横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

アレルギー性鼻炎に自然治癒はあるのか?

2012-09-30 10:06:22 | 院長ブログ

水曜日は税理士さんとの面談。今日は清掃の日。先週はシルバーウィークで休みが多かったですが、今週は毎日クリニックに来ています。正しい税務申告のためには税理士さん、スタッフの給与や福利厚生のためには社労士さんと、開業医は医師であると同時に経営者でもあり、正しい経営のためには、多くのプロの方に助けていただいています。来週の日曜日は、休日診療の当番です。開業医は自分のクリニックのことだけにとどまらず、地域の医療にも貢献することが必要です。もっとも、開業医に限らず、自営業の方は業種にかかわらず、同様のことが言えるのだと思いますが。

今日のタイトルのアレルギー性鼻炎に自然治癒はあるのかですが、たとえ症状が治まっても、感作された状態は残る(血中特異的IgE抗体は陰性にならない)ので、治癒とは言えず、自然寛解があるか?というのが正しいかも知れません。小児喘息やアトピー性皮膚炎では、大人になったら症状がもう出ない寛解が、多くの方で見られますが、アレルギー性鼻炎は、大多数の方が、大人になっても続きます。もちろん例外もありますが、その数やメカニズムには、まだ不明の点が多いです。

その中で、今回の学会でも、年齢とともに寛解が起こるどうかについてのデータが、いくつか出されていました。同一の方を何十人か、何年も間隔を開けてアレルギー検査を行った報告でも、従来から言われているように、60歳から70歳頃には、寛解する例が多いという結果でした。逆に言えば、それぐらいまでは、治ることが少ないということになります。私は以前、鼻腔通気度(鼻のひろさ)の年齢的変化についてまとめたことがあります。成人では各年齢で差がないのですが、60歳から70歳を境に、鼻腔通気度の値が高くなる(広くなる)ことが見られました。これは、年齢的変化で鼻の粘膜が薄くなるのが主因ですが、この年齢では同時にRAST(血中IgE抗体)も平均値は低くなっていました。

アレルギー性鼻炎の方の数はますます増え、発症の低年齢化も進んでいます。いずれの報告を見ても、アレルギー性鼻炎の有病率はおよそ4割(日本人のが10人いれば、4人はアレルギー性鼻炎)、感作率(RAST陽性率)にいたっては、6~7割(日本人10人いれば、正常は3人か4人しかおらず、2~3人はまだ発症していなくても、その準備状態はできている)でした。

もちろん発症していても症状が軽ければ、必ずしも病院にかかる必要はないかも知れません。しかし自然治癒が少ない以上、アレルギーの原因を自分で知って予防をしていくことは大切ですし、症状が強ければがまんをしないで、治療を受けてほしいと思います。

 

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QOLと費用便益

2012-09-29 23:51:43 | 院長ブログ

まだ昼間は暑いですが、やはり夏とは違います。夜、朝は気温が下がっており、耳鼻咽喉科の患者さんは増えています。先週の土曜日が祭日で休診だったり、昨日の午前中学会で休診にした影響もあると思いますが、先々週の土曜日より4割多い患者さんが来院されました。

昨日の学会は、ポスターが主体でした。短時間にいろいろな知識を吸収するのには、口演より効率が良いです。朝ひととおりのポスターを見て、とくに興味のあるポスターだけ、ディスカッションに参加するので、時間を節約できます。合間には、これも興味のあるミニシンポジウムの会場に行き、また、休憩スペースで他の先生とディスカッション。今回の学会は4部屋を学会場として使用していましたが、すべて同じフロアで、中心の受付のスペースと直結しており、通常の学会のように、他の会場に行くのに廊下を歩いたり、エレベーターに乗ったりする必要がありません。このことも、効率良く回るのを助けてくれました。

最近の学会では定番になっている、朝食付きのモーニングセミナーは、”QOLと費用便益を考慮した花粉症治療”という、阪大の荻野敏先生のご講演でした。耳鼻咽喉科開業医の扱う病気の多くがそうですが、花粉症も命にかかわるわけではありません。しかし、生活の質には、大きな影響を及ぼします。症状の強さや治療の効果の判定を、鼻水の量などで評価するのではなく、QOLを指標にするというのは、ここ数年の流れです。QOLでは、病気の症状と薬の副作用としての眠気などが、同列で評価されます。

