よしーの世界

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続 昭和の怪物 七つの謎   保坂正康

2022-09-08 06:31:50 | 
私が非常に興味を持ったのは第五章 田中角栄、第六章 伊藤昌哉、第七章 後藤田正晴です。田中角栄

の章「自覚せざる社会主義者だったのか」では、自民党の中では異色の存在・田中角栄が国家予算の分配

に庶民的な視座を持ち込んでいた。著者に言わせれば「欲望充足型の政治家」という分析は的確だと思う。

その為に官僚には疎まれ、大衆からは熱狂的な支持を得ていた。そして戦争に対して非常に冷めた感情を

持ち、軍隊のうさん臭さを見抜いていたことも指摘している。金権体質を批判されているが、「日本列島

改造論」という構想は先見性があったとする。


かつて宏池会の事務局長を務めた伊藤昌哉はその田中を危険な存在と著者に言っていたという。田中には

思想、哲学が無いので、その行動に深みがないと。伊藤は「私が田中角栄を嫌うのは、あの男は人をすべ

て人間関係や情念で、それに加えてカネで縛るからだ。あれではいつまでたっても、田舎の政治だよ。も

っと理知的に自分を見つめなければだめだ。そしてこの国をどうするのか、自分は今そのための権力をに

ぎっている、と自覚した時の怖さを知らないことが問題なんだ」と語ったという。伊藤の戦略なき国家の

悲劇は正に今現在進行形であると実感した。


本書を読む前にも後藤田正晴に関しては、ずっと興味を持っていた。今の思想信条のハッキリしない、自

己保身しか頭にない政治家とは一線を画す存在で、護憲を掲げ、当時官房長官でありながら、総理の中曽

根に意見をしていたという。後藤田は「あんな戦争を体験した国が、軍事に傾くようでは何をかいわんや

ということだね。とにかくと戦争はいかん」と何度も著者に言っていたそうだ。沢山の人に本書を読んで

政治とは、政治家とは何か知り、考えてほしい。


   続 昭和の怪物 七つの謎   保坂正康          講談社現代新書
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