よしーの世界

好きな神社仏閣巡り、音楽、本、アートイベント情報を中心にアップします。

私の大事な場所   ドナルド・キーン

2022-09-21 06:22:46 | 
本書の前に読んでいたのがハードボイルドなジェフリー・ディーヴァーでしたから、優しく丁寧な語り

口のドナルド・キーン先生の本はとても沁みます。ときどき毒舌も吐きますが、ユーモアもあって日本

文学、日本文化、日本語、日本人に対しての深い愛情を感じさせます。古典文学に没頭するキーン氏に

過去の文化を学ぶだけでは不十分だと諭した永井道雄氏との出会いは大きかった。この出会いがあって

キーン氏は日本の文壇との繋がりを持つことが出来るようになったと思います。


それにしてもキーン氏の付き合いは広く、人嫌いで有名な谷崎潤一郎とも何度も会って、話をしていた

ことには驚かされる。三島由紀夫との付き合いは以前他の本で知っていたが、安倍公房とも仲が良く、

新しい小説の話をしたり、政治問題について悩んだりして、いつもの調子で私(キーン氏)の見解に反

対したりしていた、という。さらに政治的見解が全く違う三島由紀夫と安倍公房が仲が良かった、とい

う話も新鮮だった。


「奥の細道」をこよなく愛し、実際に松尾芭蕉の歩いた道を尋ね、自身の解釈をさらに広げていくキー

ン氏の研究には頭が下がる。例えば「草の戸も住み替はる代ぞ雛の家」。まず、キーン氏は雛祭りを知

らなかった、というところから始まる。「草の戸」も解釈するのが難しい「住み替はる代」は全く分か

らなかった、と告白しています。因みに本書の解釈は「わびしい草庵も、自分の次の住人が代わりに住

んで、時も雛祭り、さすがに自分のような世捨て人とは異なり、雛を飾った家になっていることよ」で

す。


ドナルド・キーン先生のおかげで、古典にも以前にもまして関心を持つことが出来ましたし、未知の作

家にも巡り合うことが出来ました。こういう軽いエッセイを読んで日本文学、古典にも興味を持つ人が

増えていってほしい。


   私の大事な場所   ドナルド・キーン       中公文庫
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