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【ライドシェア?】デジタル行財政改革会議で示された「中間とりまとめ案」の問題点

2023-12-24 | 書記長社労士 ライドシェア断固阻止!

 12月20日、デジタル行財政改革会議において「地域交通における『担い手不足』『移動の足不足への対応』」と題した方針が発表された。
これをもって「ライドシェア限定解禁 4月から一部地域で」等の報道が相次いでいる。
しかし、今回の政府方針には多くの問題があり、このことがライドシェア阻止運動の全面的敗北を意味するわけではない。
2023年12月20日のデジタル行財政改革会議で示された「中間とりまとめ案」における「地域の自家用車・ドライバーの活用」に関する記載を引用し、問題点を詳述し、安易な規制緩和を強く批判する。


【引用「デジタル行財政改革会議中間取りまとめ」】
 現状のタクシー事業では不足している移動の足を、地域の自家用車や一般ドライバーを活かしたライドシェアにより補うこととし、すみやかにタクシー事業者の運行管理の下での新たな仕組みを創設する。
 具体的には、都市部を含め、タクシーの配車アプリにより客観指標化されたデータに基づき、タクシーが不足する地域・時期・時間帯の特定を行う。そして、これに基づき、タクシー事業者が運送主体となり、
地域の自家用車・ドライバーを活用(#1)し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを2024 年4月から提供する道路運送法第78 条第3号(#2)に基づく制度の創設)。また、この制度の創設に向け、ドライバーの働き方について、安全の確保を前提に、雇用契約に限らずに検討(#3)を進める。
 さらに、この新たな仕組みと合わせ、従来の自家用有償旅客運送制度(道路運送法第78 条第2号)について、移動の足の確保に係る地方自治体の責務に照らして様々な障害があるとの地域の声を踏まえ、2023 年内から使い易い制度へ大幅に改善していく。
 このため、同制度の適用対象となる
交通空白地に夜間など時間帯の概念(#4)を取り込み拡大するほか、対価の目安の引き上げ(タクシー運賃の約8割)やダイナミックプライシングの導入(#5)等を実施する。また、地域公共交通会議等における協議において地方自治体の長が判断(#6)できるよう制度の改善を図る。
 さらに、自家用有償旅客運送への多様な主体の参画を促すべく、運送の実施主体からの受託により
株式会社が参画(#7)できることを明確化する。
 加えて、道路運送法の許可又は登録の対象外の運送(無償運送)について、アプリを通じたドライバーへの謝礼の支払いが認められることを明確化することで、利便性を向上する。
 上記の方策について、できるものから早期に開始し、実施効果を検証するとともに、
タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024 年6月に向けて議論(#8)を進めていく。

#1 地域の自家用車・ドライバーを活用 二種免許の無視
〇安全性確保の観点から二種免許が必要であるという大原則を全く無視している。
〇二種免許は免許取得時に、一種免許より、実技ではより高度な運転技術と、筆記試験では安全確保に関しての知識を問われる。
〇さらに、免許更新時には、視力に関して一種免許より厳しい検査(深視力)がある。
〇タクシーが不足する地域では、人命軽視の輸送手段を提供してもかまわないと言っているに等しい。

#2 道路運送法第78 条第3号 「公共の福祉」の濫用
〇「道路運送法78条3号」は「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」に自家用車による有償輸送を例外的に認める条文である。
〇「公共の福祉を確保するため」とは、災害時等のやむを得ない場合の緊急的な対応を想定したものであるはず。
〇「タクシーが不足する」ということで、半恒久的な制度を「公共の福祉」という名目で実施することは、安全確保などについて厳しい参入要件を定め「タクシー事業免許」を規定した道路運送法の趣旨にそむく。

#3 雇用契約に限らずに検討 公共交通従事者のワーキングプア化
〇日本のハイヤー・タクシーは、乗務員との雇用関係を前提として、運行管理や安全・接客に関する教育を実施してきた。
〇乗務員は、雇用関係にあることで最低賃金や割増賃金の適用、雇用保険や健康保険・厚生年金への加入、労働時間の制限の適用といった労働関係法令の適用を受ける。
〇公共交通従事者に請負契約(偽装フリーランス、ギグワーカー)の働き方を、認めれば、安全に関する管理・教育が疎かになるのは明白。
〇労働者としての権利をはく奪されることで、ドライバーの収入が低下・不安定化し、長期的にはさらなる人材不足と質の低下をまねくこととなる。
〇さらに不安定な収入と待遇で、長期的な人生設計が困難なギグワーカーへ、正規雇用を置き換えていけば、将来的に社会全体への悪影響をもたらすこともすべきだ。
〇海外においてもライドシェアのドライバーは、経費を自腹負担した上で、プラットフォーマーに50%もの手数料を搾取されるなど、ワーキングプア化が深刻な問題となっている。

#4 交通空白地に夜間など時間帯の概念 深夜に移動できない地域が「交通空白地」なのか
〇「交通空白地に夜間など時間帯の概念」を取り込むことは、実質的に全国ほぼすべての地域を交通空白地とみなすに等しい。
〇深夜時間帯においては、そもそも鉄道・バスは元々運行しておらず、公共交通において唯一の選択肢がタクシーであるが、大都市部ですら移動需要の少ない深夜に完全な供給の安定を図ることは難しい。
〇時間帯の概念を導入すれば交通空白地という定義自体が意味を失う。
〇深夜時間帯の稼働維持には、割増賃金の支給、運行管理者やオペレーターの24時間体制等の経費が必要であり、交通空白地を生まないよう、公共交通としてのタクシーが深夜の供給力を提供できるよう公助を行うことが先決ではないか。

#5 ダイナミックプライシングの導入 ダイナミックプライシングは成立しない
〇ダイナミックプライシングは供給過剰の時に安く、供給不足の時に高く、価格を設定する制度である。
〇一方で、交通空白地有償運送はバス・タクシー等の交通機関が存在しないか、需要をカバーしきれない地域で行われる制度であり、供給過剰のケースでは交通空白地有償運送をそもそも実施する必要がない。
〇しかるに原理的に供給不足の状態で行われる制度であり、ダイナミックプライシングを導入すれば常に高い運賃を取ることになる。

#6 地域公共交通会議等における協議において地方自治体の長が判断 「地域の合意」の軽視は改正地域交通法と矛盾
〇2023年4月に成立し10月に施行されたばかりの「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」には、「地域の関係者の連携と協働の促進」が最大のテーマとして明記されており、地域の関係者による協議や合意形成を軽視することは、同法とまったく矛盾している。
〇地域全体で交通を持続可能とするためには、関係者の協議と合意形成を欠かすことはできないはず。
〇一部の首長の独断と暴走により地域交通の衰退が加速することが強く懸念される。

#7 株式会社が参画 営利を目的とするなら、タクシー事業を行うべきだ
〇そもそも交通空白地有償運送は営利を目的とした輸送形態ではない。
〇仮に営利を目的として輸送サービスを提供したいのであれば、タクシー事業、バス事業に参入し輸送サービスを提供すれば済む話である。

#8 タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024 年6月に向けて議論 ライドシェアありきの議論は百害あって一利なし
〇これまでも諸外国の事例等を具体的に示しながらライドシェアの危険性や、消費者への不利益、既存の公共交通に与える悪影響等を証明されている。
〇その上で、今般来年6月に向けて、つまりわずか半年間で解禁の議論を行うという方針には、開いた口がふさがらない。
〇一部の政治家やライドシェアを行いたいプラットフォーム事業者などの方を向いていることはあっても、国民や公共交通に携わるエッセンシャルワーカーに向いていないことは断言できる。

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