば、米国政府はメンツ丸潰れである。
威信をかけて強硬声明を発すれば、韓国国内情勢は大打撃を受ける。
韓国中間派は、安保危機を察して大挙して保守派へ一票投じるであろう。
こうなれば、文政権の敗北である。
総選挙に勝つためGSOMIAを破棄するのに、結果は逆で笑うに笑えない事態が想像できる。
(3)
「ロバート・エイブラムス在韓米軍司令官は12日、京畿道平沢市内のハンフリーズ基地で行われた就任1周年記者懇談会で、「GSOMIAが終了したら、(朝中露などの)周辺国に、我々(韓米日)が弱いという間違ったメッセージを与えるかもしれない」
「GSOMIAの根本原則は、韓日が歴史的な違いを後回しにして、北東アジア域内の安定と安保を最優先しているという明確なメッセージを地域に発することだ」と述べた」
在韓米軍司令官もGSOMIA破棄の危機感を表明している。
現地の米軍が破棄のリスクを指摘しているにもかかわらず、韓国政府が無頓着であるとは不思議な構図である。文政権が国内政治だけに目を向けている証拠だ。
(4)
「さらに、現在行われている韓米防衛費分担特別協定(SMA)交渉に関しても、
「ハリー・ハリス駐韓米国大使が先日、『韓国政府はもっと多く支払う能力があるし、もっと多く支払うべきだ』と言ったが、これに同意する」と語った。
在韓米軍司令官が防衛費とGSOMIA問題に対して直接圧力を加えるのは異例だ。
13日に訪韓したマーク・ミリー米統合参謀本部議長と、14日に訪韓するマーク・エスパー米国防長官も、GSOMIA問題と防衛費問題を強く提起するものと予想される」
GSOMIA破棄は、駐韓米軍の駐留費の分担問題としてはね返る。米国は、高いコストに付くことを韓国に知らせているのだ。
(5)
「韓国政府は、日本の姿勢に変化ない限りGSOMIA延長は難しいという考えだ。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が近く訪米し、韓国の見解を説明することを検討しているところだ」
韓国政府の国内政治優先の間違った判断は、総選挙で最大の争点になろう。
政府は、「ホワイト国除外」による被害がゼロと発表している。それでも「ホワイト国除外」に拘るのは、韓国政府がメンツ=総選挙にかけているとしか思えない。