ラーメン消費量NO.1の山形が誇る超行列店
山形県鶴岡市の海沿いの町で、冬季のみ営業するラーメン店「琴平荘(こんぴらそう)」。本来は旅館なのだが、冬場の閑散期にラーメン店を始めたところ、それが評判を呼び連日数百人の大行列に。山形を代表する名店である。当初は11月~3月の5ヶ月限定だったが、人気を受けて、現在は10月から5月の8ヶ月間営業している。
創業したのは2002年。ご主人の掛神淳氏はラーメン店での修業経験はなく、趣味のラーメン店巡りを活かして独自の一杯に辿り着いたという。「宅麺.com」での取り寄せは可能だが、ご主人は「店に来てくれるお客さんを大事に」との想いから、基本的にイベントへの出店はしない。それだけにラーメンファンなら一度は訪れたい店だ。
鶴岡駅10時ちょうど発の羽越本線で三瀬駅へ。開店30分前の10時半頃には店に到着したが、さすが日曜日だ。既に駐車場は満車状態。建物自体は旅館なので、玄関も館内も結構スペースがあるが、その玄関は靴の置き場がないほど。靴をなんとか押し込み、「中華そば処」という看板に従って突き当たりの部屋へ。
緑の暖簾の向こう、宴会が出来る畳の広間「月山」に座卓を並べ客席にしているのである。襖を開くと既に客で溢れ返っている。置かれた整理券を急ぎ掴むも、ナンバーは「111番」。客間には、その時点で呼ばれている番号が掲示されているのだが、まだ「19」番だ。そして整理券はグループで1枚なので、イコール人数ではない。
いったい何人が待っているのやら。開店30分前にしてコレである。ネット情報によると、自分の整理券の番号から、その時点で呼ばれている番号を引き、2分15秒を掛けると、大体の待ち時間がわかるという話である。(111番-19番)×2分15秒=3時間27分。ざっと見て午後2時以降か・・・これは、かなりの長丁場になりそうだ。
もっとも整理券があるので、ずっと館内にいる必要はない。岸壁に立つ琴平荘の裏手には、海水浴場と磯場が広がっていて絶景ではある。ただ、厳冬期には風も強く、外に出るのもなかなかに辛い。幾つかの客間を待合室として開放しているので、暖房の効いた室内でぬくぬくと待つのが懸命だろう。暇つぶしグッズ必携だ。
さて、午後2時をまわり、いよいよ整理番号も100番を越えてきた。何を啜ろうか。麺メニューの主軸は醤油清湯の「中華そば」で、スープは「あっさり」と「こってり」から選択が可能だ。また、どちらも平日限定だが「中華そば 塩」、1日20食限定の「味噌」も用意されている。さらに「ぶっかけ漁師めし」や白飯もありビールも呑める。
午後2時40分、いよいよ111番が呼ばれる。待ち時間は実に3時間40分。もはや「旨い」以外の感想などあってはならないのだ。ホール係に誘われ座卓へ。後悔の無いよう悩んだ挙句「チャーシューメン(800円)」のこってり(油多め)に「味付玉子(100円)」を乗せ、更に「漁師ぶっかけめし(150円)」を付け足してオーダーすることに。
着丼まではそれほど時間はかからなかった。午後2時45分、ついにご対麺である。見た目は大した特徴のない醤油清湯ラーメンだが、まずはスープをひと匙。鶏ガラベースの動物系出汁に、アゴ=飛魚など様々な魚介出汁の旨味を幾重にも重ねた出汁だ。深い旨味が口腔内に広がっていく。これか、これが琴平荘なのか。
飛魚は仕入れ後に、下拵えから天日干し、焼きまでをご主人が行っているという。そこに鯖煮干などを混ぜて、旨味たっぷりの魚介出汁を作り出している。そこに合わせるのは毎朝6時に打っている自家製の中太縮れ麺だ。日殻製粉の専用粉を使用していて、保存料などを一切使わず、灌水も極力抑えているという。
個性を出すため、小麦粉の種類や配合、水の量、熟成の温度などを何度も変えて研究を重ねたという逸品だ。後ほど「替え玉 半玉(60円)」を追加したのだが、より麺の旨味がストレートに感じられて旨かった。メンマは乾燥状態から1週間ほどかけて水で戻し、チャーシューの煮汁で煮ているという。これも手間がかかっている。
もちろん、チャーシューも自家製。国産豚の肩バラ肉を煮たもので、肉自体の旨味を存分に感じられる上、ホロホロと柔らかく絶品だ。半熟で黄身に甘みのある味玉も旨い。一切手抜き無し、納得の一杯である。「ぶっかけ漁師めし」も海苔や節の香りがよく、少しラーメンスープと卓上のタレを回しかけると、もう箸が止まらない。
気付けば、客間の後方には、私の完食を待つ客が大勢、パブリックビューイングのようにコチラを観ている。中華そばの余韻に浸りたいところだが、早々に座卓を後にした。なお、レジ回りでは持ち帰り用のラーメンやメンマ、チャーシュー、タオルやTシャツなどのグッズも販売されているので、名残惜しい方はお土産に是非。
<店舗データ>
【店名】 中華そば処 琴平荘(コンピラソウ)
【住所】 山形県鶴岡市三瀬己381-46
【最寄】 JR羽越本線「三瀬駅」徒歩15分