さらに荻野先生は、それに費用の面も考慮すべきと提案されています。それは、医療費を減らしましょうという、という単純な話ではありません。費用には、医療費だけでなく、通院費や待ち時間を費用に換算したものを含む医療関連費、来院している時間は仕事ができないわけですから、その労働損失などの間接費、さらに精神的損失などの無形費用にも配慮すべきということでした。

こういったことを研究をされている先生もいらっしゃるわけですが、実際には難しい面も多く、たとえば比較的数字で表し易い労働時間の損失の評価でさえ、日本ではベースになる1週間の労働時間が40時間を大きく越えている方がたくさんいらっしゃって、これは労働基準法に違反していることになり、それを公に発表するのが難しいのだそうです。また、いろいろな事象を評価する方法が研究者によってばらばらでは比較できませんから、ひろく使われている評価法を用いなければならないのですが、最近は知的所有権が重視されるようになって、ある評価法を使う許可を得ようとしたら、数十万円を要求されたというようなお話もありました。

こういった研究の結果を見るまでもなく、医療資源に限界がある中、開業医も費用対効果ということも配慮しなければならないのは当然ですが、待ち時間やお子さんが病気になったときにお母様が仕事に行けない時間も、経済損失だというお話を聞いて、まだ甘いところもあるのかなと考えました。たとえば花粉が飛び始めて患者さんが増えると、自動電話予約システムと順番取りのアイチケットを併用して、できるだけ待ち時間を少なくしている当院でも、どうしても通常よりも待ち時間が長くなります。耳鼻咽喉科は年末の感染症が正月には一旦落ち着き、花粉が飛び始める前の1月は比較的空いているのですが、毎年花粉症で薬が必要な方には、1月のうちに来ていただくことを、もっと積極的にお勧めしてもよいと気がつきました。

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日本鼻科学会(幕張メッセ) 

2012-09-28 21:49:18 | 院長ブログ

今日は朝8時のモーニングセミナーに始まって、12時までたっぷり、知識を新しくしてきました。12時少し前には会場を出たのですが、乗り継ぎが悪く、クリニックに着いたのは、午後の診療開始10分前を切っていました。

今回の会長は意欲的で、昨年までのこの学会とスタイルを変えてきました。昨年までは、私が医師になった頃には既に確立していたスタイルで、私の大学の耳鼻咽喉科教室内に事務局があった、前身の日本鼻副鼻腔学会の時代から30年以上、一環して、木曜日に基礎問題研究会と臨床問題懇話会というふたつのシンポジウムを行い、金曜、土曜の二日間で、一般演題の口演と、メインのシンポジウムを行うというかたちでした。今年は、木曜のふたつのシンポジウムを廃止し、木曜から土曜日の3日間で多くのシンポジウムを企画し、一般演題はポスターをメインにして、いくつかの限られた群をミニシンポジウムと称して、口演のかたちにしていました。ちょっと懐疑的だったのですが、実際参加してみるとこのスタイルは成功だったと思います。

今日は、アレルギー性鼻炎の臨床に関してと、鼻の手術に関する群を中心に聞いていました。

鼻の手術に関しては、大学の後輩の先生たちが、新しい方向として、経鼻的に内視鏡を使って行う頭蓋底の手術と、外鼻を含めた鼻中隔湾曲症の手術について、発表していました。私が大学にいた頃も、脳外科の先生と協力して内視鏡下の下垂体手術をやっていましたが、頭蓋底の手術は、それをさらに発展させた手術です。外鼻の手術については、ついこの間、耳鼻咽喉科の手を離れたと書いたばかりだったのですが、ごく最近になって流れが変わってきているようです。

変化のきっかけのひとつは、韓国の耳鼻咽喉科の先生方との交流にあるようです。韓国では美容形成がとても盛んで、前大統領も手術を受けていたと話題になりましたが、韓国では外鼻の形成手術を行う耳鼻科の先生も多いようです。耳鼻科ですから、美容のためと言うより、鼻の呼吸機能の改善が主目的ですが。

もうひとつの理由は、日本人の顔の形が変わってきたということがあるようです。若い人の鼻が細く高くなり、白人の鼻のような方が増えているため、鼻の脇の部分が、息を吸うときに陰圧で内側に引っ張られて、鼻が狭くなって息が苦しくなるという、以前なら白人の問題で、日本人には見られなかったような鼻閉が起こるようになっているのです。このような方の呼吸を楽にするためには、手術が必要です。

 

