昨日の夜は、勉強会。母校の慈恵医大の耳鼻咽喉科の准教授である小島先生が、中耳真珠腫の手術について講演をしてくれました。
中耳真珠腫というのは、慢性中耳炎の一種で腫瘍ではありませんが、骨を壊しながらどんどん奥へ広がってしまうという意味で、腫瘍のような性質があります。聞こえは悪くなるし、耳の奥には三半規管もありますから、めまいを起こすこともあります。さらに奥には、顔面神経や脳があるわけですから、進行すると怖い病気です。中耳真珠腫は、多くの場合、手術が必要になります。
この手術は、術者の技術と経験によって、かなり手術成績が違ってくるので、手術をお願いするに当たっては、よい先生を選ばなければなりません。良い先生というのは、お人柄も含めてです。手術の経験が豊富でかつ患者さんのことを真剣に考えてくれる先生を知っておき、患者さんを紹介するというのも、開業医の大切な役目のひとつです。
小島先生もよい先生だし、現在は慈恵医大付属病院長でもある森山教授、さらに先代の本多教授もこの手術の専門家でした。昨日の座長の先生が何かの本からコピーした「主な医療機関の耳鼻咽喉科治療実績」を見せながら話してくれたところによれば、年間の鼓室形成術(中耳真珠腫をはじめとした慢性中耳炎の手術)の手術件数は、慈恵医大が年間204件で関東のトップでした。
しかし、さすがに東京は遠いので、通常は真珠腫の患者さんの手術は、聖隷横浜病院の松井和夫先生にお願いしています。松井先生も人間的にもとてもよい方で、手術の腕は神奈川一と思います。昨日見せてもらった「耳鼻咽喉科治療実績」でも、聖隷横浜病院の鼓室形成術の件数は年間171件で、神奈川では断然トップでした。
もちろん、手術件数はその病院の評価のひとつのめやすに過ぎません。手術件数だけで、その病院がよいかどうかは決められません。できるだけ、その先生から直接お話を聞いたり、他の耳鼻科開業医の先生から情報を集めたりすることが必要です。そのためにも、昨日のような勉強会は、そのあとの懇親会も含めて、よい機会となります。
真珠腫には、先天性真珠腫というのもあります。当院の患者さんは小さいお子さんが多いのですが、私は耳の症状があってもなくても、受診時には全員鼓膜の内視鏡写真を撮って記録し、過去の鼓膜と見比べるようにしています。小さいお子さんは、自分で症状を訴えることができないので、それによって急性中耳炎や滲出性中耳炎が見つかることがしばしばあります。さらに、鼓膜のわずかな変化から、「先天性真珠腫」を全く症状のない初期のうちに見つけることも、これまでに数例ですが、あります。