貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ルース禁制の崩壊

2021-10-25 20:33:14 | 漫筆

おおむね個人的なお話です。(だいたいどれもそうだろ)

石は好きで集めたいけどお金はあまりない。
そこでいくつかの禁制というか自戒を課した。
・一万円以上のものはとりあえず諦める。
・水晶とオパールにはとりあえず手を出さない。
・隕石・化石はとりあえず見ない。
・宝石・ルースの類にはとりあえず手を出さない。
などなど。(とりあえずばっかだね)

ルースというのは厖大な海です。まあたーくさんある。
ヤフオクやメルカリにも溢れている。
宝石もあれば「カラーストーン」もある。
何でもそうだけどいいものは高い。
いいかどうかの識別が素人には難しい。
入り込んだら溺れ死ぬ。(おおげさな)

でもルース好きの人は多いですねえ。ミネラルマルシェとかでもルース屋さんのまわりには人が群がっている。特に女性が多い。
ルース買ってそれをどうするんでしょうか。ただケースに入れて眺めるのか、アクセサリに加工するのか。わかりません。

そういう禁制なので、鉱物フェスティバルでも、ルース屋さんには、若干目を奪われつつ、素通りするようにしていました。
ところがある日のミネラルフェア。あまり買えるものもなく、うろうろと歩き回っていると、ある店の横に小さなワゴンがあって、ごちゃごちゃと500円均一の叩き売りバーゲンセールをしていた。ふうんと思って覗くと、アメジストのルースが目にとまった。
「別にアメジストなんかルースで買ってもしょうがないだろ」と思ったけど、その色がちょっと変。で、安くて変なものを買う趣味が発動して、つい買ってしまった。

家に帰って乏しい戦利品を吟味して、そのアメジストはあまり意識もせずコレクションケースの片隅に置いておいた。
ところが、どうも目にとまる。妙に赤っぽい輝きが揺れる。
それからしばらくして、ネットを見ていたら、「カシャライ・アメジスト」という割合新種のアメジストの記事があった。
いわく、赤みがあって、色のむらがあって、しかもカラーチェンジする、とある。
あらためて観察すると、赤みがあって、色むらがあって、方向変色する感じもある。そして白熱電球で照らしてみると、おお、赤が輝くではないか。


写真じゃあんまりわかりませんね。右はほんとはもっと赤い。

これ、ひょっとしてカシャライ・アメジストじゃなかろうか、と。
原産地は書いていないので、カシャライかどうかはわかりません。けれど面白いアメジストで、ほおん、と感心したのです。500円でこれは嬉しい。

で、その後のミネラルマルシェで、中を見終わって外に出たら、そこにあのアメジスト・ルースを買ったお店がある。HUNZAという不思議な名前は覚えていた。
たくさんのルースが積んであって、「半額セール」になっていた。
ルースを買うつもりはなかったのだけれど、しばらく前からアンダルサイトを探していた。方向変色する石で、カイヤナイトの姉妹(同質異形)に当たる。欲しくていろいろ探したのだけれども、原石もルースもなかなかない。あってもものすごく高い。
で、ダメ元で聞いてみたら、「はいよ」とあっさり出てきた。しかも4000円の半額で2000円。
この時の感想はいわく言い難い。嬉しいのもあったけれど、気が抜けたような感じ。なんでこんなにあっさりと。あまりメジャーではない石をわずか2秒で出してくるなんて、こいつ(失礼)はいったい何者?
で、ルース禁制の掟を破って買った。ついでに「これ今人気よ」と見せられた「カラーチェンジ・ガーネット」なるものも2000円だったので買った。あーあ。破戒者だ。

アンダルサイトの8ミリくらいのルース。写真ではうまく捉えられないけど、確かに方向変色する。カットも相まって、茶色から黄色・赤まで、いろいろな色が遊ぶ。至極満足。方向変色を味わうのに、カット石というのは案外いいのかもしれない。
「まあ、ほかにないんだから仕方ないよ」と自己弁解したのでありました。

で、もう一つついでに買った「カラーチェンジ・ガーネット」。
アレキサンドライトのように「青→赤」とダイナミックに変わるわけではないけれど、蛍光灯では沈んだ紫、白熱灯では赤茶に変わる。風呂場の白熱電球と台所の蛍光灯で撮ったので、ひどい写真だけれども、色の変化くらいはわかるかな。

むむむ。これもいい。ルースあなどることなかれ。

このHUNZAさん、いったい何者か。ホームページで見ると、店長さんはパキスタンのフンザ地方の出身で、地元の宝石研磨学校を出て、日本で加工・研磨をしている人らしい。新米なのでフンザ地方が天然石の宝庫だということは知らなかった。反省。
パキスタンで仕入れ、こっちで自ら加工するから安いらしい。

で、今度は「1000円マルシェ」なるものがあった。貧老にはぴったりだけど、さすがに1000円では面白い原石は出ないだろう、と思ったけれど、HUNZAさんが出ているので、気になって行ってみた。
大失敗でしたねえ。
8ミリ角のきれいなペリドットが1000円、ダイオプテーズと大きいブルートパーズ(たぶん放射線加工)がセットで1000円。厚みのあるアクアマリン、淡い色が美しいタンザナイトがやはり1000円。
完全に禁制崩壊。いかんよこれは。

カット石にはまったく素人なので確かなことは言えないけれど、このお店のカット、けっこうすごいんじゃないかと思う。ちょっとの光でキラキラと輝いている。石自体は、拡大するとクラックや傷があったりするけれども、こちらは完璧な宝石を求めているのではなくて、石の色や輝きが見られればいいという大雑把なタイプなので、別に構わないわけで、その分お手頃値段なら嬉しい。。

さて、今度マルシェがあったらどうするか。本当は素通りしなければいけない。しかし、あの美しさと安さはやはり気になる。「ちょっと見るだけ」――それが命取りになる。(おおげさなw)
実に困ったものなのです。(千円単位のことでピーピー言うんじゃないよ)

(あ、言っときますけど、HUNZAさんからお金はもらってませんw)