魔術師 ジェフリー・ディーヴァー

最近、私が嵌っているジェフリー・ディーヴァーの〈リンカーン・ライム〉シリーズ。四肢麻痺の天才

犯罪学者リンカーン・ライムと美貌の鑑識官アメリア・サックスが大活躍する本シリーズは、細部にこ

だわる作者の文章のうまさで物語に入り込むことが容易で、最後の最後まで全く予断を許しません。次

が気になりドンドン読み進めながら、本のページ数が少なくなってきた頃には、まだ終わってほしくな

いという思いにとらわれる。作者が「これまでの作品のなかで最高の”どんでん返し度”を誇る」と豪語

する程の傑作に仕上がっています。


今回の犯人は超一流イリュージョニスト。瞬間的な早変わりに、考えもつかない脱出劇で警察は混乱し、

ライムたち捜査陣も翻弄されます。本物のマジック、手品、イリュージョンを目の当たりにして、捜査

の限界を感じライムはマジシャンの同業者に協力を要請します。この協力者のカーラが魅力的で、サッ

クスと共に現場に赴き、物語は複層的に動いていきます。


ライムの現場に行って自ら捜索や犯人逮捕に動くことが出来ない哀しみが、よく描かれていて作品に深

みを持たせ、動くことが出来ないライムに１作目と同等の危機が訪れ、スリリングな展開に読者を引き

込むことが作者は本当に上手い。


ライム、サックスを始め、皺くちゃ刑事のロン・セリットー、南部訛りの射撃の名手ローランド・ベル、

ライムを手伝う鑑識員メル・クーパー、介護士トムと登場するチームの連携はいつもと変わらず見事で

す。彼らは神出鬼没で目的が不明確な犯人を追い詰める。あぁ！読み終えてしまった。


　　　魔術師　　　ジェフリー・ディーヴァー　　　　　　　　　　文春文庫