台湾有事は現実味を帯びている」石平氏講演
2022/4/13 12:57「正論」懇話会
第151回九州「正論」懇話会で講演した評論家の石平氏=11日午後、福岡市博多区(中村雅和撮影)
福岡市博多区のホテル日航福岡で11日に開かれた九州「正論」懇話会の第151回講演会では、評論家の石平(せきへい)氏が「ウクライナ危機後に中国・習近平政権はどう動くか」と題して講演。
「台湾有事は現実味を帯びている。
日本は日本周辺の安全と平和を守るために覚悟を決めなければならない」と述べ、ロシアによるウクライナ侵攻を教訓に、憲法改正や核保有の議論の必要性を訴えた。
主な内容は次の通り。
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習近平政権が2012年に誕生して10年。
今の中国共産党に集団的指導体制はなく、完全に習氏の個人独裁体制になった。
まさにロシアのプーチン大統領のような状況だ。
最高指導者の任期制が撤廃され、習氏が終身独裁者になる道が開かれた。
彼は今までの慣例に従って10年で引退するつもりはなく、3期も4期もやっていくつもりだ。
この数年で台湾有事が現実味を帯びている。
中国に返還された後の香港の悲惨な状況をみると、台湾人は香港式の「一国二制度」を信用できなくなった。
平和統一の道は習近平政権によって絶たれた。中国に残された唯一の道は武力を使って台湾を併合することだ。
今の中国は、軍事力で台湾を併合することに自信を持っている。武力で台湾を併合する時期は徐々に熟しており、習近平政権は着々と台湾併合戦争の準備を進めている。
習氏は軍を視察すると必ず「戦争準備を整えよ」という指示を出す。世界広しといっても、各国の指導者でそう指示するのは習氏だけだ。
習氏には台湾併合戦争を発動する個人的な理由もある。彼は毛沢東や鄧小平と肩を並べる偉大な指導者になろうとしている。問題は業績が何もないことだ。
台湾併合に成功すれば、過去の指導者ができなかった偉業を達成したことになり、歴史に名を残す。
習近平政権は全面的にプーチン大統領の戦争を後押しした。
2月4日、プーチン大統領は北京五輪の開幕に合わせて北京を訪問し、中国との共同声明で北大西洋条約機構(NATO)拡大に反対すると表明した。
さらに、中国はロシアからの天然ガスの輸入を大幅に増やすと約束し、天然ガスなどの輸入をやめるという西側の経済カードを無力化した。
プーチン大統領は首脳会談が終わった時点で侵略戦争を決意したと思う。中国はロシアの侵略を容認し、戦争に加担した。
× × ×
習氏は、秋の党大会で続投が決まり政権3期目に入ると、台湾併合戦争に進む腹づもりだった。しかし、ウクライナ戦争が起きた結果、変化が出てきた。
戦争が始まって50日近くが経ったが、中国は微妙にロシアとの距離を置き始めている。
最初は勝ち馬に乗るつもりだったが、どうやらプーチン大統領は負け馬になると感じ、馬から下りようとしている。
ロシアがこれほどの苦戦を強いられるとは思わなかっただろう。中国も台湾進攻への自信が揺れることになった。
ウクライナ戦争におけるロシアの頓挫により、習氏がたくらむ台湾併合戦争を遅らせる可能が出てきた。
ウクライナが抵抗し、西側がロシアに制裁を加えたことで、台湾は自国を防衛する自信を深めた。
台湾侵略で中国が制裁を受けたら中国経済ももたない。
ロシアの侵略で中国政府高官が一番ショックだったのは、ロシア政府高官にも制裁が発動されたことだ。
中国が台湾進攻に踏み切り、同じような制裁を発動され、海外の財産が凍結されると、
幹部らは財産を失う。
彼らにとっては祖国統一とかどうでもよく、財産を失うことが痛い。
財産を守るためにいろんな手を使って台湾併合戦争を食い止める動きを取るだろう。
ウクライナ人の莫大(ばくだい)な犠牲を払った抵抗によって、台湾が救われようとしている。
だからといって習氏は台湾侵略戦争を諦めることはなく、台湾有事の危険性が去ったわけではない。
5年以内にできなくても10年以内になんとかする。彼からすればまだ時間はある。
台湾で戦争が起きたら日本は確実に当事者になる。
米軍が中国軍と戦う場合、日本の自衛隊はどうするか。米軍と行動をともにしないなら、その瞬間に日米同盟が崩壊する。
逆に自衛隊が米軍と行動をともにすれば、日本は実質的に中国と交戦することになる。日米同盟が台湾有事を傍観して中国の台湾併合を許せば、日本の安全保障は台無しになる。