よしーの世界

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弱者の居場所がない社会   安部 彩

2021-09-16 06:38:57 | 
世界と比較すれば日本は貧困と格差がそれ程表面化していたわけではなかった。やはり小泉政権以降

日本が新自由主義に向かい、非正規が増え続けた結果、貧困層が増え、格差は広がることになる。世

代によっては貧困が日本に蔓延していることさえピンとこないかもしれない。特に昨今よく耳にする

「絶対的貧困」に対しての「相対的貧困」という文言の定義が分かりにくいことが拍車をかけること

になる。


相対的貧困はその判定基準が、その人が生きている国、時代、社会によって変化するという考えに基

づくことであるという。その社会のほとんどの人が享受している「ふつうの生活」をおくることがで

きない状態と定義している。そして「ふつうの生活」の中には、食事、衣服、住宅は勿論、就労やレ

クリエーション、家族での活動や友人との交流、慣習といったものが含まれるという。つまりごく当

たり前の生活を送ることが出来ない人が増えている。


本書で驚かされるのは、「格差」が大きい社会に住むことは、誰にとっても悪影響を及ぼすというイ

ギリスのリチャード・ウィルキンソン教授の指摘だ。格差が大きい国や地域に住むと、格差の下方に

転落することによる心理的打撃が大きく、格差の上の方に存在する人々は自分の社会的地位を守ろう

と躍起になり、格差の下の方に存在する人は強い劣等感や自己肯定感の低下を感じることとなる。人

々は攻撃的になり、信頼感が損なわれ、差別が助長され、コミュニティや社会のつながりは弱くなる。

強いストレスにさらされ続けた人々は、健康を害したり、死亡率さえも高くなったりする。これらの

影響は社会のどの階層の人々にも及ぶ。日本で実際に起きている現象だ。



今、日本においても貧困や格差は喫緊の課題だ。沢山の人に読んでもらいたい本だ。


弱者の居場所がない社会        安部 彩           講談社現代新書
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