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新しいカバンを注文

2012-09-27 07:58:38 | 院長ブログ

もう何年も愛用していた通勤鞄ですが、さすがに古くなり、この数ヶ月できるだけ電車通勤にしたこともあって、ついに肩紐の一部がこわれ始めました。でも毎日、よく働いてくれたものです。ありがとう。

新しい通勤鞄をネットで注文しました。前と同じスウェーデンのFJÄLLRÄVEN製の鞄です。FJÄLLRÄVENとは、北極狐のことです。前の鞄を買った頃と違い、今はけっこうこのメーカーも日本に浸透しているらしく、たまプラーザにもこの会社の鞄を扱っている店ができています。以前とはデザインも変わり、いろいろな種類もできているようですが、私は前と同じ大きさの、17インチのコンピュータが入り、弁当箱もしっかり倒さずに入れられるサイズを、また選びました。

  

今日は診療の後、幕張へ行きます。日本鼻科学会に少しだけ参加して、一泊して明日の午前中だけ休診にし、午後は通常どおり診療します。

 

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外耳道炎と湿疹 外耳道の炎症性疾患

2012-09-26 21:16:42 | 院長ブログ

だいぶ涼しくなってきました。ようやく夏が終わろうとしています。先日、夏に多いのは鼻出血ぐらいと書きましたが、もうひとつ夏に多いのは、外耳道湿疹です。皮膚科の病気とも言えますので、全身の皮膚の湿疹の一部であれば、皮膚科の先生の治療が中心になりますが、外耳道の奥だったり、耳に限局していたりすれば、耳鼻咽喉科の治療が必要になります。

外耳道湿疹:内耳は脳の神経の続き、中耳はのどの粘膜の続き、外耳は顔の皮膚の続きです。耳はこの3カ所で全く違う仕組みと働きがあり、かかる病気も違います。外耳道の皮膚は、奥まっている分、湿疹を起こしやすい部位です。治療は、皮膚の他の部位と同じで、ステロイドの軟膏など局所の治療と、抗ヒスタミン薬などの内服とがあります。引っ掻いて悪化させると、黄色っぽいさらさらの耳漏が出ますので、耳漏を心配して受診される方も多いです。

外耳道炎:不潔な指や耳かきで触って、細菌感染を起こしてなることが多いです。湿疹が基にあって、そこに感染が加わることも多いです。

外耳道癤:外耳道の皮膚の細菌感染が悪化して、膿が貯まっておできになった状態です。膿を出してしまわないと、抗菌薬だけでは、なかなか治らないことがあります。

真菌性外耳道炎:真菌というのはカビのことですが、体について病気を起こすカビもあります。カンジダ、アスペルギルスが、その代表です。外耳道はもともと、真菌がつきやすい部位のひとつですが、とくに、抗菌薬やステロイドを使っているときは、つきやすいです。外耳炎の治療で抗菌薬の点耳を行うこともありますが、必要最小限にとどめるべきです。長期使うと、細菌はいなくなりますが、そこに真菌が増えることがしばしばあります。

帯状疱疹:外耳炎の症状で受診される患者さんの中に、外耳道の皮膚に水疱が見られる場合があります。ウィルス性の炎症のことが多いですが、とくに問題になるのは、帯状疱疹です。神経につくウィルスですので、痛みも特別強いし、内耳の神経までつくと難聴やめまいを起こしたり、耳の奥には顔面神経がありますので、顔が曲がったりすることがあります。このような内耳や顔面神経の症状を伴うものを、ハント症候群と呼びます。

外耳道真珠腫:腫という病名ですが、腫瘍ではありません。皮膚の角化物が異常に多くたまり、骨を壊しながら進行する点は、中耳真珠腫と似ていますが、原因は不明です。典型的なものは、鼓膜のすぐ手前の外耳道底部の骨が陥没しており、そこにしつこく堅い耳垢のようなものがたくさん付着しています。これを放置するとだんだん進行する可能性があるので、耳鼻咽喉科で定期的に清掃する必要があります。

サーファーズイアー:両側の外耳道の壁の骨が、何カ所も盛り上がって、外耳道が狭くなった状態です。長期間の冷水の刺激で起こると言われ、圧倒的にサーファーに多い病気です。かなり高度でも、無症状のことが多いですが、狭い外耳道に耳垢が貯まりやすかったり、炎症が起きやすい場合もあります。当院にも、他の病気でかかられた方に、サーファーズイアーを見つけることが、しばしばあります。東京で勤務医をしていた頃はほとんど見ませんでしたので、やはり神奈川はサーファーが多いのでしょうか。

 

 

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