だいぶ涼しくなってきました。ようやく夏が終わろうとしています。先日、夏に多いのは鼻出血ぐらいと書きましたが、もうひとつ夏に多いのは、外耳道湿疹です。皮膚科の病気とも言えますので、全身の皮膚の湿疹の一部であれば、皮膚科の先生の治療が中心になりますが、外耳道の奥だったり、耳に限局していたりすれば、耳鼻咽喉科の治療が必要になります。
外耳道湿疹:内耳は脳の神経の続き、中耳はのどの粘膜の続き、外耳は顔の皮膚の続きです。耳はこの3カ所で全く違う仕組みと働きがあり、かかる病気も違います。外耳道の皮膚は、奥まっている分、湿疹を起こしやすい部位です。治療は、皮膚の他の部位と同じで、ステロイドの軟膏など局所の治療と、抗ヒスタミン薬などの内服とがあります。引っ掻いて悪化させると、黄色っぽいさらさらの耳漏が出ますので、耳漏を心配して受診される方も多いです。
外耳道炎:不潔な指や耳かきで触って、細菌感染を起こしてなることが多いです。湿疹が基にあって、そこに感染が加わることも多いです。
外耳道癤:外耳道の皮膚の細菌感染が悪化して、膿が貯まっておできになった状態です。膿を出してしまわないと、抗菌薬だけでは、なかなか治らないことがあります。
真菌性外耳道炎:真菌というのはカビのことですが、体について病気を起こすカビもあります。カンジダ、アスペルギルスが、その代表です。外耳道はもともと、真菌がつきやすい部位のひとつですが、とくに、抗菌薬やステロイドを使っているときは、つきやすいです。外耳炎の治療で抗菌薬の点耳を行うこともありますが、必要最小限にとどめるべきです。長期使うと、細菌はいなくなりますが、そこに真菌が増えることがしばしばあります。
帯状疱疹:外耳炎の症状で受診される患者さんの中に、外耳道の皮膚に水疱が見られる場合があります。ウィルス性の炎症のことが多いですが、とくに問題になるのは、帯状疱疹です。神経につくウィルスですので、痛みも特別強いし、内耳の神経までつくと難聴やめまいを起こしたり、耳の奥には顔面神経がありますので、顔が曲がったりすることがあります。このような内耳や顔面神経の症状を伴うものを、ハント症候群と呼びます。
外耳道真珠腫:腫という病名ですが、腫瘍ではありません。皮膚の角化物が異常に多くたまり、骨を壊しながら進行する点は、中耳真珠腫と似ていますが、原因は不明です。典型的なものは、鼓膜のすぐ手前の外耳道底部の骨が陥没しており、そこにしつこく堅い耳垢のようなものがたくさん付着しています。これを放置するとだんだん進行する可能性があるので、耳鼻咽喉科で定期的に清掃する必要があります。
サーファーズイアー:両側の外耳道の壁の骨が、何カ所も盛り上がって、外耳道が狭くなった状態です。長期間の冷水の刺激で起こると言われ、圧倒的にサーファーに多い病気です。かなり高度でも、無症状のことが多いですが、狭い外耳道に耳垢が貯まりやすかったり、炎症が起きやすい場合もあります。当院にも、他の病気でかかられた方に、サーファーズイアーを見つけることが、しばしばあります。東京で勤務医をしていた頃はほとんど見ませんでしたので、やはり神奈川はサーファーが多いのでしょうか。