貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

変幻する光

2021-10-24 18:45:38 | おべんきょノート

石の色の問題もとても複雑ですけど、これに「本来の色とは異なる色の光」が加わって、しかもその名前がまたごちゃごちゃしていて、初心者は混乱の極みになりますねえ。
ちょっと整理してみようかなと。

・遊色(遊色効果、play of color)
広義に使われる場合もあるけれど、だいたいはオパールの変幻する色の光のこと。
オパールは結晶ではないシリカ(SiO2、二酸化珪素)でできているけれども、それが水を含みながらみっちりと詰まると(よくわからん)、そこに一定の規則構造ができて(よくわからん)、それが特定の色の光を反射する(よくわからん)、ということらしい。なぜ様々な色になるのかは、あちきにはよくわからない。
石によって、赤が強く出たり青が強く出たりする。赤が強く出るのをファイヤー・オパールと呼ぶことがあるけれど、これは誤用らしい。この件は別に。

・イリデッセンス
「iris=虹」から来た言葉で、広く虹色の輝きを指す。「遊色」や後述「シラー」、真珠や貝殻の虹色まで含むらしい。結晶内の亀裂に虹が出ることはよくあるけど、これもイリデッセンかな。クラック水晶なんかは、わざと亀裂を生じさせて虹色を楽しむけど、あれはレインボークラック水晶と呼ばれていて、イリデッセンス水晶とは言わないみたい。あんまりポピュラーな言葉ではないせいか。

・レインボー
正式な言葉かどうか不明。使われ方に二種類ある。
一つは、表面が特殊な状態になっていて、そこで虹色が輝くこと。レインボーガーネットはアンドラダイト(灰鉄柘榴石)の一種で、表面が七色に輝く。レインボー水晶は、表面にヘマタイトなどの微細結晶が付着することで七色に輝く。これをイリデッセンスと言うかどうかはわからない。
もう一つは、前述の、石の中にクラックが入っていて、そこで七色の光が輝くこと。レインボー入りとか表現される。まあ俗称でしょう。

・シラー
この言葉、ちょっと曖昧に使われるみたい。
本来は、石の中の層が作り出す色の輝き。
代表的なのはラブラドライトで、この石は、微妙に成分が異なる二種の長石が、層状構造を作っている。その界面の微細構造が特定の光を反射する。石によって(石の部分によっても)異なり、青、赤、紫、黄金などに輝く。で、これを「ラブラドレッセンス」と呼ぶ。
ムーンストーンは、ラブラドライトと同様の原理なのだろうけど、青い光しか発しない。なぜなのかは知らない。それをうまくカボッション(カットのないやつ)に磨くと、青がゆらゆらと揺れて実に神秘的。
で、最近はホワイトラブラドライトをムーンストーンとして売っているとのこと。この場合、青だけでなく色々な色が出る。
ムーンストーンの変幻色は「アデュラレッセンス」とも呼ばれるらしい。長石の一種アデュラリア(氷長石)から来たものだけれどアデュラリアにはそういう現象はない。何だそれ?
ただ、石の内部に光を反射する面的構造があって、それが生み出す光をシラーと呼ぶことも多いみたい。アイオライトやスキャポライトなど、内部にこういう光沢面を持っている石はけっこう多い。
さらには、サンストーンのような細かい鱗片状内包物の輝きもシラーと呼ぶこともあって、混乱の極み。これはむしろ後述の「アベンチュレッセンス」が正しいのではないかと思う。

・キャッツアイ
シャトヤンシー(Chatoyancy、変彩効果)と同義。
石の内部に微細な内包物が平行に並んでいることによって、光が特殊な反射をし、光る筋が浮いて動くように見える現象。
女性の(女性でなくてもいいのだけど)艶やかなストレートヘアに、光の輪が見えることがある。天使の輪と呼ぶらしい。て……(やめとけ)。髪が縦に流れていれば横の筋として見える。キャッツアイも同じで、内包物の並ぶ方向に対して直角に出る。
有名なのがタイガーアイ・ホークアイですけど、ほかにクリソベリル、シリマナイト、トルマリン、オプシディアン(黒曜石・天然ガラス)などたくさんの石で見られる。光の筋が浮遊するので、とても不思議。

・スター(アステリズム Asterism)
石の表面に六条(ないし四条)の光の「星」が現われる現象。
内包物のルチル(金紅石、酸化チタン)が関与しているらしい。その非常に微細な針状結晶が規則的に並ぶことで、星の形になるとのこと。何でそうなるのかあちきにはわからない。
ルビー、サファイアが有名。ほかにローズクォーツ、オプシディアンなどでも見られる。
あちきは持っていないのでよくわからない。

・アベンチュレッセンス
イタリア語の「偶然に」を意味する言葉に由来。イタリアのガラス職人が間違ってガラスの中に銅の破片を落としたところ、きらめいて美しかったので、それを技術として確立した。以来、金属の小片が輝いているものをこう呼ぶようになったとのこと。
つまり、サンストーンのあのキラキラがアベンチュレッセンス。
で、アベンチュリンという石(インド翡翠と呼ばれることもあるが翡翠ではなくアゲート)は、こういうキラキラを含んでいたので、その名前がついたらしい。ちなみにアベンチュリンは緑だけでなく、オレンジ色もある。

サンストーンというのも、固有の石の名前ではなく、長石(もっぱらオリゴクレース)の中で、金属的小鱗片を含んでアベンチュレッセンスを見せるものを言うとのこと。これもまた改めて。
ついでに言えばアベンチュレッセンスを見せるアイオライトが「アイオライト・サンストーン」として売られている。これ、鉱物的にアイオライトとサンストーンの混合石なのか、アベンチュレッセンス=サンストーン的であるアイオライトのことなのか、よくわからない。

やれやれ。ごちゃごちゃ。
まあ虹色だったらレインボー。動く光の筋だったらキャッツアイ、星ならスター、層界面の輝きだったらシラー、金属小鱗片の輝きだったらアベンチュレッセンス、くらいでいいんじゃないでしょうかね。ただアベンチュレッセンスは長すぎですわな。もっと素敵な名前があるといいのに。

名前のごちゃごちゃはともかくとして、石は色だけでなく、こういう変幻する輝きがあるから、美しいのですね。
ゆらぐ色、変幻する輝き。石の見せる美は深いですねえ。